尋 - 漢字私註
説文解字
繹理也。从工从口从又从寸。工、口、亂也。又、寸、分理之。彡聲。此與𤕦同意。度、人之兩臂爲尋、八尺也。
- 三・寸部
説文解字注
繹理也。謂抽繹而治之。凡治亂必得其緒而後設法治之。引伸之義爲長。『方言』曰、尋長也。海岱大野之閒曰尋。自關而西秦晉梁益之閒凡物長謂之尋。周官之法度廣爲尋。古文禮假尋爲燅。有司徹乃燅屍俎注。燅、温也。古文燅皆作尋。記或作尋。『春秋傳』若可尋也。亦可寒也。案『左傳』《服注》尋之言重也、温也。『論語』《何注》温、尋也。互相發明。俗本禮注作燖誤。从工口、从又寸。工口、亂也。又寸、分理之也。彡聲。徐林切。七部。此與𤕦同意。說見𤕦下。度人之㒳臂爲𢒫。八尺也。此別一義。亦因从寸及之。『考工記』曰、澮廣二尋。
康煕字典
- 部・劃數
- 寸部九劃
- 古文
- 𡬻
『唐韻』徐林切『集韻』『韻會』『正韻』徐心切、𠀤音潯。『說文』繹理也、本作𢒫、从工口、从又寸。工口、亂也。又寸、分理之也。彡聲。『增韻』求也。『前漢・黃霸傳』語次尋繹。《註》抽引而出也。
又度名。『周禮・地官・媒氏註』八尺曰尋、倍尋曰常。『小爾雅』四尺謂之仞、倍仞謂之尋。『孟子』枉尺而直尋、宜若可爲也。
又仍也、繼也。『左傳・昭元年』日尋干戈、以相征討。『古語』毫末不扎、將尋斧柯。
又俄也。『晉羊祜讓開府表』以身誤陛下辱高位、傾覆亦尋而至。
又用也。『左傳・僖五年』將尋師焉。《註》尋、用也。
又侵尋、猶浸淫也。『前漢・武帝紀』巡郡縣、侵尋太山矣。
又借作溫燖。『左傳・哀十二年』吳使人請尋盟。子貢曰、若可尋也、亦可寒也。《註》尋、重也、溫也、前盟巳寒、更溫之使熱。與燖義同。
又長也。『揚子・方言』自關以西、秦晉梁益閒、凡物長謂之尋。
又俗謂庸常爲尋常。
又姓。晉尋會、唐劉黑闥將尋相。
『韻會』毛氏曰、从口。俗从几作𡬶、非。
- 部・劃數
- 寸部十劃
『字彙補』古文尋字。見【字義總略】。註詳九畫。
- 部・劃數
- 彡部・十二劃
『唐韻』同尋。『韓愈・送靈師詩』千𢒫墮幽泉。
異體字
簡体字。
音訓
- 音
- ジム(呉) 〈『廣韻・下平聲・侵・尋』徐林切〉[xún]{cam4}
- 訓
- たづねる。ひろ。あたためる(尋盟)。かさねる。つぐ。ついで。つね。なみ(尋常)。
解字
古い字形は兩手を擴げて物の長さを測る形。後に左右に從ふ形に作る。
白川
左と右の會意。左は左手に呪具の工を、右は右手に祝告の器を表す口を持つ形。神に祈り、神の所在を尋ねるときに、左右に呪器、祝告を持つて問ふ。
『説文解字』に字を𢒫に作り、繹ね理むるなり。工口に從ひ、又寸に從ふ。工口は亂なり。又寸は之を分ち理むるなり。彡聲。此れ𤕦(襄)と同意なり。
といふが、すべて字形の解釋を誤り、字もまた彡聲ではない。襄は、死者の衣襟のうちに、呪具としての工、口を塡塞して、邪靈が屍體に憑りつくのを禳ふ意で、その用ゐる呪具は同じであるが、字の立意が異なる。神は定處なく、ときにはその祭るべきところを尋ねることがあり、『禮記・郊特牲』に於彼乎、於此乎
(彼に於いてせんか、此に於いてせんか)と所在を求める儀禮があつて、祊といふ。漢碑に字をみな尋に作り、𢒫に作るものはない。
