呂 - 漢字私註
説文解字
𦟝骨也。象形。昔太嶽爲禹心呂之臣、故封呂矦。凡呂之屬皆从呂。
- 七・呂部
篆文呂从肉从旅。
- 別條に揭出する。
説文解字注
𦟝骨也。象形。吕象顆顆相承。中象其系聯也。沈氏彤『釋骨』曰、項大椎之下二十一椎通曰脊骨、曰脊椎、曰膂骨。或以上七節曰背骨。第八節以下乃曰膂骨。力舉切。五部。昔大嶽爲禹心呂之臣、故封呂矦。『〔國語〕周語』大子晉曰、伯禹念前之非度、釐改制量、象物天地、比類百則、儀之于民、而度之于羣生、共之從孫四嶽佐之、高高下下、疏川道滯、帥象禹之功、度之于軌儀、莫非嘉績、克厭帝心。皇天嘉之、胙以天下、賜姓曰姒。氏曰有夏、謂其能以嘉祉殷富生物也。胙四嶽國、命爲矦伯、賜姓曰姜、氏曰有吕、謂其能爲禹股肱心膂、以養物豐民人也。按曰共之從孫。賈逵、韋昭皆曰、共、共工也。外傳曰四嶽、內傳曰大嶽。一也。官名也。外傳以祉訓姒、以殷富訓夏、以膂訓呂、以養訓姜。韋解云、呂之爲言膂也。是呂膂各字。呂者、國名、以國爲氏。許云、大嶽爲禹心呂之臣、故封呂矦。膂爲小篆呂。是許所據『國語』股肱心膂作股肱心呂。本無二字。後之爲『國語』學者不得其解。乃以氏曰有呂作古文。股肱心膂作小篆。韋氏習而不察。乃云呂之爲言膂矣。以心呂之意名其地。而矦之。而氏之。『潛夫論』曰、宛西三十里有呂。酈道元、徐廣、司馬貞、說皆同。宛城、今南陽府治附郭南陽縣、是也。許自序曰、大岳左夏。呂叔作藩。俾矦於許。世胙遺靈。大岳者、許之先也。故詳之。凡呂之屬皆从呂。
篆文呂。从肉旅聲。呂本古文、以古文爲部首者、因躳从呂也。此二部之例也。『〔書〕秦誓』旅力旣愆。『〔詩〕小雅〔北山〕』旅力方剛。古注皆訓爲衆力。不敢曰旅與膂同者、知『詩』『書』倘以心膂爲義。則其字當从呂矣。僞君牙襲。『國語』云、股肱心膂。此未知古文無膂。秦文乃有膂也。『急就篇』尻寛脊膂要背僂。股腳膝臏脛爲柱。云要背僂。曰脛爲柱。辭意相對。皇象碑本不誤。若顔本膂呂重出。師古不得不以脊內肉、脊骨分釋之。似史游早不識字矣。膂之譌或爲裔。『華陽國志』孝子隗通爲母汲江膂水。天爲出平石至江中。江膂水、謂江心水也。
康煕字典
- 部・劃數
- 口部・四劃
『唐韻』力舉切『集韻』『韻會』『正韻』兩舉切、𠀤音旅。『說文』脊骨也、象形。昔太嶽爲禹心呂之臣、故封呂侯。『書・呂𠛬』惟呂命。《傳》言呂侯見命爲卿。『鄭語』南有荆蠻申呂。《註》申呂、姜姓。『後漢・郡國志』汝南郡新蔡有大呂亭。《註》故呂侯國。
又『史記・高祖功臣侯者年表』周呂侯、以呂后兄初起、以客從入漢爲侯。《註》周及呂皆國名。濟隂有呂都縣。見『前漢・地理志』。
又縣名、屬楚國。亦見『前漢・地理志』。
又姓。『廣韻』太嶽封呂侯、後因爲氏。
又六呂、隂律也。『周禮・春官・大司樂』奏黃鐘、歌大呂、奏姑洗、歌南呂、奏夷則、歌小呂。《註》小呂一名中呂。又『大師』隂聲、大呂應鐘、南呂函鐘、小呂夾鐘。『前漢・律歷志』隂六爲呂、呂以旅陽宣氣。又大呂、旅也、言隂大旅助黃鐘宣氣、而牙物也。
又鐘名。『戰國策』大呂𨻰于元英、故鼎反乎磨室。《註》大呂、齊鐘名。『晏子・諫篇』景公泰呂成。『史記・平原君傳』使趙重于九鼎大呂。《註》正義曰、大呂、周廟大鐘。
又『揚子・方言』矤呂、長也、東齊曰矤、宋魯曰呂。
