申 - 漢字私註
説文解字
又部𠭙字條
引也。从又𢑚聲。𢑚、古文申。
- 三・又部
説文解字注
伸也。依宋本。从又𢑚聲。失人切。十二部。𢑚古文𦥔。按《申部》曰、𤰶古文申。𢑚籒文申。然則此古當作籒。
申部申字條
神也。七月、陰气成、體自申束。从𦥑、自持也。吏臣餔時聽事、申旦政也。凡申之屬皆从申。
- 十四・申部
古文申。
籒文申。
説文解字注
神也。神不可通。當是本作𦥔。如巳巳也之例。謂此申酉之篆卽今引申之義也。淺人不得其例。妄改爲神。攷諸古說無有合者。『〔史記〕律書』曰、𦥔者、言陰用事。申則萬物、故曰𦥔。『〔漢書〕律曆志』曰、𦥔堅於𦥔。『〔淮南子〕天文訓』曰、𦥔者、𦥔之也。皆以𦥔釋𦥔。爲許所本。而今本『淮南』改𦥔之作呻之。其可𣢑一而巳。或曰、神當作身。下云陰氣成體。『釋名』『晉書・樂志』『玉篇』『廣韵』皆云。申、身也。許說身字从𦥔省聲。皆其證。此說近是。然恐尙非許意。七月、陰气成、體自申束。『韵會』無體字。陰气成謂三陰成爲否卦也。古屈伸字作詘𦥔。亦叚信。其作伸者俗字。或以羼入許書人部耳。『韓子・外儲說』曰、𦥔之束之。今本𦥔譌紳。𦥔者、引長。束者、約結。『廣韵』曰、𦥔、伸也、重也。从𦥑、自持也。臼、叉手也。申與䢅要同意。當是从丨以象其申。从臼以象其束。疑有奪文。丨卽余制切之厂字也。失人切。十二部。吏㠯餔時聽事、申旦政也。餔者、日加申時食也。申旦政者、子產所謂、朝以聽政、夕以修令。公父文伯之母所謂、卿大夫朝攷其職、夕序其業。士朝而受業、夕而習復也。凡申之屬皆从申。
古文申。虹陳篆下如此。
籒文申。小篆改此作𦥔。𥛃𠭙字从此。
康煕字典
- 部・劃數
- 田部(零劃)
- 古文
- 𤰶
- 𠭙
『唐韻』『集韻』失人切『韻會』『正韻』升人切、𠀤音身。十二支之一。『爾雅・釋天』太歲在申、曰涒灘。『釋名』申、身也。物皆成、其身體各申束之、使備成也。『史記・律書』七月也。律中夷則、其於十二子爲申。申者、言隂用事、申賊萬物。
又重也。『易・𢁉卦』重𢁉以申命。『書・堯典』申命義叔。《傳》申、重也。『後漢・朱暉傳』願將軍少察愚言、申納諸儒。
又致也。『禮・郊特牲』大夫執圭、而使所以申信也。
又舒也。『武王弓銘』屈申之義、廢興之行、無忘自過。『班彪・北征賦』行止屈申、與時息兮。
又欠伸也。『莊子・刻意篇』熊經鳥申。
又『博雅』申申、容也。『論語』子之燕居、申申如也。『朱註』申申、其容舒也。
又姓。『史記・三皇本紀』神農五百三十年、而軒轅氏興焉、其後有州甫申呂、皆姜姓之後、𠀤爲諸侯。又申屠、複姓。
又國名。『詩・王風』彼其之子、不與我戍申。《傳》申、姜姓之國。『左傳・隱元年』鄭武公娶於申。《註》申國、今南陽宛縣。
又州名。『韻會』春秋時屬楚、秦南陽郡、後魏爲郢州、周爲申州。
又山名。『山海經』申山、其上多穀柞、其下多杻橿。又北二十里曰上申之山。
又池名。『左傳・文十八年』夏五月公遊于申池。《註》齊南城西門名申門、左右有池。
又矢名。『晉語』乾時之役、申孫之矢集於桓鉤。《註》申孫、矢名。
又草名。『淮南子・人閒訓』申𦯝、杜茞、美人之所懷服也。《註》申𦯝、杜茞、皆香草也。
又『集韻』『韻會』『正韻』𠀤思晉切、音信、伸也。
又『集韻』試刃切、音眒。引也。
- 部・劃數
- 田部四劃
『玉篇』古文申字。註詳一畫。
- 部・劃數
- 又部九劃
『玉篇』古文申字。註詳田部。
異體字
或體。
『説文解字』の重文第二。籀文。
音訓
- 音
- シン(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・眞・申』失人切〉[shēn]{san1}
- 訓
- のびる。まをす。さる。
解字
白川
象形。電光の走る形に象り、神の初文。電の下部电は、その電光の屈曲して走る形。
《大克鼎》申に𬡿孝す
、《杜伯盨》其れ用て皇申(神)祖考と好倗友とに享孝す
など、金文には申を神の意に用ゐる。
『詩・小雅・采菽』福祿申之
(福祿、之れを申ぬ)のやうに申重の意に用ゐ、また上申、申張(=伸張)のやうに用ゐる。伸はその派生字。
藤堂
甲骨文、金文は、電光を描いた象形字で、電の原字。
篆文は𦥑(兩手)と丨(眞つ直ぐ)の會意で、手を眞つ直ぐ伸ばすこと。伸の原字。
落合
稻妻の象形。甲骨文では字單獨で原義に用ゐる例はない。
甲骨文では、十二支の九番目に用ゐる。
篆文で𦥑に從ふ字形に誤つた。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は稻妻の電光が明滅し屈折する形に象り、電の初文。稻妻は多く雷雨を伴ふため、意符の雨を加へて電字がつくられた。十二支の九番目に假借する。
戰國文字では、楚系文字で多く見えるのは、兩側の電光が分岐した形や、二口に變形した形(疇の初文の𠃬と相混じる)。秦系文字では、變形して𦥑となつた形が多く見える。稻妻が放たれ伸びてゆくことから、申に延伸、伸展の義があり、後に人を加へて分化した伸で人體の伸展、屈伸を表す。古人は稻妻が神の掌握するところによると思つてゐたので、後に示を加へて神靈の神を表す(白川静)。
甲骨文、金文での用義は次のとほり。
- 十二支の申。
- 《合集》7283
甲申卜
は、甲申の日に占ふことを表す。 - 多友鼎
甲申之晨
は、甲申の日の早朝をいふ。
- 《合集》7283
- 讀んで神となす。
- 作冊益卣
用作大禦于厥且(祖)厥父母多申(神)
は、祖先、父母、多くの神を祀る禦祭を行ふために用ゐることを表す。
- 作冊益卣
- 祖先を表す。古書では神は既に世を去つた人の靈魂を表す。
- 此鼎
文申(神)
は、文德のある先人の靈のこと。
- 此鼎
屬性
- 申
- U+7533
- JIS: 1-31-29
- 當用漢字・常用漢字
- 𤰶
- U+24C36
- 𠭙
- U+20B59
- 𦥔
- U+26954
- 𢑚
- U+2245A
関聯字
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