豸 - 漢字私註

説文解字

豸
獸長𦟝、行豸豸然、欲有所司殺形。凡豸之屬皆从豸。池爾切。司殺讀若伺候之伺。
豸部

説文解字注

豸
獸長𦟝行豸豸然。欲有所司殺形。緫言其義其形、故不更言象形也。或曰此下當有象形二字。今之字。許書無伺。凡獸欲有所伺殺、則行步詳宷。其脊若加長。豸豸然、長皃。文象其形也。『周禮〔夏官〕射人』以貍步張三侯。《注》云、貍、善搏者也。行則止而儗度焉。其發必𫉬。是以量矦道法之也。許言獸者、謂凡殺物之獸也。『〔爾雅〕釋蟲』曰、有足謂之蟲、無足謂之豸。按凡無足之蟲體多長、如蛇蚓之類。正長脊義之引伸也。『上林賦』曰、陂池貏豸。卽『子虛賦』之罷池陂陀。『西京賦』曰、增嬋娟以此豸。按貏豸謂迆邐之長。此豸謂婀娜之長。亦皆長義之引伸。古多叚豸爲解廌之。以二字古同音也。廌與解古音同部。是以廌訓解。『方言』曰、廌、解也。『左傳〔宣十七年〕』庶有豸乎。『釋文』作廌、引『方言』廌、解也。《正義》作豸、引『方言』豸、解也。今本『釋文』廌譌爲鳩。今本『方言〔十二〕』廌譌爲瘛。音胡計切。葢古書之難讀如此。池爾切。十六部。凡豸之屬皆从豸。

康煕字典

部・劃數
部首

『唐韻』池爾切『集韻』『韻會』丈尒切、𠀤音坁。『爾雅・釋蟲』有足謂之蟲、無足謂之豸。『集韻』亦作𧋈

又『說文』獸長𦟝、行豸豸然、欲有所司殺形。《註》徐鍇曰、豸豸、背隆長貌。

又解也。『左傳・宣十七年』使卻子逞其志、庶有豸乎。《註》豸、解也。

又『史記・司馬相如傳』陂池貏豸。『文選・李善註』貏豸、漸平貌。

又嫋娜也。『張衡・西京賦』增嬋娟以跐豸。《註》跐豸、姿狀嫋娜也。

又『正韻』丈几切、音跱。義同。

又『廣韻』宅買切『集韻』『韻會』丈蟹切、𠀤音𥍪。與通。『史記・司馬相如傳』弄解豸。『後漢・輿服志』法冠、或謂之獬豸冠。獬豸、神羊、能別曲直、故以爲冠。『佩觿集』蟲豸之豸爲獬廌。

『廣韻』同𧳋

部・劃數
虫部・七劃

『集韻』丈爾切、音䒨。同。『說文』有足謂之蟲、無足謂之豸。『揚子・太玄經』𢛅堅禍、惟用解𧋈之負。字本作豸、或加虫。

廣韻

卷・韻・小韻
上聲
反切
池爾切

蟲豸。『爾雅』云、有足曰蟲、無足曰豸。『說文』云、獸長𦟝、行豸豸然、欲有所伺殺形。

池爾切、十二。

卷・韻・小韻
上聲
反切
宅買切

同。

音訓義

⦅一⦆

反切
廣韻・上聲』池爾切
官話
zhì
粤語
zi6
日本語音
チ(漢)
足のない蟲。

⦅二⦆

反切
廣韻・上聲』宅買切
粤語
zaai6
日本語音
タイ(漢)
と通用。

解字

白川

象形。獸の形。神判に用ゐる神羊を解豸、また解廌といふ。の省略形ともみられる字形。

『説文解字』に獸の長脊にして、行くこと豸豸然として、司(伺)殺する所有らんと欲するの形なりとする。

『爾雅・釋蟲』(上揭)に足有る、之れを蟲と謂ひ、足無き、之れを豸と謂ふとするが、豸は獸の側身形で、明らかに足をしるしてゐる。

廌は豸の全形であらうと考へられ、法の初文灋は廌に從ふ。灋は神判に敗れた人()を、その自己詛盟の器の蓋を除き(𠙴)、敗訴者の神羊(廌)とともに水に流し、廢棄する意。金文には灋を廢棄の意に用ゐる。

藤堂

象形。のそのそ步く獸を描いたもの。

落合

口を開けた獸の象形。いづれの動物かは不明。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 祭祀の對象。詳細不明。《合集》13521丁酉卜亘貞、將甑于豸。
  2. 地名またはその長。第一期(武丁代)には領主が子豸とも呼ばれる。また第三期(康丁武乙代)には貞人(何組)の例もある。《合集》137自北子豸告曰、昔甲辰、方征于、孚人十又五人。

漢字多功能字庫

甲骨文と小篆の形は近い。口を開けた猛獸に象り、橫から見て二足長尾の形に作る(徐中舒)。本義は野獸。

徐中舒は足のある猛獸とする。、貔、豺などの字は豸に從ふ。『爾雅・釋蟲』や《段注》の説く所は本義に非ず。

唐蘭が最初にこの字を豸と釋し讀んだ。一説には猫、虎の類の脊の長い貓科の動物に象る(馬敍倫、馬如森)。豸は本來は貓の音で讀むべく、の從ふ豸は音を標示する、とする説もある。

甲骨文では地名に用ゐる。

秦簡では脚のない蟲を表す。《睡虎地秦簡・日書甲種》鳥獸虫豸甚眾殺虫豸、斷而能屬者、濆以灰、則不屬矣。『爾雅・釋蟲』有足謂之蟲,無足謂之豸。

『説文解字』豸、獸長脊、行豸豸然、欲有所司殺形。(後略)《段注》許言獸者、謂凡殺物之獸也。『釋蟲』曰、有足謂之蟲、無足謂之豸。按凡無足之蟲體多長、如蛇蚓之類。正長脊義之引伸也。

屬性

U+8C78
JIS: 1-76-24
𧋈
U+272C8

關聯字

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