匃 - 漢字私註
説文解字
气也。逯安說、亡人爲匄。古代切。
- 十二・亡部
説文解字注
气也。气者、雲气也。用其聲叚借爲气求、气與字。俗以气求爲入聲、以气與爲去聲。匄訓气、亦分二義二音。『〔漢書〕西域傳〔罽賓國〕』气匄亡所得。此气求之義也。當去聲。又〔『同・龜茲國』〕曰、我匄若馬。此气與之義也。當入聲。要皆強爲分別耳。『左傳〔昭六年〕』公子棄疾不強匄。又〔『同・昭十六年』〕子產曰、世有盟誓、母或匄奪。皆言气求也。『通俗文』曰、求願曰匄。則是求之曰气匄。因而與之亦曰气匄也。今人以物與人曰給。其實當用匄字。『廣韵』古達切。其字俗作丐。與丏不同。『廣韵』曰、二字同、非是。亡人爲匄。逯安說。此稱逯安說、以說字形會意。逯安亦通人之一也。从亡人者、人有所無必求諸人。故字从亡从人。古代切。按『廣韵』古太切、亦古達切。十五部。
康煕字典
- 部・劃數
- 勹部・三劃
『唐韻』古達切『集韻』『正韻』居曷切、𠀤音葛。『玉篇』乞也、行請也、取也。『集韻』求也。『前漢・𨻰湯傳』匃貸無節。『西域傳』乞匃無所得。
又與也。『西域傳』我匃若馬。『後漢・竇武傳』載肴糧于道、匃施貧民。
又『玉篇』同丐。『廣韻』『集韻』亦作丐。『唐書・杜甫傳贊』殘膏賸馥、沾丐後人。
又『唐韻』古泰切『集韻』丘蓋切『韻會』『正韻』居大切、𠀤音蓋。義同。
- 部・劃數
- 勹部・三劃
『韻會』匃亦作匄。『前漢・文帝紀』匄以啓告朕。《註》師古曰、匄、亦乞也。
- 部・劃數
- 一部・三劃
『廣韻』古太切『集韻』『韻會』『正韻』居太切、𠀤音蓋。乞也、取也。又與也。
又『集韻』居曷切、音葛。義同。
音訓・用義
- 音
- カイ(漢、呉) 〈『廣韻・去聲・泰・蓋』古太切〉[gài]{koi3}
- カツ 〈『廣韻・入聲・曷・葛』古達切〉{got3/gaat3}
- 訓
- こふ。あたへる。
解字
白川
匄
勹と亡の會意。ともに人骨の象。これを呪靈として祈り求める意。
『説文解字』に气むるなり
とあり、气、乞はもと同字。
卜辭に匄、乞、气を祈求の意に用ゐる。「上甲(祖名)に苦方(外族の國名)を(禦がんことを)匄めんか」といふ例がある。乞、气は雲氣をみて祈ることをいふ。
金文に害をも匄求の意に用ゐる。害は祝詞の器を、把手のある大きな針で刺し、その祝禱を無效とする呪的な方法で、その聲が近く、やはり祈求の意がある。
丐
字はもと匄に作り、人骨を組み合はせた形。
『史記・外戚世家』丐沐
(沐を丐ふ)の《索隱》に丐は乞ふなり
、『廣韻』に匃は乞ふなり
と見える。
卜文、金文に匄に作り、人骨の呪靈によつて祈ることを、匄求といふ。
藤堂
匃
會意。右から來る人を、左の人が手で制し留めて、物乞ひするさまを示す。喝(叫んで人を留める)や遏(押し留める)の原字。
丐
匃の字形が匄に變化し、更に變化したもの。
落合
會意。死者を表す亡と刀に從ひ、恐らく刀で人を殺すことを意味してゐる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 厄災の意。人を殺すことからの引伸義か。《合補》452
甲午卜貞、夢、亡匃。十二月。
- 祭祀名。《合補》6925
辛卯、匃豕母。
- 動詞。敵對勢力が目的語であり、軍事攻擊の意か。《東京大學東洋文化研究所藏甲骨文字・圖版篇》368
匃𢀛方、于受令。
字形は篆文で刀が勹の形に變化した。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、亡と刀に從ふ。小篆と形は同じ。構形初義不明。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 乞求を表す。
王其有匄于大甲畀
(乙7257)。 - 害と通じて讀む。「亡匄」は無害のことで、「亡(無)尤」、「亡(無)災」と同樣(郭沫若)。
金文での用義は次のとほり。
- 介と通じて讀み、祈求を表す。啟卣
用匄魯福
。『詩・豳風・七月』為此春酒、以介眉壽。
- 讀みて害となす。牆盤
天子沬(眉)無匄
。眉壽無害は古代の成語で、眉壽無疆(眉壽は長壽の謂ひ、限りない長壽の意)、無有患害を表す。『詩・魯頌・閟宮』萬有千歲、眉壽無有害。
屬性
- 匃
- U+5303
- JIS X 0212: 19-92
- 匄
- U+5304
- 丐
- U+4E10
- JIS: 1-48-2
關聯字
- 丏
- 別字。
- 匂
- 別字。勻の譌といはれる。