童 - 漢字私註
説文解字
- 童
男有辠曰奴、奴曰童、女曰妾。从䇂、重省聲。
- 三・䇂部
- 𥫍
- また𥪽につくる。
籒文童、中與𥩓中同从廿。廿、以爲古文疾字。
康煕字典
- 部・劃數
- 立部七劃
『廣韻』『正韻』徒紅切『集韻』『韻會』徒東切、𠀤音同。獨也。言童子未有室家者也。『增韻』十五以下謂之童子。『易・蒙卦』匪我求童蒙。『詩・衞風』童子佩觿。『穀梁傳・昭十九年』羈貫成童。《註》成童、八歲以上。又『增韻』女亦稱童子。『禮・記註』女子子在室、亦童子也。
又邦君妻自稱之謙辭。『論語』夫人自稱曰小童。
又牛羊之無角者曰童。『易・大畜』童牛之牿。『詩・大雅』俾出童羖。
又『釋名』山無草木曰童、若童子未冠然。『莊子・徐無鬼』堯聞舜之賢、舉之童土之地。《註》童土、無草木地。
又地名。『前漢・功臣表』童鄕侯鐘祖。
又草名。『爾雅疏』寓木、一名宛童。又稂、一名童梁。
又童童、盛貌。『蜀志』先主舍東南角桑樹童童、如小車蓋。
又『篇海』男有罪爲奴曰童使。『易・旅卦』得童僕貞。『前漢・貨殖傳』童手指千。《註》童、奴婢也。『韻會補』童、奴也、幼也。今文僮幼字作童、童僕字作僮、相承失也。
又姓。『急就篇註』顓頊子號老童、其後爲姓。『廣韻』漢有琅邪內史童仲玉。
又『集韻』諸容切、音鐘。『公羊傳・桓十一年』公會宋公于夫童。《註》童、音鐘。左氏穀梁皆作鐘。
又借作同。『列子・黃帝篇』狀與我童者、近而愛之。狀與我異者、疏而畏之。《註》童、同也。聲之譌也。
又叶徒黃切。『韓愈・此日足可惜詩』驚波暗合沓、星宿爭翻芒。馬乏復悲鳴、左右泣僕童。
- 部・劃數
- 立部十三劃
『集韻』與童同。
異體字
説文解字の重文。
音訓
- 音
- ドウ(慣)
- 訓
- わらべ。しもべ。はげやま。
解字
白川
形聲。金文の字形は東に從ひ、東聲。のち重に從ふ字形があり、重聲。里はその省略形。
上部は、古くは辛と目とに從ひ、目の上に入墨する意で、受刑者をいふ。結髮を許されず、それで童髮の者を童といふ。童幼の義は後の轉義。
金文の《毛公鼎》に死めて童せしむること毋れ
とあり、動の意に用ゐる。
童謠はもと童僕の徒の勞働の歌。『左傳』や『史記』に見える童謠は、服役者が勞働のときに歌つたもので、これを歌占として用ゐることがあつた。本邦の『天智紀』などに見える童謠もその類のものである。
童は僮の初文。僮は農奴的な身分のものをいふ。
藤堂
辛(鋭い刃物)と目と音符東と土の會意兼形聲。東(心棒を突き拔いた袋、太陽が突き拔けて出る方角)は突き拔く意を含む。童の下部の東と土は、重や動の偏と同じで、土(地面)を突き拔くやうに↓型に動作や重みが掛かること。童は刃物で目を突き拔いて見えなくした男のこと。
落合
甲骨文は、冠の形と見と土の會意。望とよく似た成り立ちであり、遠くを見渡す姿が原義であらう。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 地名。
- 動詞。詳細不明。
また甲骨文に見と五に從ふ形の字があるが、缺損片にしか見えず、異體か別字かは不明。
金文で、冠の形が、刃物の形の辛に變へられ、また借りて動(勞働の意)に用ゐられたため、字源を「目を潰された奴隸」とする説もあるが、甲骨文の字形には合致しない。
字形は金文で辛に從ふ形になつたほか、人の部分を發音が近い東に變へた形聲字が作られた。更に篆文で目が省かれ、隸書で辛が立に、東、土が里に簡略化された。
(補註: 落合説に從ふなら、現行の義は假借義(勞働の意)から更に轉義したものといふことになる。)
漢字多功能字庫
辛と目と𡈼に從ひ、人の目に刑を施すさまを象り、本義は盲。甲骨文は辛と目と𡈼に從ひ、あるいは辛ではなく䇂に從ふといふ。童字の上部が辛なのか䇂なのか見分けるのは難しい。
童字の構形に定論はなく、主要な三説がある。
- 辛は刑具を象り、字は罪人の形を象る、とする(季旭昇)。
- 童は瞳の古字で、人の眼睛に刑を施すさまを象り、本義を盲とする(張世超)。
- 童は有罪の奴隸で、髡刑(罪人の頭髮を全て剃る刑)を受けるため名を得る。孩童の頭は禿げてをり、故に童といふ、とする(楊琳)。
字形について見れば、第二の説が近い。
金文は聲符の東を加へる。毛公鼎の字形は東の下に土を加へる。
甲骨文では地名に用ゐる。
金文での用義は次のとほり。
- 假借して動となし、警戒し恐懼するの意。毛公鼎
毋童(動)余一人才(在)立(位)
。 - 假借して踵となし、車の部品を指す。番生簋
金童(踵)
。 - 假借して東となす。牆盤
長伐尸(夷)童(東)
。夷、東いづれも周の東部の地區のこと(『金文形義通解』參照)。
屬性
- 童
- U+7AE5
- JIS: 1-38-24
- 當用漢字・常用漢字
- 𥫍
- U+25ACD
- 𥪽
- U+25ABD
関聯字
童聲の字
- 蕫
- 犝
- 𧘂
- 橦
- 曈
- 穜
- 𤺄
- 罿
- 幢
- 僮
- 憧
- 潼
- 撞
- 疃
- 鐘
- 䡴