號 - 漢字私註
説文解字
号部号字條
説文解字注
痛聲也。号、嗁也。凡嗁號字古作号。《口部》曰、嗁、号也。今字則號行而号廢矣。
从口在丂上。丂者气舒而礙。雖礙而必張口出其聲。故口在丂上。号咷之象也。胡到切。二部。按當讀平聲。凡号之屬皆从号。
号部號字條
呼也。从号从虎。乎刀切。
- 五・号部
説文解字注
嘑也。嘑各本作呼。今正。呼、外息也。與嘑義別。《口部》曰、嘑、號也。此二字互訓之證也。『〔爾雅〕釋言』曰、號、謼也。『〔詩〕魏風〔碩鼠〕傳』曰、號、呼也。以『說文』律之。謼、呼、皆假借字。號嘑者、如今云高叫也。引伸爲名號、爲號令。
从号从虎。嗁号聲高、故从号。虎哮聲厲、故从虎。号亦聲。乎刀切。亦去聲。二部。
康煕字典
- 部・劃數
- 虍部・七劃
『唐韻』『正韻』胡刀切『集韻』乎刀切、𠀤音豪。〔音1〕大呼也。『詩・大雅〔蕩〕』式號式呼。『小雅』載號載呶。《傳》號呶、號呼讙呶也。
又哭也。『易・同人』先號咷而後笑。『周語』夫婦哀其夜號也。而取之以逃于褒。
又雞鳴也。『晉書・律歷志』雞始三號。
又『廣韻』胡到切、音号。〔音2〕名號也。『公羊疏』春秋貴賤不嫌同號。《註》通同號稱也。『白虎通』【春秋傳】曰、王者受命于王、必擇天下之美號、以爲號也。『周禮・春官・大祝』掌辨六號。《註》號謂尊其名、更爲美稱。又『夏官・大司馬』家以號名。《註》鄕遂之屬謂之名、家之屬謂之號。又『冢人』詔其號。《註》謂諡號。
又號令也。『易・渙卦』渙汗其大號。
又號召也。『齊語』使周游四方、以號召天下之賢土。
又叶胡溝切。『皮日休・悼賈文』臨汨羅之漾漾兮、想懷沙之幽憂。森樛羅以蓊鬰兮、時逬狖以相號。
『集韻』本作号、又作唬。
- 部・劃數
- 口部・二劃
『廣韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤同號。詳虍部號字註。
音訓義
- 音
- ガウ(呉) カウ(漢)⦅一⦆
- ガウ(呉) カウ(漢)⦅二⦆
- ケウ(推)⦅三⦆
- 訓
- さけぶ⦅一⦆
- 官話
- háo⦅一⦆
- hào⦅二⦆
- 粤語
- hou4⦅一⦆
- hou6⦅二⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・下平聲・豪・豪』胡刀切
- 『集韻・平聲三・𩫞第六・𩫞』乎刀切
- 『五音集韻・中平聲卷第四・豪第十四・匣一豪』胡刀切
- 聲母
- 匣(喉音・全濁)
- 等呼
- 一
- 官話
- háo
- 粤語
- hou4
- 日本語音
- ガウ(呉)
- カウ(漢)
- 訓
- さけぶ
- 義
- 叫ぶ。大聲で叫ぶ。號叫。呼號。怒號。
- 泣く。泣き叫ぶ。號哭。號泣。
- 釋
- 『廣韻』
號: 大呼也。又哭也。『詩』云「或號或呼」。〔補註1〕『易〔同人〕』云「先號咷而後𥬇」。又乎到切。
- 『集韻』
號臯号唬: 『說文』呼也。或作諕、亦作臯号唬。
- 『五音集韻』
號臯号唬: 大呼也。又哭也。『詩』云「式號式呼」。『易』云「先號咷而後笑」。又乎到切。
- 『康煕字典』上揭。
- 補註1
- 『詩・大雅・蕩』。中國哲學書電子化計劃版、上揭『康煕字典』引用、『五音集韻』引用の何れも
式號式呼
に作る。
⦅二⦆
- 反切
- 『廣韻・去聲・号・号』胡到切
- 『集韻・去聲下・号第三十七・号』後到切
- 『五音集韻・去聲卷第十一・号第十四・匣一号』胡到切
- 聲母
- 匣(喉音・全濁)
- 等呼
- 一
- 官話
- hào
- 粤語
- hou6
- 日本語音
- ガウ(呉)
- カウ(漢)
- 義
- 大聲で呼ぶ。言ひ附ける。言ひ觸らす。號召。號令。
- 稱へる。またその稱へ。稱號。諡號。年號。名號。
- しるし。記號。信號。
- 順序を示す。番號。
- 釋
- 『廣韻』
号: 号令。又召也、呼也、諡也。亦作號。胡到切、六。號: 上同。又乎刀切。
- 『集韻』
号: 後到切。『說文』痛聲也。文十五。
- 『集韻』
號: 此令也。一曰名號。
- 『康煕字典』上揭。
