終 - 漢字私註
説文解字
絿絲也。从糸冬聲。
- 十三・糸󠄀部
古文終。
康煕字典
- 部・劃數
- 糸部五劃
- 古文
- 𣊂
- 𤽘
- 𣧩
- 𠔾
- 𡦿
- 𢍐
- 𣈩
- 𤽬
- 夂
『廣韻』職戎切『集韻』『韻會』之戎切、𠀤音螽。『說文』絿絲也。
又『玉篇』極也、窮也。『集韻』一曰盡也。『易・繫辭』『易』之爲書也、原始要終。『書・仲虺之誥』愼厥終、惟其始。『詩・大雅』高朗令終。
又『禮・檀弓』君子曰終、小人曰死。
又『左傳・文元年』先王之正、時也。履端于始、舉正于中、歸餘于終。《疏》歸其餘、分置于終末。言於終末乃置閏也。
又『左傳・襄九年』十二年矣、是謂一終、一星終也。
又『爾雅・釋天』月在壬曰終。
又『前漢・𠛬法志』地方一里爲井、井十爲通、通十爲成、成方十里、成十爲終。
又姓。『左傳・定四年』殷民七族、有終葵氏。『史記・秦本紀』秦之先爲嬴姓、其後分封、以國爲姓、有終黎氏。『前漢・終軍傳』終軍、字子雲、濟南人也。
又『韻補』叶諸仍切。『周易・坤・文言』以終叶成。
又『韻補』叶諸良切。『陳琳・迷迭香賦』竭歡慶於夙夜兮、雖幽翳而彌彰。事罔隆而不殺兮、亦無始而不終。
- 部・劃數
- 丶部五劃
『字彙補』古文終字。『亢倉子・全道篇』𥛜乎堯舜之閒、其𠂂存乎千代之後。
- 部・劃數
- 冂部・二劃
『字彙補』古終字。見【說文長箋】。註見糸部五畫。
- 部・劃數
- 宀部・三劃
『海篇』古文終字。註見糸部五畫。
- 部・劃數
- 廾部七劃
『字彙補』古文終字。註詳糸部五畫。
- 部・劃數
- 日部・九劃
『集韻』終古作𣈩。『六書索隱』日在甲上曰早、日在癸上曰𣈩。
- 部・劃數
- 日部・十一劃
『集韻』終古作𣊂。註詳糸部五畫。
- 部・劃數
- 歹部五劃
『玉篇』古文終字。註詳糸部五畫。
又『博雅』𣧩𣨛、竟也。
- 部・劃數
- 白部五劃
『字彙』古終字。『亢倉子・全道篇』其𤽘存乎千載之後、必有人與相食者矣。
- 部・劃數
- 白部七劃
『集韻』終、古作𤽬。註詳糸部五畫。
『字彙補』𤽘字出【亢倉子】。【字彙】以𤽬字亦爲【亢倉子】所製、誤。
夂字條に揭出。
異體字
簡体字。
音訓
- 音
- シウ(漢) 〈『廣韻・上平聲・東・終』職戎切〉
- 訓
- をはる。をへる。をはり。しぬ。つひに。
解字
白川
形聲。聲符は冬。冬は古音終。絲の末端を結び留めた形で、終の初文。
終は『説文解字』に絿絲なり
とし、絲を締める意とするが、末端を結んで終結とする意。
ゆゑに、ことの終はることを言ひ、終はるまでを始終といふ。
藤堂
糸と音符冬の會意兼形聲。冬は、冬の貯藏用の食物をぶら下げたさまを描いた象形字。金文では日印を、後には冫印(冰)を加へて、寒い季節を示した。收穫物を一杯貯へた一年の終はり。終は、絲卷きに絲を初めから終はりまで、いつぱい卷いてたくはへた絲の玉。最後まで行き著くの意を含む。
落合
甲骨文は象形字。字源には諸説あるが、系の初文や絕の初文と比較すると、切つた絲束の形と推定され、絲の終端を表した字であらう。嚴密に言へば初文は「夂」の部分。
甲骨文での用義は次のとほり。
- をはる。をへる。《甲骨綴合集》98
庚寅卜大貞、作喪小⿰𬔖⿹㇆一、終。八月。
- 最後の。最終の。《殷墟花園莊東地甲骨》61+62
癸卯卜亞奠貞。子占曰、終卜用。
- 終日
- 一日中。日の出から日の入りまで。《殷墟花園莊東地甲骨》103
己巳卜、雨其延巳。子占曰、其延、終日。用。
- 終夕
- 一晩中。日の入りから日の出まで。《英藏》1784
甲午卜王、爰𢧀、終夕。
- 終茲邑
- 都市を滅ぼすことを意味する語。恐らく茲邑は殷都を指し、王朝の滅亡を指してゐるのであらう。《合集》14210
貞、帝惟其終茲邑。
- ⿰冎兄十終
- 意味不明の語。第五期(文武丁乃至帝辛代)に見える。
後代に引伸義で一年の終はりに當たる冬期の意味で使はれるやうになり、篆文で冰の象形の冫が加へられた。因みに殷代には季節區分は春秋のみで夏冬は甲骨文に見えない。古くは冬は終と同音で、柊や螽の聲符にも用ゐられてゐる。
原義については意符として糸を附加した繁文が作られ、篆文で聲符が冬の形になつて終の字體が作られた。
漢字多功能字庫
終の甲骨文、金文は冬に作る。冬と終は古くもと同じ字。冬は最初、繩の終端を結ぶ形に象り、本義は終端。後に引伸して四季の終結の冬期の冬となす。篆文は糸に從ひ冬聲。本義は繩の終端を結ぶこと。《睡虎地秦簡・封診式》簡65「「丙死(屍)縣其室東內中北廦權、南鄉(嚮)、以枲索大如大指、旋通繫頸、旋終在項。」
物事の終局を表し、始と相對す。『詩・大雅・蕩』靡不有初、鮮克有終。
人の死亡を表す。『禮記・文王世子』文王九十七乃終。
終究(結局、所詮)を表す。『墨子・天志中』欲以此求賞譽、終不可得。
すべてを表す。『荀子・勸學』吾嘗終日而思矣、不如須臾之所學也。
既を表す。『詩・邶風・北門』終窶且貧、莫知我艱。
(補註: 既〜且〜で、〜であり其の上更に〜の意といふ。)
面積、時間、樂章を數量化する單位となす。
- 『漢書・刑法志』
地方一里為井。井十為通、通十為成、成方十里。成十為終。
- 『左傳・襄公九年』
十二年矣、是謂一終。
- 『禮記・鄉飲酒義』
工入、升歌三終。
孔穎達疏謂升堂歌『鹿鳴』、『四牡』、『皇皇者華』、每一篇而一終也。
屬性
- 終
- U+7D42
- JIS: 1-29-10
- 當用漢字・常用漢字
- 𠂂
- U+20082
- 𠔾
- U+2053E
- 𡦿
- U+219BF
- 𢍐
- U+22350
- 𣈩
- U+23229
- 𣊂
- U+23282
- 𣧩
- U+239E9
- 𤽘
- U+24F58
- 𤽬
- U+24F6C
- 终
- U+7EC8
關聯字
終や冬に從ふ字を漢字私註部別一覽・冬部に蒐める。