祀 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
祭無巳也。析言則祭無巳曰祀。从巳而釋爲無巳。此如治曰亂、徂曰存。終則有始之義也。『〔爾雅〕釋詁』曰、祀、祭也。
从示巳聲。詳里切。一部。
祀或从異。『周禮〔春官〕大宗伯』、『〔同・同〕小祝』《注》皆云、故書祀作禩。按禩字見於故書。是古文也。篆隷有祀無禩。是以漢儒杜子春、鄭司農不識。但云當爲祀、讀爲祀。而不敢直言古文祀。葢其愼也。至許乃定爲一字。至魏時乃入《三體石經》。古文巳聲異聲同在一部。故異形而同字也。
康煕字典
- 部・劃數
- 示部・三劃
- 古文
- 𥛴
『唐韻』詳里切『集韻』『韻會』象齒切『正韻』詳子切、𠀤音似。祭也。『書・洪範』八政、三曰祀。『禮・祭法』聖王制祭祀、法施於民則祀之、以死勤事則祀之、以勞定國則祀之、能禦大葘則祀之、能捍大患則祀之。又『月令』春祀戸、夏祀竈、秋祀門、冬祀行、中央土、祀中霤。又『祭法』王爲羣姓立七祀、諸侯爲國立五祀、大夫立三祀、適士二祀、庶士庶人一祀。
又年也。『書・伊訓』惟元祀。《傳》取四時祭祀一訖也。『釋名』殷曰祀。祀、巳也。新氣升、故氣巳也。
又『孝經・士章疏』祀者、似也。似將見先人也。
又叶夷益切、音亦。『詩・小雅』以爲酒食、以享以祀。叶上翼下福、福音壁。
又叶養里切、音以。『詩・大雅』克禋克祀、以弗無子。『司馬相如・封禪頌』孟冬十月、君徂郊祀、馳我君輿、帝用享祉。
又叶詳兹切、音祠。『參同契』絫土立壇宇、朝暮敬祭祀。鬼物見形象、夢寐感慨之。
『集韻』或作𥘰。
- 部・劃數
- 示部・五劃
- 部・劃數
- 示部・十二劃
『集韻』同祀。
- 部・劃數
- 示部・十二劃
『集韻』祀古作𥛴。註詳三畫。
廣韻
- 卷・韻・小韻
- 上聲・止・似
- 反切
- 詳里切〔音1〕
年也。
又祭祀。
- 卷・韻・小韻
- 上聲・止・似
- 反切
- 詳里切〔音1〕
竝上〔祀〕同。
集韻
- 卷・韻・小韻
- 上聲上・止第六・佀
- 反切
- 象齒切〔音1〕
『說文』祭無巳也。
或从㠯、从異、从司〔祠〕。古作𥛴。
音訓義
- 音
- シ(漢) ジ(呉)⦅一⦆
- 訓
- まつる。まつり。とし。⦅一⦆
- 官話
- sì⦅一⦆
- 粤語
- zi6⦅一⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・上聲・止・似』詳里切〔廣韻1〕
- 『集韻・上聲上・止第六・佀』象齒切〔集韻1〕
- 『呉音集韻・上聲卷第七・旨第四・邪・四似』詳里切
- 聲母
- 邪母(齒頭音・全濁)
- 官話
- sì
- 粤語
- zi6
- 日本語音
- シ(漢)
- ジ(呉)
- 訓
- まつる
- まつり
- とし
- 義
- 殷代には年の意に祀を用ゐた。
解字
白川
形聲。聲符は巳。巳は蛇の形。自然神を祀ることを祀といふ。
『説文解字』に祭りて已むこと無きなり
とし、旁を「已む」と解するが、卜文、金文の字形は巳に從ふ。
『周禮・春官・司服』祭群小祀
(群小祀を祭る)の《注》に林澤墳衍(丘)、四方百物の屬なり
とあり、すべて地物を祀ることをいふ。
『説文解字』に重文として錄する禩は異に從ふ。異は鬼の正面形で、その尸坐する形。百物の怪異を祀る意。
蛇は本邦でも夜刀神といひ、溪谷を支配する神とされた。
祀を年歲の意に用ゐるのは、殷の祖祭の體系で周祭五祀と呼ばれるものが、終始一巡するのにあたかも一年を要するので、その一巡するを一祀、二祀と數へたからである。もと自然神を祀る意の祀が、その頃には祖祭を呼ぶのに用ゐられた。
祭祀といふ祭の字は、示(祭壇)に肉を薦める形で、祭儀の形式をいふ字。
藤堂
示(祭壇)と㠯(仕事する)の會意兼形聲で、祭禮を執り行ふこと。㠯の原字は、耕作に用ゐる曲がつた耜を描いた象形字で、以(道具で仕事する)と同じ。祀の旁はもとこの㠯印であり、巳(子供)ではない。
落合
形聲。甲骨文は、祭祀を象徵する示を意符、蛇の象形を聲符とし、蛇の象形は現用字の旁の巳に當たる。また甲骨文では蛇の象形を借りて祀の意に用ゐてゐた。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 祭祀の汎稱。《甲骨拼合集》282
辛卯卜㱿貞、我祀賓、諾。
- 王の即位年數を表す助數詞。「惟王幾祀」の形式で記されることが多い。第五期(文武丁乃至帝辛代)に初めて使はれ、殷金文のほか西周代の金文にも見える。《合補》10963・後半記時
王占曰、吉。在六月、甲午彡羌甲。惟王三祀。
- 地名またはその長。《英藏》2525・末尾記時
癸酉卜在祀奠河邑泳貞、王旬亡禍。惟來征人方。
- 口祀
- 王が即位した初年。
漢語多功能字庫
甲骨文、金文は、示と巳に從ひ、巳は聲符。古く已と巳は一つの字であつた。已は完畢(完了、終了)、停止を表す。『説文解字』は祀字を祭祀が永續し、香火(神佛に供へる線香と燈明)を絶やさざるの意と解く。『説文解字』祀、祭無已也。(後略)
甲骨文での用義は次のとほり。
- 年を表す。商代末期には五種類の祀典(祭儀)を以て先王先妣に順番に祭祀を行ふのに約三百六十日を要した。一年の日數に相當し、祀を用ゐて一年を表す所以である。『爾雅・釋天』
載、歲也。夏曰歲、商曰祀、周曰年、唐虞曰載。
《合集》37836隹(唯)王二祀
。 - 祭祀を表す。《合集》9658
祀岳
。
金文での用義は次のとほり。
- 祭祀を表す。
- 天亡簋
王祀于天室。
- 中山王圓壺
鄉(饗)祀先王。
- 天亡簋
- 西周の銘文には商代の習慣を踏襲して祀と稱へるものがある。大盂鼎
隹(惟)王廿又三祀。
『尚書・伊訓』惟元祀十有二月乙丑、伊尹祠于先王。
屬性
- 祀
- U+7940
- JIS: 1-67-11
- 𥘰
- U+25630
- 禩
- U+79A9
- JIS: 2-82-76
- JIS X 0212: 48-77
- 𥛴
- U+256F4