旅 - 漢字私註
説文解字
軍之五百人爲旅。从㫃从从。从、俱也。
- 七・㫃部
古文旅。古文以爲魯衞之魯。
説文解字注
軍之五百人。『〔周禮・地官〕大司徒』五人爲伍、五伍爲兩、四兩爲卒、五卒爲旅、五旅爲師、五師爲軍、以起軍旅。《注》云、此皆先王所因農事而定軍令者也。欲其恩足相恤、義足相救、服容相別、音聲相識。引伸爲凡衆之偁。『〔詩〕小雅〔北山〕』旅力方剛。《傳》云、旅、衆也。又引伸之義爲陳。『〔詩〕小雅〔賓之初筵〕』殽核維旅。《傳》云、旅、陳也。又凡言羈旅。義取乎廬。廬、寄也。故『〔詩〕大雅〔公劉〕』廬旅、猶處處、言言、語語也。又古叚爲盧弓之盧。俗乃製玈字。从㫃从从。句。从㫃者、旌旗所以屬人耳目。从、逗、俱也。說从从之意。力舉切。五部。
古文旅。『左傳〔隱元年〕』仲子生而有文在其手、曰爲魯夫人。『正義』曰、隷書起於秦末。手文必非隷書。石經古文虞作𠈌、魯作𣥐。手文容或似之。者字以爲聲。古文㠯爲魯衞之魯。此言古文叚借也。『〔史記〕周本紀』周公受禾東土、魯天子之命。卽書序旅天子之命。旅者、陳也。
康煕字典
- 部・劃數
- 方部六劃
- 古文
- 𣥏
- 𣃨
- 魯
- 𣥐
『唐韻』力舉切『集韻』『韻會』兩舉切、𠀤音呂。『說文』軍之五百人爲旅。『書・大禹謨』班師振旅。《傳》師入曰振旅、言整衆。『詩・小雅』我師我旅。《箋》五百人爲旅。『周禮・地官・小司徒』五卒爲旅。《註》旅、五百人。
又『博雅』旅。客也。『易・復卦』商旅不行。又『旅卦・疏』旅者、客寄之名、羈旅之稱、失其本居而寄他方、謂之爲旅。『詩・大雅』于時廬旅。《箋》廬舍其賓旅。『左傳・莊二十二年』羈旅之臣。《註》旅、客也。
又『書・禹貢』蔡蒙旅平。《傳》祭山曰旅。『周禮・天官・掌次』王大旅上帝。《註》大旅上帝祭於圜丘。國有故而祭、亦曰旅。
又『書・牧誓』亞旅。《傳》亞、次也。旅、衆也。衆大夫其位次卿。『左傳・文十五年』請承命於亞旅。《註》亞旅、上大夫也。
又『書・旅獒』西旅底貢厥獒。《傳》西戎之長。
又『詩・小雅』旅力方剛。《傳》旅、衆也。『儀禮・士冠禮』旅占卒。《註》旅、衆也。
又『詩・小雅〔賓之初筵〕』殽核惟旅。《傳》旅、𨻰也。
又『詩・周頌』侯亞侯旅。《傳》旅、子弟也。
又『周禮・天官・小宰』掌官府之徵令、四曰旅、掌官常以治數。《註》旅辟下士也。
又『周禮・地官・司徒』旅師。《註》旅、猶處也。
又『周禮・冬官考工記函人』權其上旅、與其下旅。《註》上旅謂要以上、下旅謂要以下。《疏》謂札葉爲旅者、以札衆多、故言旅。
又『儀禮・鄕飮酒禮』司正升相旅、曰、某子受酬。《註》旅、序也。
又『禮・郊特牲』臺門而旅樹。《註》旅、道也。
又『禮・樂記』進旅退旅。《註》旅、猶俱也。
又『後漢・光武紀』至是野穀旅生。《註》不因播種而生、故曰旅。今字作穭、音呂。古字通。
又姓。『前漢・功臣表』昌平侯旅卿。
又『集韻』凌如切、音臚。𨻰也。
- 部・劃數
- 止部四劃
- 部・劃數
- 方部六劃
『玉篇』古文旅字。註詳上。
- 部・劃數
- 止部四劃
音訓
- 音
- リョ(漢) ロ(呉) 〈『廣韻・上聲・語・吕』力舉切〉[lǚ]{leoi5}
- 訓
- たび。たびする。ならぶ。つらなる。つらねる。
解字
白川
㫃と从の會意。㫃は旗。从は從の初文で、前後相從ふ人。氏族旗を奉じて、一團の人が進む意で、その軍團をいひ、また遠行することをいふ。
『説文解字』に軍旅の意とする。
斿、遊は一人が旗を奉じて出行する形。多數のときには旅といふ。古くは邑里の外に出るときには、氏族靈の象徵として、氏族旗を奉じて行動した。それで軍旅のことに限らず、別宮に赴いて祭ることを旅祭といひ、その祭器を旅器といひ、旅彝といふ。
