牲 - 漢字私註
説文解字
牛完全。从牛生聲。
- 段注に
引伸爲凡畜之偁。『周禮・庖人・注』始養之曰畜。將用之曰牲。按如鼷鼠食郊牛角、則非完全。
といふ。 - 二・生部
康煕字典
- 部・劃數
- 牛部五劃
『唐韻』所庚切『集韻』『韻會』『正韻』師庚切、𠀤音生。『說文』牛全完。从牛、生聲。『易・萃卦』用大牲吉。『書・微子』今殷民乃攘竊神祇之犧牷牲用。《傳》色純白曰犧、體完曰牷、牛羊豕曰牲、器實曰用。《疏》經傳多言三牲、知牲是牛羊豕也。『周禮・天官・膳夫』膳用六牲。《註》馬牛羊豕犬雞也。又『庖人註』六畜、六牲也。始養之曰畜、將用之曰牲。『春秋・僖三十一年』四卜郊、不從、乃免牲。『左傳』牛卜日曰牲。《註》旣得吉日、則牛改名曰牲。
又叶倉經切。『班固・東都賦』薦三犧、效五牲。禮神祇、懷百靈。○按【周禮・秋官・典客】云、上公牲三十有六。【註】云、牲當爲腥、聲之誤也。【釋文】依註音星、蓋【周禮】本當作腥、誤作牲。【鄭註】明言其誤。【正韻】引此、另音星、非是。
音訓
- 音
- セイ(漢) シャウ(呉) 〈『廣韻・下平聲・庚・生』所庚切〉[shēng]{sang1/saang1}
- 訓
- いけにへ
解字
白川
形聲。聲符は生。
『説文解字』に牛、完全なるなり。
とあつて、祭祀に用ゐる犧牲をいふ。
牲獸には皮毛筋角の完全なものを選んで用ゐた。牛の純色なるものを牷、體の全きものを全牷といふ。特に毛角(補註: 毛色の誤りか)や角が大事とされ、『論語・雍也』に犂牛之子騂且角、雖欲勿用、山川其舍諸。
(犂牛(雜毛の耕牛)の子も、騂くして且つ角あらば、用ふること勿らんと欲すと雖も、山川(の神)其れ諸れを舍てんや)と見える。
犧牲はもと生體のまま供へられ、「いけにへ」といふ。
藤堂
牛と音符生の會意兼形聲。生きたまま神前に供へる生々しい牛のこと。のち煮た動物の供へ物をもいふ。
落合
甲骨文は、羊と絲束の形(幺)またはその略體から成り、犧牲の羊に紐をつけて引く樣。隸定形は[⿰羊幺]。異體字に聲符として生を加へたものがあることから、牲の初文と考へられる。そのほか犧牲を引く手の形を加へたものもある。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 祭祀犧牲。《合補》10416
…卯卜、皋入牲、有豕。
- 地名またはその長。しばしば殷に敵對し、牲方とも呼ばれた。《合集》27986
今秋、叀吿伐牲。
- 牲伯⿱火皿
- 人名。第一期(武丁代)。敵對勢力である牲の領主。《合集》1118
丁卯卜…貞、奚…牲伯⿱火皿、用于丁。
字形は金文で牛を意符、生を聲符とする形聲字になつた。
漢字多功能字庫
金文は牛に從ひ生聲。祭祀に用ゐる牲畜を表す。金文では祭牲を表し、主なものは牛、羊、豕。夨令方尊明公用牲于京宮。
『周易・萃』用大牲、吉。
後には古代に祭祀に供して用ゐた全牛を指す。段注に引伸爲凡畜之偁。『周禮・庖人・注』始養之曰畜、将用之曰牲。
といふ。
屬性
- 牲
- U+7272
- JIS: 1-32-23
- 當用漢字・常用漢字