舟 - 漢字私註
説文解字
船也。古者、共鼓、貨狄、刳木爲舟、剡木爲楫、以濟不通。象形。凡舟之屬皆从舟。職流切。
- 八・舟部
説文解字注
船也。『〔詩〕邶風〔谷風〕』方之舟之。《傳》曰、舟、船也。古人言舟。漢人言船。毛以今語釋古。故云舟卽今之船也。不傳於柏舟而傳於此者、以見方之爲泭而非船也。古者共𡔷、貨狄刳木爲舟。剡木爲楫。以濟不通。『郭注山海經』曰、世本云、𠔏𡔷、貨狄作舟。『易・𣪠辭』曰、刳木爲舟。剡木爲楫。舟楫之利。以濟不通。致遠以利天下。葢取諸渙。𠔏𡔷貨狄、黃帝堯舜閒人。貨狄疑卽化益。化益卽伯益也。『考工記』故書舟作周。象形。職流切。三部。凡舟之屬皆从舟。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『唐韻』『集韻』『正韻』職流切『韻會』之由切、𠀤音周。『說文』船也。『釋名』舟言周流也。『易・繫辭』刳木爲舟、剡木爲楫。舟楫之利、以濟不通。『書・說命』若濟巨川、用汝作舟楫。『爾雅・釋水』天子造舟。《註》比船爲橋。『又』諸侯維舟。《註》維連四船。『又』大夫方舟。《註》倂兩船。『又』士特舟。《註》單船。『揚子・方言』關西謂之船、關東謂之舟。今吳越皆謂之船。『世本』黃帝臣共鼓貨狄、刳木爲舟。『呂氏春秋』虞姁作舟。『山海經』滛梁生番禺、是始爲舟。『物理論』化[⿰彳瓜]作舟。『束皙・發蒙記』伯盆作舟。
又『正韻』載也。
又『韻會』帶也。『詩・大雅』何以舟之、惟玉及瑤、鞞琫容刀。《傳》舟、帶也。
又尊下臺、若今時承槃。『周禮・春官・司尊』春祠夏禴、祼用雞彝鳥彝、皆有舟。『正字通』一說古彝有舟、設而陳之、爲禮神之器。以酌以祼、皆挹諸其中而注之。舟與彝二器相須、猶尊之與壷、缾之與罍。先儒謂舟形如盤、若舟之載物、彝居其上、非也。今考漢敦足舟、𠂹花舟、舟之用在于容、非虛設以承彝也。形制詳博古圖。
又地名。『左傳・襄十四年』子囊師于棠、以伐吳。吳人自臯舟之隘要而擊之。《註》臯舟、吳險阨之道。又『昭十三年』克息舟城而居之。《註》息舟、楚邑。又『哀二十一年』請除館于舟道。《註》舟道、齊地。
又覆舟、山名。『淮南子・地形訓』維出覆舟。
又官名。『禮・月令』季春之月、令舟牧覆舟、五覆五反。《註》舟牧、主舟之官也。
又姓。『左傳』晉有大夫舟之僑。
又與周通。『周禮・冬官考工記』作舟以行水。《註》故書舟作周。鄭司農云、周當爲舟。
又『韻補』叶陟魚切、音朱。『道藏歌』玉龜七寶林、唱贊願同舟。丹景曜目精、令我心踟躇。
又『詩・大雅』何以舟之。《朱註》之遙反。與下刀叶。
音訓
- 音
- シウ(漢) 〈『廣韻・下平聲・尤・周』職流切〉[zhōu]{zau1}
- 訓
- ふね
解字
白川
象形。舟の形に象る。
『説文解字』に船なり
とあり、古者、共鼓、貨狄、木を刳りて舟と爲し、木を剡りて楫と爲し、以て通ぜざるを濟すなり。
といふ起源説話を記してゐる。
もと盤と同形で、盤の初文般は舟に從ふ。ものを授受するとき盤を用ゐたので、受、賸の初形は舟の形を含む字であつた。また止を洗ふ形の歬(前の初文)、余で膿血を除く俞(愈の初文)も、盤の形である舟に從つてゐる。
藤堂
象形。支那の小舟は長方形で、その姿を描いたものが舟。
落合
舟の象形。當時は舳先がない箱形の舟が用ゐられてをり、甲骨文の字形はそれを反映してゐる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- ふね。人や荷物を載せて水上を移動するもの。《合集》11460
貞、有禽、不其得舟。
- 動詞。舟で行くこと。出舟とも言ふ。
- 《殷墟花園莊東地甲骨》183+184
翌甲、其呼多臣舟。
- 《合集》24609
乙亥卜行貞、王其尋舟于河、亡災。
- 《殷墟花園莊東地甲骨》183+184
- 地名またはその長。殷金文の圖象記號にも見える。《英藏》749
貞、呼往于舟。
- 祭祀名。《合集》2653
庚…貞、舟上甲。
甲骨文の構成要素としても舟の意味で用ゐられてゐる。
漢字多功能字庫
古代の木の船は大きな木を刳り拔いて作られた。『説文解字』に古く共鼓と貨狄の二人が木を刳り拔いて船を作り、木を削つて槳(櫂)を作り、河を渡つたとする。舟字の甲骨文、金文は象形字。木船の形に象り、本義は船。戰國以後、舟字の書法が月字の形に近附き、少なからず舟旁と月旁が混同した。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 方國名に用ゐる。傳世文獻にも用例がある。『國語・鄭語』
禿姓舟人、則周滅之矣
韋昭注禿姓、彭祖之別。舟人、國名。
- 疑ふらくは祭名に用ゐる。《屯南》2296
庚申卜、舟燎二牢
。燎もまた祭名。牢は飼育した牛、全句で、庚申の日に、二頭の牛を以て舟祭と燎祭を行ふにつき占卜する、の意。 - 本義に用ゐる。《合集》24609
王其尋舟于河。
于省吾は、「尋舟」は水の流れに沿つて舟で行くの意とし、ここでは王は水の流れに沿つて舟に乘り河を渡ることを指すとする。この例は、尋を祭名、舟も祭名に用ゐる。
金文での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐる。
- 鄂君啟舟節
屯三舟為一航
は、三艘の船を集め一組として航行することを指す。 - 伯唐父鼎に「舟龍」の語があり、張政烺は龍の形の舟とする。
- 鄂君啟舟節
- 族氏名や人名に用ゐる。
傳世文獻では周と通ず。『詩・小雅・大東』舟人之子、熊羆是裘。
鄭玄箋舟、當作周。
屬性
- 舟
- U+821F
- JIS: 1-29-14
- 當用漢字・常用漢字
關聯字
舟に從ふ字を漢字私註部別一覽・舟部に蒐める。