身 - 漢字私註
説文解字
躳也。象人之身。从人𠂆聲。凡身之屬皆从身。
- 八・身部
説文解字注
躳也。《呂部》曰、躳、身也。二字爲互訓。躳必入《呂部》者、躳謂身之傴、主於脊骨也。从人、𦥔省聲。《大徐》作、象人之身、从人𠂆聲。按此語先後失倫。𠂆古音在十六部。非聲也。今依『韵會』所據《小徐本》正。『韵會』从人之上有象人身三字。亦非也。𦥔、籒作𢑚。故从其省爲聲。失人切。十二部。凡身之屬皆从身。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『唐韻』失人切『集韻』『韻會』『正韻』升人切、𠀤音申。『說文』躬也、象人之身。『爾雅・釋詁』我也。《疏》身、自謂也。『釋名』身、伸也。可屈伸也。『廣韻』親也。『九經韻覽』軀也。總括百骸曰身。『易・艮卦』艮其身。又『繫辭』近取諸身。『書・伊訓』檢身若不及。『孝經・開宗明義章』身體髮膚、受之父母。
又『詩・大雅』大任有身。《傳》身、重也。《箋》重爲懷孕也。《疏》以身中復有一身、故言重。
又告身。『唐書・選舉志』擬奏受皆給以符、謂之告身。
又『史記・西南夷傳』身毒國。《註》【索隱】曰、身音捐。
又『韻補』叶尸連切。『楊方・合歡詩』我情與子合、亦如影追身。寢共織成被、絮用同功綿。
音訓・用義
- 音
- (1) シン(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・眞・申』失人切〉[shēn]{san1}
- (2) ケン 〈『史記索隱』音捐、平聲〉[yuān/juān]{gyun1}
- 訓
- み。みづから。われ。みごもる。はらむ。
身毒(インド)は音(2)に讀むといふ。
解字
白川
象形。身籠もつてゐる人の側身形。
『説文解字』に躬なり
とするが、『詩・大雅・大明』に大任有身
(大任身める有り)の《傳》に身重きなり
とするのが字の原義。
孕妊をいひ、孕は腹中に子のある人の側身形。
娠は身の形聲字。
藤堂
象形。女性が腹に赤子を孕んださまを描いたもの。充實する、一杯詰まるの意を含み、重く筋骨の詰まつた身體のこと。
落合
指示。人の腹部に指示記號の丸印を加へて示した形。指示記號として更に點を加へたものもある。また、腹部を手(又)で押さへてゐる異體字(會意字)もある。
甲骨文では腹部を表す。《合集》822貞、王疾身、惟妣己𧉘。
周代以降の資料では身が妊娠の意味で使はれたが、恐らく、人の腹部を強調した指示字を、腹部が膨らんだ人の象形字と誤解したのであらう。甲骨文で妊娠を意味する字としては孕が用ゐられてゐる。
また周代以降には、引伸義で身體の意味でも用ゐられてゐる。
西周〜東周代の字形には下部に線を加へたものが多い。この場合には千(補註: 人に一を合はせた形)亦聲であらう。
㐆は身の左右反轉形を元にする同源形であるが、單獨では使はれず、殷やそれを用ゐた形聲字以外に用例がない。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は人に從ひ、腹部を突出させる。半圓形の指事符號で腹部の所在を指し示す。半圓の中にあるいは點を加へ、臍の形に象る。本義は腹部。『易・艮卦』艮其身
虞翻注身、腹也。
後に人の身の下部に斜劃や橫劃を飾筆に加へる。身の本義は腹部。後に引伸し、「有身」で妊娠を指す。『詩經・大雅・大明』大任有身、此生文王
(大任は周の文王の母親)。語義は擴大して身軀(身體)の義を有し、また擴大して頭頂から足の爪先に至るまでの全身を指す。後にまた引伸して『説文解字』にいふ躬、つまり自身の意とする。『說文』身、躳也。(後略)
甲骨文では本義に用ゐ、腹部を表す。《合集》822正貞、王疾身、隹(維)匕(妣)己害
は、商王の腹部に疾有り、妣己の加害するところかも知れない、の意。
金文での用義は次のとほり。
- 身軀を表す。
- 師克盨
干(捍)害(禦)王身、乍(作)爪牙。
は周王の身を保護し、その隨身護衞をするの意。 - 㠱公壺
永保其身
。
- 師克盨
- 親身(自ら)を表す。中山王鼎
身勤社稷
は、國家人民のために親ら政治に勵むの意。 - その君主のゐる時代を指す。庚壺
於靈公之身
は、靈公の世を指す。
戰國竹簡では身體を表す。
- 《郭店簡・老子乙》簡8
愛以身為天下
は、身體を愛惜する態度で天下を治めるの意。『老子・第十三章』愛以身為天下
。 - 《清華簡一・程寤》簡9
可(何)愛非身
は、身體の外に何が愛惜するに値するのか、の意。
璽印文字ではまた信の通假字となす。《古璽彙編》4660言身(信)
は、言ひて信あり、の意。『論語・子路』言必信。
屬性
- 身
- U+8EAB
- JIS: 1-31-40
- 當用漢字・常用漢字
關聯字
身に從ふ字を漢字私註部別一覽・人部・身枝に蒐める。