奇 - 漢字私註

説文解字

奇
異也。一曰不耦。从渠羈切。
可部

説文解字注

奇
異也。不羣之謂。一曰不耦。奇耦字當作此。今作偶、俗。按二義相因。从大从可。會意。可亦聲。古音在十七部。今音前義渠羈切。後義居宜切。

康煕字典

部・劃數
大部・五劃

『廣韻』『集韻』『韻會』渠羈切『正韻』渠宜切、𠀤音琦。異也。『莊子・北遊篇』萬物一也。臭腐化爲神奇、神奇復化爲臭腐。『仙經』人有三奇、精、氣、神也。

又祕也。『史記・𨻰平傳』平凡六出奇計、其奇祕世莫得聞。

又姓。

又天神名。『淮南子・地形訓』窮奇廣莫、風之所生也。又四凶之一。『史記・五帝紀』少皡氏有不才子、天下謂之窮奇。《註》窮奇、卽共工氏。

又獸名。『司馬相如・上林賦』窮奇𧰼犀。《註》狀如牛、蝟毛、音如嘷狗、食人。

又江神謂之奇相。『江記』帝女也。卒爲江神。

又與琦通。

又『廣韻』『集韻』『韻會』𠀤居宜切、音羈。一者、奇也。陽奇而隂偶。『易・繫辭』陽卦奇、亦零數也。『又』歸奇于扐以𧰼閏。

又隻也。『禮・投壷』一算爲奇。

又餘夫也。『韓非子・十過篇』遺有奇人者、使治城郭。

又數奇、不偶也。『史記・李廣傳』大將軍隂受上誡、以爲李廣老數奇、毋令獨當單于。

又奇𢷎、一拜也。『周禮・春官』大祝辨九𢷎、七曰奇𢷎。

又奇車、奇邪不正之車。『禮・曲禮』國君不乗奇車。

又奇衺、詭異也。『周禮・地官』比長有辠、奇衺則相及。

又『集韻』『韻會』『正韻』𠀤隱綺切。與倚通。依倚也。『前漢・鄒陽傳』輪囷離奇。

又『字彙補』倚蠏切。同矮、短人也。『後漢・五行志』童謠、見一奇人、言欲上天。

又叶古禾切、音戈。『宋玉・招魂』娭光眇視、目曾波些。被文服纖、麗而不奇些。

『說文』从大从可。別作⿱大司。俗作、非。

廣韻

四聲・韻・小韻
上平聲
反切
渠羈切

異也。『說文』作

又虜複姓。『後魏書〔官氏志〕』奇斤氏、後改爲奇氏。

渠羈切。又居宜切。十。

四聲・韻・小韻
上平聲
反切
居宜切

不偶也。又虧也。又渠羈切。

集韻

四聲・韻・小韻
平聲一・支第五・𦌭
反切
居宜切

不耦也。

或作倚。

通作觭。

四聲・韻・小韻
平聲一・支第五・㩻
反切
丘竒切

丘竒切。

『說文』㩻䧢也。

或作𢻪𨜅奇欹。

文二十三。

四聲・韻・小韻
平聲一・支第五・竒
反切
渠羈切

渠羈切。

『說文』異也。

或作觭畸。

又姓。

文二十五。

音訓

(1) キ(漢) 〈『廣韻・上平聲』渠羈切〉[qí]{kei4}
(2) キ(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲』居宜切〉[jī]{gei1}
(1) くし。めづらしい(奇拔、奇景)。あやしい(奇怪)。

奇數、數奇は音(2)に讀む。

解字

白川

把手のある大きな曲刀の形と、の會意。口は祝詞を收める器。曲刀を以て呵して祝禱の成就を求める意。字の立意はと近く、可は柯枝を以て祝禱を呵してその成就を求める意。神の承認を求めることを可といひ、奇はその系列の語。

『説文解字』に異なりと奇異の意とし、また一に曰く、耦(偶)あらざるなり。大に從ひ、可に從ふ。とするが、大とは關係がない。

奇は剞劂(彫刻刀)の形に從ふ。曲刀で不安定な形であるから奇邪の意となり、それよりして奇異、奇偉の意となる。

藤堂

(大の字に立つた人)と音符の會意兼形聲。可の原字は㇕印で、くつきりと屈曲したさま。奇は、人の身體が屈曲して角張り、平均を缺いて目立つさま。また片寄る意を含み、踦の原字。

落合

騎の甲骨文は、人が倒したに足を掛けてゐる樣を表す會意字。初文は奇のを除いた部分。上古音で騎と戈が同部であるため形聲字とする説もあるが、甲骨文ではの足の部分が跨ぐ樣子を表現してゐるので、戈亦聲と見るべきであらう。

甲骨文では第一期(武丁代)の人名に用ゐる。主に子騎と呼ばれる。短文にしか見えない。《合集》22288乙卯卜貞、子騎。

古文で口を加へて奇の形になつた。また後代には假借して珍奇や奇襲の意味に使はれ、原義に近い意味としては、古文で乘る對象としてを加へた繁文が作られてをり、それを釋字とする。

漢字多功能字庫

に從ひ聲。本義は獨特、特殊。『說文』奇、異也。

出人意料(人の意表を突くこと、豫想外のこと、思ひも寄らぬこと)を表す。

賞識(評價する、高く買ふ)、看重(重く見る、重んずる)を表す。

驚奇(驚き不思議がる)、普通でないと感ずることを表す。

單數を表し、耦、偶と相對す。『說文』一曰、不耦。《段注》奇耦字當作此。今作偶、俗。

運が良くないこと、巡り合はせが惡いことの比喩。

端數、餘りを表す。『正字通・大部』數之零餘曰奇。

常規の外の、普通でない、不正規の、の意。

程度の副詞となし、甚だしい、非常に相當する。

助詞となし、元明の雜劇に見えるが、意味はない。

屬性

U+5947
JIS: 1-20-81
當用漢字・常用漢字
U+7AD2

關聯字

奇に從ふ字を漢字私註部別一覽・大部・奇枝に蒐める。