⦅三⦆
- 反切
- 『集韻・平聲三・宵第四・囂』虛嬌切
- 『五音集韻・中平聲卷第四・宵第十二・曉三嚻』許驕切
- 聲母
- 曉(喉音・全清)
- 等呼
- 一
- 日本語音
- ケウ(推)
- 義
- 呺に同じ。
- 釋
- 『集韻』
呺𧦢号: 呺然、虛大貌、李軌說。或作𧦢号。
解字
白川
号
『說文』に痛む聲なり
とあつて、悲しみ叫ぶ聲とする。
号は呵と字形近く、ともに祝告を收めた器の形である口に對して、柯枝を加へてゐる形。呵は呵𠮟してその祝禱の成ることを求め、号は號呼して哀訴する意。
号はもと號とは別の字。いま號の略字として用ゐる。
號
形聲。聲符は号。その字形より見て、虎の嘯きを本義とする字であらう。のち凡そ鳥獸の大聲で號呼することをいふ。
『說文』に嘑ぶなり
(段注本)、嘑字條に號ぶなり
とあつて互訓。号、虎に從ふ會意字とするが、号聲の字。《段注》に号の亦聲とするが、虖、哮などと同じく、その聲をとる字。
『詩・魏風・碩鼠』誰之永號
(誰か之れ永號せん)『詩・小雅・賓之初筵』載號載呶
(載ち號び載ち呶し)のやうに、大聲で叫ぶことをいふ。
『周禮・春官・大祝』辨六號
(六號を辨ず)とは、神示(神の名)牲幣の呼び方を定める意で、牛には「一元大武」(武はあし)〔註1〕、鷄を「翰音」(聲高く鳴く)〔註2〕といふ類。
- 註1
- 『禮記・曲禮下』
凡祭宗廟之禮、牛曰一元大武。
唐・孔穎達・正義元、頭也。武、跡也。牛若肥則腳大、腳大則跡痕大、故云一元大武也 。
- 註2
- 『禮記・曲禮下』
雞曰翰音。
藤堂
号は、口と丂(屈曲して出るさま)の會意で、大きな口を開け、聲をかすらせて怒鳴る意を示す。
號は、虎(虎の吼えるやうな)と号の會意兼形聲。虎のやうな太い聲で叫ぶこと。
落合
西周〜東周代の號は、旁が虎、偏が曲線。恐らく曲線が發聲を表し、虎が吠える樣子の指示字。秦代には曲線を聲符の号に替へた號が作られてゐる。虎が吠えるやうに大聲で叫ぶことが原義であるが、引伸義で「號令」や「稱號」などの意味に使用されてゐる。
東周代の号は口と女に近い形を使用してをり、恐らく女性が泣き叫んでゐる樣子を表した會意字。そこから女を類似形の于に替へた形が作られ、篆文は更に丂に替へた形。字源から言へば誤りだが、後代には丂が「息を出す樣子の表現」と誤解されてゐたので、口と「息を出す樣子」を合はせた會意字と再解釋されたのであらう。
漢字多功能字庫
號は虎に從ひ、号亦聲。本義は虎の吼える聲。引伸して叫び聲の意。
號字は虎に從ひ、呼號(鳴き叫ぶ)の聲を表す。古くは至る所の山林で、虎が災ひであり、虎の吼える聲は人を脅かした。それで、號叫(叫喚)の聲は最も容易に人に虎の嘯きを聯想させる。故に、號字は虎を意符とし、もとは虎の咆哮を指した。
- 南北朝・(釋)慧皎『高僧傳』卷十一〈習禪二十一人・帛僧光二〉
行入數里、忽大風雨、群虎號鳴。
引伸して動物の鳴き聲を表す。
- 『史記・曆書』
時雞三號、卒明。
- 宋・梅堯臣〈寄題澤州園亭〉
春歸百禽號、摶黍及布穀。
更に引伸して一切の生物、事物の叫び聲を表す。
- 清・呂潛〈邗江夏夜懷史赤豹蕭寺〉
月冷空王閣、風號故相墳。
- 唐・杜甫〈茅屋為秋風所破歌〉
八月秋高風怒號、卷我屋上三重茅。
號はまた名號、稱號、號令などの義を表す。『說文』號、呼也。(後略)
段玉裁は「號、嘑也。
と改め、注に呼、外息也、與嘑義別。
と云ひ、又號嘑者、如今云高叫也、引伸為名號、為號令。
と云ふ。
早期には單獨の號字は見えず。西周中期の老簋に、水と號に從ふ字がある。老簋魚于大𪷢
。陳劍は、「大𪷢」を釋して「大沼」と讀み、大きな沼澤のこととする。全句で大きな沼澤にゐる魚を捕らへることを表す。
戰國金文では名號を表す。商鞅量立號為皇帝。
屬性
- 號
- U+865F
- JIS: 1-73-43
- 号
- U+53F7
- JIS: 1-25-70
- 當用漢字・常用漢字
關聯字
号に從ふ字を漢字私註部別一覽・口部・号枝に蒐める。