九 - 漢字私註
説文解字
陽之變也。象其屈曲究盡之形。凡九之屬皆从九。舉有切。
- 十四・九部
説文解字注
昜之變也。『列子』『春秋䋣露』『白虎通』『廣雅』皆云、九、究也。象其屈曲究盡之形。許書多作詰詘。此云屈曲。恐後人改之。舉有切。三部。
康煕字典
- 部・劃數
- 乙部(一劃)
『唐韻』『正韻』舉有切『集韻』『韻會』己有切、𠀤音久。數也。『說文』陽之變也。『易・乾・文言』乾元用九、天下治也。『列子・天瑞篇』一變而爲七、七變而爲九、九變者、究也。
又算法曰九九。『韓詩外傳』齊桓公設庭爎待人士、不至。東野有以九九見者、曰、九九薄能耳、君猶禮之、况賢於九九者乎。《註》若今九章算法。
又『荆楚歲時記』俗用冬至次日、數及九九八十一日爲寒盡。
又『史記・騶衍傳』中國之外、有赤縣神州者九。
又九之爲言多也。『公羊傳・僖九年』葵丘之會、桓公震而矜之、叛者九國、言叛者衆、非實有九國也。宋趙鵬飛曰、會葵丘惟六國、會鹹牡丘皆七國、會淮八國、猶漢紀謂叛者九起也。
又陽九、戹也。『左思・吳都賦』世際陽九。《註》陽戹五、隂戹四、合爲九。
又姓。又複姓。『何氏姓苑』岱縣人、姓九百、名里。又秦穆公時九方阜、一名歅。善相馬、見『列子』。
又隷書防詐譌、凡紀數、九借用玖。《𨻰絳曰》洪容齋五筆、九作久、陽數九爲老久義也。玖、黑色玉也。借作玖、非。
又『韻會』渠尤切、音仇。國名。『史記・殷本紀』九侯。《註》音仇。
又『集韻』『正韻』𠀤居尤切、音鳩。聚也。『論語』九合諸侯。『莊子・天下篇』禹親操橐耜、以九雜天下之川。《註》九、讀糾。糾合錯雜、使川流貫穿注海也。九與鳩糾勼𠀤通。
音訓・用義
- 音
- (1) キウ(漢) ク(呉) 〈『廣韻・上聲・有・久』舉有切〉[jiǔ]{gau2}
- (2) キウ(漢) ク(呉) 〈『集韻』居尤切、音鳩、平聲〉
- 訓
- (1) ここのつ。ここのたび。
- (2) あつまる。
解字
白川
象形。龍蛇の形に象る。龍蛇に虫形と九形とあり、九は岐頭の形で恐らく雌龍。虫と九と組み合はせた形は禹。九州の水土を治めたとされる神である。
『説文解字』に陽の變なり。其の屈曲し、究盡するの形に象る。
とする。
七は陽の正、九は陽の變。故に『易』の陽爻を初九、九二、上九のやうにいふ。
數の九に用ゐる。
藤堂
象形。腕を曲げて引き締める姿を描いたもので、つかへて曲がる意を示す。
轉じて、一から九までの基數のうち、最後の引き締めにあたる九の數。また指折り數へて、両手で指を全部引き締めようとするときに出て來る九の數を示す。
落合
象形。物體が屈曲した形であるが、『説文解字』には何が曲がつたものかは述べてゐない。近い形に又があり、腕を曲げた形とするのが正しい。
肘の本字とする説もあるが、それに該當するのは寸。但し、肘と九は上古音で同部であり、語源としては近かつた可能性がある。そのほか、九の語源としては究や窮との關聯も指摘されてゐる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- ここのつ。《合補》4130
貞、九羌、卯九牛。
- 九番目。《英藏》2122
貞、亡尤。在九月。
- 禍巫九咎
- 占卜用語。詳細不明。
漢字多功能字庫
甲骨文の九と肘は同じ形。商周金文、戰國文字の構形のいづれも甲骨文に同じ。九は肘を表し、肘の初文(丁山、明義士、李孝定)。後に字の下に點を加へて寸字を作る。九を後に假借して數字となす。『説文解字』九、陽之變也。象其屈曲究盡之形。(後略)
甲骨文では本義に用ゐる。《合集》13677正疾九(肘)
は、肘に疾病あることをいふ。
また、甲骨文、金文では數や序數を表す。
- 《合集》358
𤉲(燎)九牛
は、九頭の牛を用ゐて燎祭を行ふことをいふ。 - 《合集》8108
九月、才(在)鯀。
- 折方彝
隹(唯)王十又(有)九祀。
祀は年のことで、ここでは周王の十九年を指す。
戰國竹簡でも數詞に用ゐる。《上博竹書二・容成氏》簡5匡天下之正(政)十又(有)九年而王天下。
馬王堆帛書に「九州」の語がある。『書・禹貢』禹別九州。
按ずるに九州とは冀州、兖州、青州、徐州、揚州、荊州、豫州、梁州、雍州のこと。ほかに馬王堆帛書には「九天」の語もある。『楚辭・離騷』指九天以為正兮。
王逸注九天、謂中央八方也。
古璽では九を通假して鳩となす。《古璽彙編》1551孫九(鳩)益(夷)。
吳振武、徐在國は均しく「鳩夷」と讀む。『路史』は其れを以て宋公族之後
となす。
傳世文獻では九を數詞に用ゐるほか、廣く多數を指すのに用ゐる。『廣雅・釋詁四』九、究也。
汪中『述學・釋三九上』因而生人之措辭、凡一二之所不能盡者、則約之三以見其多。三之所不能盡者、則約之九以見其極多、此言語之虛數也。
劉師培『古書疑義舉例補・虛數不可實指之例』蓋九訓為究、又為極數、凡數之指其極者、皆得稱之為九、不必泥于實數也。
屬性
- 九
- U+4E5D
- JIS: 1-22-69
- 當用漢字・常用漢字
關聯字
九に從ふ字
漢字私註部別一覽・又部・九枝に蒐める。
其の他
- 玖
- 大字。