左右に手を開くを尋といひ、一ひろの長さ。
尋は左右の手を重ねる形であるから、「尋ぬ」「尋ぐ」「尋む」のやうな用義がある。
藤堂
左と右と寸の會意。左手と右手をを伸ばした長さ(八尺)を表す。次々と兩手で長さを測り、分からない寸法を探ること。
もとは音符彡をつけた字もあつた。
落合
會意。甲骨文は、兩手で物體の長さを測つてゐる樣。測つてゐるものは棒狀の抽象表現であつたり、敷物の象形である席の初文の㐁であつたりする。測ることから轉じて「たづねる」の意味になつた。そのほか口を加へた字形もあるが、その意義は不明。
甲骨文での用義は次のとほり。
- たづねる。地方や敵對勢力に趣く際に用ゐられてをり、地形や敵情を測りながら進むことであらう。《甲骨拼合集》174
丁卯、王其尋𭓠[⿰亻⿱冉土]、其宿、亡災。
- 地名またはその長。《合補》12686
癸酉卜在尋貞、王旬亡禍。
- 祭祀名。《殷墟小屯中村南甲骨》58
癸丑貞、尋、求禾于河。
棒狀のものを測る字形が後代に繼承され、古文で棒狀のものが省略され、更に兩手で測ることから篆文で右(現用字の⺕と口の部分)と左(現用字の工と寸の部分)を組み合はせた形になつた。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、二又(手の形)と丨に從ふ。兩手を伸ばして開き、長さを測る形に象る。本義は長さの單位。兩手を開いた長さが大體八尺なので、一尋は八尺(唐蘭)。あるいは簟(席の形に象る)を聲符として加へる。
『大戴禮記・主言』引孔子語布手知尺、舒肘知尋。
や『孔叢子・小爾雅・度』尋、舒兩肱也。
の言ふところの「舒肘」、「舒兩肱」は、兩腕を伸ばすの意。
尋字には繁簡多くの形があり、繁體は兩手を開いて筵席(簟)を測る形に象り、あるいは筵席を一條の縱線に簡化し、あるいは兩手を開く形のみ、あるいは口を加へる(詹鄞鑫)。
篆文の書き方には二つの變化がある。一つは兩手の間に口と工を加へるが、これは又を右に、𠂇を左に變じたのと同じ現象である。もう一つは、下部の倒れて書かれてゐた𠂇を眞つ直ぐ書くやうになり、更に寸に變化した。『説文解字』の篆文はほかに音を表す彡を加へる。このことから、篆文の尋は、右と左を合成した會意字が變形して出來たことが分かる(詹鄞鑫)。
甲骨文では祭名に用ゐ、また犧牲を用ゐる方法して用ゐる(徐在國)。
金文での用義は次のとほり。
- 國名に用ゐ、典籍ではあるいは鄩に作る。尋仲盤
尋中(仲)賸中(仲)女子寶般(盤)
。 - 祭名に用ゐる。秦公簋
乍(作)尋宗彝、以卲皇且(祖)
。天子や諸侯は宗廟での正祭の後、次の日に再祭を行ひ、繹と稱し、また尋と稱した。宗廟の門内での祭祀の禮は、また「尋宗」とも稱する(商志𩡝、唐鈺明)。
戰國竹簡では長さを測る單位に用ゐる。《上博楚竹書六．競公虐》簡10執尋之幣
は、長さ一尋の布帛を執るの意。
屬性
- 尋
- U+5C0B
- JIS: 1-31-50
- 當用漢字・常用漢字
- 𡬻
- U+21B3B
- 𢒫
- U+224AB
- 寻
- U+5BFB