豹 - 漢字私註

説文解字

豹
似虎、圜文。从聲。北敎切。
豸部

説文解字注

豹
佀虎、圜文。 豹文圜。『易〔革・上六・象傳〕』曰、君子豹變、其文蔚也。豹一名从虎勺聲。北敎切。二部。

康煕字典

部・劃數
豸部・三劃

『唐韻』北敎切『集韻』『韻會』巴校切『正韻』布恔切、𠀤音爆。『說文』似虎圜文。『陸璣・詩疏』毛赤而文黑謂之赤豹、毛白而文黑謂之白豹。『爾雅翼』屠州有黑豹。『洞冥記』靑豹出浪坂之山、色如翠。『本草衍義』土豹更無文色、其形小。『正字通』豹狀似虎而小、白面、毛赤黃、文黑如錢圈、中五圈、左右各四者、一曰金錢豹、宜爲裘。如艾葉者曰艾葉豹。又西域有金線豹、文如金線。『易・革卦』君子豹變。《疏》如豹文之蔚縟也。『詩・鄭風』羔裘豹飾、孔武有力。『張衡・西京賦』搤水豹。《註》謂水處也。『列子・天瑞篇』程生馬。《註》程卽豹也。

又『周禮・天官・司裘』王大射、則共虎侯、熊侯、豹侯、設其鵠。《註》豹侯、卿大夫以下所射。

又『後漢・輿服志』最後一車懸豹尾。『古今注』豹尾車、周制也。古軍正建之、今唯乗輿建焉。

又姓。『風俗通』八元叔豹之後。『魏志』騎將豹皮公。

音訓

反切
廣韻・去聲』北敎切
官話
bào
粤語
paau3
日本語音
ヘウ(呉) ハウ(漢)

解字

白川

象形。豹斑のある豹の形。豹斑の形が、のちの字形となつた。

『説文解字』に虎に似て圜文ありとし、勺聲とするが、聲が合はない。

卜文に、豹斑を加へた虎形の字があり、もと全體象形の字。

藤堂

と音符()の形聲。

落合

甲骨文は豹の象形。の異體に字形が近いが胴體の模樣が豹柄になつてゐる。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 人名。第一期(武丁代)。倉の領主であり、倉侯豹や侯豹と呼ばれる。恐らく倉侯虎と同一人物。《合集》10055…令倉侯豹歸。

字形は古文でから成る形が作られた。豸を意符、勺を聲符とする形聲字と看做す説が多いが、勺は上古音の段階で既に入聲であるため、豹の上古音を入聲で復元する説のほか、勺の部分を豹の柄が變化したものとする説もある。後者の場合は(形聲字ではなく)會意字。

漢字多功能字庫

甲骨文は豹を橫から見た形に象り、中の圓點は豹の斑紋に象る。本義は豹。後に引伸して豹類の動物の通稱となす。

『説文解字』似虎、圜文。《段注》豹文圜。『易』曰、君子豹變、其文蔚也。豹一名程。「豹變」とは自己の德行を豹紋のやうに顯著に變化させること。このほか、豹は晝には隱れ潜み夜に行くことから、「豹隱」は君子が隱れ棲んで出仕しないことを表す。また「全豹」は事物の全體を指し、あるいは事情の全部を指し、「可見一斑」の「一斑」を事情の部分と解くのと相對する。

甲骨文の豹の字形はに似てをり、身に圓斑を有し、象形字に屬す。金文の豹はに從ひ聲の形聲字に進展變化してゐる。虎、豹のいづれも兇猛な獸で、故に文獻に多く虎、豹を竝べて擧げる。『禮記・郊特牲』虎豹之皮、示服猛也。

甲骨文では人名に用ゐる。《合集》3303豹歸

金文では本義に用ゐる。殿敖簋蓋豹皮

豹字は『説文解字』の注に「北教切」とされ、中古には幫母に屬す。今は多く不送氣唇音聲母p(補註: 拼音ではb)に讀むが、粤語は送氣聲母ph(補註: 拼音ではp)に讀み、多くの漢語の方言の讀み方とは異なる。

屬性

U+8C79
JIS: 1-41-31
人名用漢字