師旅のときには多數で行動するので、多い意となり、連なる意となる。
『詩・ 小雅・賓之初筵』(上揭)殽核を惟れ旅ぬ
のやうに陳設の意にも用ゐる。
『説文解字』にまた古文一字を錄し、古文以て魯衞の魯と爲す
とするが、旅を魯衞の魯に用ゐることはない。《段注》に『左傳』の仲子生まれしとき文の其の手に在る有り。曰く、魯の夫人と爲らんと。
の魯は、掌文とすればこの古文の形であるといふが、その字は旅の譌變の字。
藤堂
㫃(旗)と人二人の會意で、人々が旗の下に隊列を組むことを示す。幾つも竝んで連なる意を含む。軍旅の旅がその原義に近い。
落合
㫃と二つの人に從ひ、軍旗の下に人が集ふ樣を表してゐる。異體字には人を一つに簡略化した形などもある。族や戍などと同じく軍隊を意味するが、遠征する軍隊を指す用例が多い。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 軍隊。《合集》33087
丁巳卜王、在鑊、旅允伐。在[⿰毌毌]。
- 王の軍隊の編成區分。右旅、左旅が見える。《屯南》2328
翌日、王其令右旅眔左旅、插見方、[屮戈]、不雉衆。
- 地名またはその長。第一期(武丁代)には領主が旅婦とも呼ばれてゐる。また第二期(祖庚祖甲代)には貞人(出組)として見える。殷金文の圖象記號にも類似形がある。《合集》30267
王其作[⿰人⿱冉土]于旅邑…其受祐。
後に、軍隊の移動から轉じて「たび」の意味でも使はれるやうになつた。古文には辵を加へた字形も見えるが、篆文以降には繼承されていない。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、㫃と二人に從ふ。金文はあるいは一人あるいは三人に從ふ。衆人が軍旗の指揮下に在りて出師するの意と解き、本義は軍旅、師旅、行旅。旅行の意を派生する。
金文はあるいは車を加へ、旅字の聲符と意符を兼ね、兵車を以て行軍を強化するの意。戰國文字は㫃の上部を段々と誤り止の形に變はる。『説文解字』の古文と戰國の者字の形體は相近く混じり易く、文意によつて判斷せねばならない。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐ、軍旅、軍隊を表す。《合集》36426
振旅
は、軍隊を整頓することを表す。『尚書・大禹謨』班師振旅
。 - 祭名、地名に用ゐる。
金文での用義は次のとほり。
- 隨行、行旅を表す。伯多父盨
白(伯)多父乍(作)旅盨
は、伯多父が隨行の盨を製造することを表す。 - 讀みて黸あるいは玈となし、黑色を表す。夨簋
旅(黸)弓十
は、十張の黑い弓を表す。 - 人名、地名に用ゐる。
戰國竹簡での用義は次のとほり。
- 行旅を表す。《清華簡二・繫年》簡29
改旅於陳
。 - 魯の通假字となす。《包山楚簡》簡4
魯昜(陽)公
は、戰國時代の楚の魯陽邑公を指す。
屬性
- 旅
- U+65C5
- JIS: 1-46-25
- 當用漢字・常用漢字
- 旅
- U+F973 (CJK互換)
- 旅︀
- U+65C5 U+FE00
- CJK COMPATIBILITY IDEOGRAPH-F983
- 旅󠄁
- U+65C5 U+E0101
- CID+14088
- 旅󠄃
- U+65C5 U+E0103
- MJ013110
- 𣥏
- U+2394F
- 𣃨
- U+230E8
- 𣥐
- U+23950
關聯字
旅聲の字
- 膐