乎 - 漢字私註
説文解字
- 乎あるいは𠂞に作る。
語之餘也。从兮、象聲上越揚之形也。
- 五・兮部
説文解字注
語之餘也。乎餘㬪韵。意不盡、故言乎以永之。『班史』多假虖爲乎。从兮。象聲上越揚之形也。謂首筆也。象聲气上升越揚之狀。戸吳切。五部。
康煕字典
- 部・劃數
- 丿部・四劃
- 古文
- 虖
『廣韻』戸吳切『集韻』『韻會』『正韻』洪孤切、𠀤音湖。『說文』兮語之餘也。从兮、象聲上越揚之形。《徐曰》凡名兮皆上句之餘聲。『廣韻』極也。
又疑辭。『詩・邶風』胡爲乎中露。『戰國策』彈鋏歸來乎。
又呼聲。如魯論、參乎、使乎之類。
又荒烏切。與呼同。『詩・大雅』於乎小子。『陸德明・音義』於音烏、乎音呼。『吳越春秋』越王夫人歌曰、徊復翔兮、游飇去復反兮。於乎、今經史於戲、於虖、嗚虖、嗚嘑、於乎相通、皆歎辭。
廣韻
古文。
直前は乎。
音訓
- 音
- コ(漢) 〈『廣韻・上平聲・模・胡』戸吳切〉[hū]{fu4/wu4}
- 訓
- や。か。に。より。
解字
白川
象形。板上に遊舌をつけた鳴子板の形に象る。これを振つて鳴らす。もと神事に用ゐたものであらう。呼の初文。
『説文解字』に語の餘なり
といふのは、兮と同義の字と見るもので、兮もまた鳴子板の形。
『説文解字』に聲の上りて越揚するの形に象る
とするが、卜文、金文の字は、板上に小板の列する形に作る。
卜文、金文に、呼招、使役の意に用ゐる。これを感動詞に用ゐるのは、もと神靈をよび、祈るときの發聲であつたからであらう。
藤堂
會意。下部の伸びようとしたものが一線につかへた形と、上部の發散する形とから成るもので、胸から上がつてきた息が喉につかへて、はあと發散することを表す。感歎、呼び掛け、疑問、反問など、文脈に應じて、はあといふ息で樣々のムードを表すだけで、本來は一つ。呼(はあと喉を掠らせて呼ぶ)の原字。
落合
呼の初文。甲骨文は示と小に從ふ會意字。祭祀用の机に供物を置いた様子。机の脚を曲げた丂に從ふ字形もある。
甲骨文での用義は次のとほり。
- よぶ。呼び寄せる。甲骨文では殷王が臣下や地方領主などを呼んで何かをさせることを占ふものが多く、人名と動詞が記されてゐる場合には「〜を呼びて〜せしめんか」と訓ずる。《懷特氏等所藏甲骨文集》956
丁巳卜㱿貞、呼師盤往于微。
- 祭祀名。《合集》19815
甲午卜…侑、勺歲大乙、呼。
後に乎は疑問を呈する文末助辭などとして使はれるやうになつたため、「よぶ」の意味としては、篆文で意符として口を加へた繁文が作られた。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、丂と三つの小さい縱劃に從ふ。丂は木の枝の形に象る。夏淥は全字で枝が疾風の中で音を立てるさまに象り、上部の小さい縱劃は風の音に象る、とする。丂は聲符(劉釗)。乎は呼の初文。一説に字形は高い聲で叫ぶときの聲が上に揚り、氣が上に出る形に象るとする(『説文解字』、楊樹達)。
甲骨文では動詞に用ゐ、命令、召喚を表す。《合集》6946其乎(呼)王族來。
金文での用義は次のとほり。
- 呼び出すことを表し、典籍では呼に作り、『説文解字』では𧦝に作る。豆閉簋
王乎(呼)內史冊命豆閉。
- 人名に用ゐる。
後には一般に語氣の詞に用ゐる。
屬性
- 乎
- U+4E4E
- JIS: 1-24-35
- 人名用漢字
- 𠂞
- U+2009E
關聯字
乎に從ふ字を漢字私註部別一覽・丂部・乎枝に蒐める。