又『逸周書』擊之以輕呂。《註》劒名。
廣韻
『字林』云脊骨也。『說文』作呂、又作膂。
亦姓。太嶽爲禹心吕之臣、故封吕侯、後因爲氏、出東平。
力舉切。十二。
簡体字に用ゐる。
音訓
- 音
- リョ(漢) ロ(呉) 〈『廣韻・上聲・語・吕』力舉切〉[lǚ]{leoi5}
- 訓
- せぼね
解字
白川
象形。青銅器などを作る材質の銅塊の形に象る。卜文、金文の字形は、上下を連ねる線がなく、銅塊の形。
『説文解字』に脊骨なり。象形。
とし、また昔、太嶽は禹の心呂の臣爲り。故に呂侯に封ぜらる。
と呂國の字とする。
呂はもと甫といひ、『詩・大雅・崧高』に維嶽降神、生甫及申。
(維れ嶽、神を降し、甫と申とを生む。)と見える。金文に㝬、㝬侯と記すものがそれで、「禹の心呂」とするのは後の臆説。
また金文に「厥の吉金、玄鏐膚吕を擇ぶ」とあつて、吕はその銅塊の象とみられる。
『説文解字』に呂を篆文とし、重文として膂を錄する。膂は膂力をいふ字。のち呂をその義に通用する。
「黃鐘大呂」のやうな律呂の義にも用ゐる。
藤堂
象形。一連に連なつた背骨を描いたもので、似たものが一線上に竝ぶ意を含む。
また轉じて、竝んだ音階をも呂といふ。
落合
金の甲骨文は銅の延棒を積んだ形に象り、吕に作る。呂はその同源字で、初文の吕に篆文で上下の方形を繫ぐ短線が加へられたもの。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は二個の圓圈の組より成り、金屬塊の形に象る。ある種の金屬の名。甲骨文は刀で骨の上に字を刻んだので、書寫の道具の影響を受けて、字形はより方形に近い。金文の呂の圈形には中を塗り潰すものもあれば、中空のものもある。後に金を加へて鋁に作る。呂はもと吕に作る。篆文は二個の圓形の間に短縱劃を加へ、隸書では一短撇となり、呂の字形となつた。
甲骨文、金文の本義に用ゐる例を示す。
- 《合集》29687
其鑄黃呂□。
- 《英藏》2567
王其鑄黃呂奠𧖸。
- 效父簋
休王易(賜)效父呂三。
また人名、地名あるいは方國名に用ゐる。
- 《合集》2002反
隹(唯)呂又(祐)。
- 《合集》6778正
……方圍于呂。
- 呂王鬲
呂王乍(作)[阝尊](尊)鬲、子子孫孫永寶用亯(享)。
『説文解字』呂、脊骨也。象形。(後略)
脊骨の義には元々本字がなく、呂を假借して表し、後にまた膂字を作つて表す(參: 『字源』)。呂が脊骨を表す例を次に示す。『急就篇』尻髖脊膂腰背呂
顏師古注呂、脊骨也。
呂はまた支那古代の樂律の名で、また陰律の總稱。『漢書・律曆志』律十有二、陽六為律、陰六為呂。(中略)呂以旅陽宣氣、一曰林鐘、二曰南呂、三曰應鐘、四曰大呂、五曰夾鐘、六曰中呂。
また古い國名、後に楚の滅する所となる。『國語・鄭語』當成周者、南有荊蠻、申、呂、應、鄧、陳、蔡、隨、唐。
また姓氏に用ゐる。戰國時代の秦相の呂不韋、三國時代の武將の呂布など。
屬性
- 呂
- U+5442
- JIS: 1-47-4
- 常用漢字(平成22年追加)
- 吕
- U+5415
關聯字
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