孟 - 漢字私註
説文解字
長也。从子皿聲。莫更切。
- 十四・子部
- 保の古文(𡥀)と良く似た形。同一か否かは不詳。
古文孟。
説文解字注
長也。从子皿聲。莫更切。古音在十部。讀如芒。『爾雅〔釋詁〕』孟、勉也。此借孟爲猛。
古文孟如此。
康煕字典
- 部・劃數
- 子部・五劃
『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤莫更切、音夢。『說文』長也。『禮緯』嫡長曰伯、庶長曰孟。『書・康誥』王若曰、孟侯、朕其弟小子封。『書傳』天子之子、年十八、稱孟侯。又女子之兄亦曰孟。
又『玉篇』始也、四時之首月曰孟月。『前漢・李尋傳』寅孟之月。
又『廣韻』勉也。『班固・幽通賦』盍孟晉以迨羣、辰倏忽其不再。《註》孟晉、勉進也。
又大也。『管子・任法篇』高言孟行、以過其情。
又州名、漢河內郡、卽古孟津、唐置孟州。
又『書・禹貢』被孟豬。『爾雅』作孟諸。『周禮』作望諸。《鄭註》澤藪曰望諸、卽孟豬也。
又姓、魯仲孫氏爲三桓之孟、故曰孟。
又『集韻』母朗切、音莽。無趣舍之謂。
又莫浪切、𥁃去聲。不精要貌。『莊子・齊物論』孟浪之言。
音訓・用義
- 音
- (1) マウ(漢) 〈『廣韻・去聲・映・孟』莫更切〉[mèng]{maang6}
- (2) バウ(漢) マウ(呉) マン(唐) 〈『康煕字典』莫浪切、𥁃去聲〉{mong6/mong5}
- 訓
- (1) をさ。かしら。はじめ。つとめる。
孟浪は、音(2)でマウラウあるいはマンランと讀み、とりとめのない意。
解字
白川
『説文解字』に長なり
とし、皿聲とするが、聲が異なる。
古文の字形は呆に從ひ、保の從ふところと同じで、呆は生子儀禮を示す字。生まれて初めての儀禮であるから、孟初の意となり、兄弟の順列に及ぼして孟長の意となる。
『方言・十二』や『廣雅・釋親』には姉なり
と訓じ、女子には孟、男子には伯といふ。金文には男子に用ゐることもあり、魯には孟孫、叔孫、季孫の氏を稱するものがあつた。
藤堂
子と皿(被せる皿、覆ひ)の會意。覆ひををかして子供が成長することを示す。季節の始め、兄弟の順番の始めを孟といふのは、勢ひよく伸びる先端に當たるため。
漢字多功能字庫
子に從ひ皿聲。本義は長子。あるいは子の旁らに兩點を飾筆に加へる。禾𣪕を見よ。『説文解字』の古文はこれに由來し、子字の繁に當たるが、金文にこの書き方をする獨體の子字は見えず、僅かに保、孟の從ふ子として出現する。
金文での用義は次のとほり。
- 兄弟姉妹の順序の一番目を指す。孟姬甗
孟姬安自乍(作)寶獻(甗)。
『左傳・成公十七年』昔吾畜於趙氏、孟姬之讒、吾能違兵
は、吾(韓厥)は昔趙氏の家で養はれ、孟姬は趙氏を誣告し陷れ、吾は能く兵を去つた、の意(補註: 引用は韓厥辭曰
に續く)。 - はじめと解く。蔡𥎦紐鐘
隹(唯)正五月初吉孟庚
の「孟庚」は一番目の庚の日のこと。 - 四季の最初の月を指す。陳璋方壺
陳得再立事歲、孟冬戊辰。
按ずるに『逸周書・周月』に歲在春夏秋冬、各有孟仲季、以名十有二月
とあり、孟冬は十月のこと。
戰國竹簡では地名に用ゐる。《上博竹書二・容成氏》簡51戊午之日、涉於孟𣿕(津)。
『尚書・泰誓』惟十有三年春、大會于孟津。
『史記・殷本紀』西伯既卒、周武王之東伐、至盟津、諸侯叛殷會周者八百。
楊伯峻孟津即盟津、在今河南孟縣南十八里。
戰國璽印では「孟」は多く姓氏に用ゐる。『通志・氏族略四』孟氏、姬姓。魯桓公子慶父之後也。又衛有公孟縶之後、亦曰孟氏。
秦簡では孟を讀んで盟となす。《睡虎地秦簡・日書乙種》簡17窞羅之日、利以說孟(盟)詐(詛)。
『周禮・夏官・詛祝』掌盟詛類造攻說檜禜之祝號。
鄭玄注盟詛、主於要誓、大事曰盟、小事曰詛。
漢帛書では孟と芒を通用する。《馬王堆帛書・戰國縱橫家書・須賈說穰侯章》第132行秦戰勝魏、走孟卯、攻大粱(梁)。
「孟卯」は齊人で、曾て魏の相に任ず。『韓非子・顯學』魏任孟卯之辯而有華下之患。
『戰國策』、『史記』は「芒卯」に作る。
屬性
- 孟
- U+5B5F
- JIS: 1-44-50
- 人名用漢字
關聯字
孟聲の字
- 猛
- 蜢