厃 - 漢字私註
説文解字
仰也。从人在厂上。一曰屋梠也。秦謂之桷、齊謂之厃。魚毀切。
- 九・厂部
説文解字注
仰也。从人在厂上。會意。魚毀切。十六部。危字从厃卪會意。一曰屋梠也。秦謂之楣。齊謂之厃。楣各本作桷。今依《木部》訂。《木部》曰、楣者、秦名屋櫋聮也。謂屋櫋聮、秦謂之楣也。《木部》又曰、齊謂之簷、楚謂之梠。此云齊謂之厃者、葢齊人或云簷或云厃也。
康煕字典
- 部・劃數
- 厂部・二劃
『唐韻』職廉切『集韻』之廉切、𠀤音詹。『說文』仰也。从人在厂上。一曰屋梠也。秦謂之桷、齊謂之厃。
又『集韻』五委切、音頠。又『集韻』『類篇』𠀤之嚴切。義𠀤同。
音訓
- 音
- グヰ(漢、呉) 〈『集韻』五委切、音頠、上聲紙韻〉[wěi]
- 〈『廣韻・下平聲・鹽・詹』職廉切〉[zhān]
- 〈『集韻』之嚴切〉
解字
白川
危の初文。
『説文解字』は厃を厂部に屬するが、厃は危、詹などの從ふところで、一部をなすべき字。
藤堂
⺈(跪く人)と厂(崖、高い所)の會意。高い所に人がゐるさまを表す。危の原字。また詹の構成要素。
落合
危の初文。字源には諸説あるが、甲骨文は先が太い杙の柄の曲がつた狀態を表してゐると考へられる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 地名。殷に敵對して危方と呼ばれた。下危も敵對勢力であるが、位置關係は不明。同一勢力かも知れない。《合補》10484
癸亥貞、危方以牛、其蒸于來甲申。
- 危美
- 人名。第三期〜第五期(康丁乃至帝辛代)。危の領主で、美が名。殷に討伐された。危伯美あるいは危方美とも呼ばれる。《合集》36481
…小臣牆從伐、禽危美人二十人四…人五百七十[⿰阝奚]百…車二丙[⿰月虎]八十三函五十矢…。
後代には「あやふい」の意で用ゐられたが、甲骨文にその用法はない。「あやふい」意が假借か引伸義かは不明。
西周代には出土資料に見えず、東周代には山の上に人がゐるやうな形になつてゐる。字形を再解釋したものであらう。
秦代には字形が再々解釋され、人と厂に從ふ形となり、崖の上に人がゐる樣子を表現してゐる。また、意符の卩を加へた繁文の危も作られた。卩は坐つた人の象形で、危險を恐れて坐り込んだ人の意味で用ゐられたと考へられる。
屬性
- 厃
- U+5383
- JIS X 0212: 20-35
關聯字
厃に從ふ字を漢字私註部別一覽・厃部に蒐める。