剌 - 漢字私註
説文解字
戾也。从束从刀。刀者、剌之也。
- 六・束部
康煕字典
- 部・劃數
- 刀部七劃
『唐韻』盧達切『集韻』『韻會』『正韻』郞達切、𠀤音辢。『說文』戾也。从束从刀。刀者、剌之也。《徐曰》剌、乖違者莫若刀也。『前漢・杜欽傳』無乖剌之心。
又『武五子傳』李姬生燕剌王旦。《註》師古曰、諡法、暴戾無親曰剌。
又『張衡・思玄賦』彎威弦之撥剌。《註》張弓聲。
又『李白詩』雙腮呀呷髫鬣張、跋剌銀盤欲飛去。《註》魚躍聲。
又『韻補』叶力蘖切、音列。『白居易・桐花詩』風𠋫一參差、榮枯遂乖剌。况吾北人情、不耐南方熱。
『韻會』从約束之束、从刀。與刺字不同。
音訓
- 音
- ラツ(漢) 〈『廣韻・入聲・曷・剌』盧達切〉[là]{laat6}
- 訓
- もとる
解字
白川
『説文解字』に戾るなり
とあり、束ねたものを解いてばらばらとなる意とする。
『淮南子・脩務訓』琴或撥剌枉橈
(琴或いは撥剌として枉橈す)は、強い撥音を形容する擬聲語。説文解字𣥠字條に足剌𣥠たるなり
といふのと同じ。
金文に字を烈の意に用ゐ、《班𣪘》克く厥の剌(烈)を競ふもの亡し
のやうに用ゐる。《秦公𣪘》剌剌𧻚𧻚
とあるものは烈烈桓桓
と同じ。
藤堂
刀と束(柴の束)の會意。鉈で刈らうとした柴が、ぱつと跳ね返ることを表す。
落合
束と刀の會意。絲の束を斷ち切る樣を表してゐる。午や𣱼に從ふ異體もある。
【補註】 漢字多功能字庫は、午(あるいは幺)に從ふ形の字を絕の甲骨文として擧げる。
甲骨文では、地名またはその長を表す。《殷墟花園莊東地甲骨》252叀剌人呼先奏、入人、迺往。用。
また束の異體に近い形に從ふ字があり、人名として使はれてゐる。(補註: 漢字多功能字庫はこの形の字を剌の甲骨文として擧げる。)《合集》27885庚午卜王貞、其呼小臣剌从。在甑。
字形は金文では束に從ふものと柬に從ふものが倂用されてゐるが、篆文では束に從ふ形が採用されてゐる。
字義についても變化があり、後代には切ることから轉じて背く意などに用ゐられた。
漢字多功能字庫
甲骨文は禾と口と刀に從ひ、刀を用ゐて禾の莖を切り取る形に象り、本義は禾を刈ること(參・季旭昇)。禾の中間に口がある形(口は指示符號で、禾の莖の部分を指す。)は、𥞥の初文で、禾の莖を表し、剌の聲符でもある。
甲骨文はあるいは禾に從はず木に從ふ。金文は木と口と刀の從ふ甲骨文を承ける字形のほか、柬と刀に從ふ形がある。張世超らは、柬は聲符で、早期金文の柬字はなほ禾の形を保留してゐるとする。後に柬字の兩點を連ねて橫劃とする。また刀ではなく刃に從ふ形がある。
甲骨文では人名に用ゐる。
金文での用義は次のとほり。
- 多く同音の烈の通假字となす。
- 功業を表す。中山王圓壺
以追庸(誦)先王之工(功)剌(烈)。
『詩・周頌・執競』執競武王、無競維烈。
毛亨傳烈、業也。
『淮南子・脩務』功烈不成。
- 光明、顯赫(赫々としてゐる、盛んである、著しい)を表し、稱揚の辭に用ゐる。𤼈鐘
𢼸史剌(烈)且(祖)來見武王。
- 周王の生稱に用ゐ、典籍に厲に作る。克鐘
王才(在)周康剌(厲)宮
の剌宮とは、周の厲王の宗廟のこと(唐蘭、于省吾)。
- 功業を表す。中山王圓壺
- 列の通假字となし、衆多を表す。中山王鼎
方數百里、列城數十
。 - 人名や樂律名に用ゐる。
屬性
- 剌
- U+524C
- JIS: 1-49-79
關聯字
剌聲の字
- 㻝
- 楋
- 賴
- 瘌
- 𢃴
其の他
刺は別字。