圉 - 漢字私註

説文解字

圉
囹圄、所以拘罪人。从。一曰、圉、垂也。一曰、圉人、掌馬者。
㚔部

説文解字注

圉
囹圉、逗、所㠯拘辠人。㚔爲罪人、囗爲拘之、故其字作圉。他書作囹圄者、同音相叚也。者、守之也。其義別。『說文』宋本作囹圄者、非是。『〔禮記〕月令』仲春命有司省囹圄、孟秋命有司繕囹圄。《注》曰、囹圄所以禁守繫者。若今別獄矣。蔡邕云、囹、牢也。圄、止也。所以止出入。皆罪人所舍也。崇精問曰、獄、周曰圜土、殷曰羑里、夏曰均臺。囹圄何代之獄。焦氏荅曰、『月令』秦書、則秦獄名也。漢曰若盧、魏曰司空、是也。按蔡說囹圄皆罪人所舍。云皆則不必一地。是以《囗部》曰、、獄也。不連圉言。此言囹圉、錯見以明之。从囗㚔。會意。魚舉切。五部。今隷作圉。一曰、圉、垂也。義見『左傳』、『爾雅』、『毛傳』。一曰、圉人、掌馬者。義見『左傳』、『周禮・注』、『禮記・注』。按《小徐本》無此十二字。當是古本如此。邊垂者、可守之地。養馬者、守視之事。疑皆圄字引申之義。各書叚圉爲之耳。

文中の㚔字は嚴密には一橫劃を缺く形に作る。

康煕字典

部・劃數
囗部・八劃

『唐韻』魚巨切『集韻』偶舉切『韻會』魚許切『正韻』偶許切、𠀤音語。『說文』本作。圉人、掌馬者。『周禮・夏官・校人』乗馬、一師四圉。《註》四匹爲乗、養馬爲圉、乗馬分爲四圉、則圉師一人掌之。又『圉師』掌敎圉人養馬。又『圉人』掌養馬芻牧之事、以役圉師。《註》役者、圉師使令焉。

又『爾雅・釋詁』垂也。《註》守圉在外垂也。『詩・大雅』多我覯痻、孔棘我圉。『左傳・隱十一年』亦聊以固我圉也。又『僖二十八年』不有行者、誰扞牧圉。

又月名。『爾雅・釋天』月在丁曰圉。

又『孟子』始舍之圉圉焉。《註》圉圉、困而未舒之貌。

又姓。『左傳・哀十六年』楚圉公陽穴宮負王、以如昭夫人之宮。

又圉門、周王城門。『周語』王自圉門入。

又圉陽、地名。『左傳・昭二十四年』楚王以舟師略吳疆、至圉陽而還。

又朱圉、山名。『書・禹貢』西傾朱圉。『前漢・地理志註』山在冀縣南梧中聚。

又邑名。『後漢・郡國志』圉屬豫州𨻰留郡。又洛陽有圉鄉。

又與同。詳前圄字註。

又與通。樂器。『詩・周頌』𪔛磬柷圉。『書・益稷』作柷敔。

又『諡法』威德剛武曰圉。

又『正韻』魚據切、音御。止也、捍也。『莊子・繕性篇』其來不可圉。《註》與同。『管子・大匡篇』吾參圍之、安能圉我。又『前漢・賈誼傳序』設建屏藩、以守强圉。吳楚合從、賴誼之慮。

集韻

四聲・韻・小韻
上聲・語第八・語
反切
偶舉切

『說文』囹圉、所以拘罪人。一曰、圉、垂也。一曰、圉人、掌馬者。

亦姓。

通作

音訓

(1) ギョ(漢) ゴ(呉) 〈『廣韻・上聲・語・語』魚巨切〉[yǔ]{jyu5}
(2) ギョ 〈『正韻』魚據切、音御、去聲〉{jyu6}
(1) ひとや。うまかひ。
(2) ふせぐ

解字

白川

と幸の會意。幸は手械の形。これを人の手に加へた形は。拘執の人を置く所を圉といふ。

『説文解字』に囹圄、罪人を拘する所以なり。㚔(幸)に從ひ、囗に從ふ。とし、また一に曰く、(邊)垂なり。一に曰く、圉人、馬を掌る者なり。とする。この一曰兩義は《繫傳本》には見えない。

囹圄は邊地に設けることも多く、馬の畜養も、そのやうな地で行はれたのであらう。

『廣雅・釋詁』に臣なり、『墨子・天志下』に僕圉胥靡とは、臣僕の類をいふ。

藤堂

(圍ひ)と幸(手枷)の會意。幸の原字は上下から手首を挾む手枷を描いた象形字。圉は、罪人に刑を加へ、圍ひの中に押し込めることを表す。

ギョといふ音は行動をおさへ取り締まる意を含む。

落合

會意。拘束具であるを圍つた形。㚔は捕虜を象徵し、人を閉ぢ込める樣を表してゐる。原義は牢獄であるが、甲骨文では一部の字義がと共通する。異體字には、執の初文を用ゐた形や、家屋の象形のを用ゐた形などがある。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 收容施設。《合集》5980…呼省圉。
  2. 捕虜。祭祀の供物としても用ゐられる。《甲骨拼合集》295・驗辭八日庚子、戈執…人、改侑圉二人。
  3. 吉凶語。凶の意か。《合集》36419辛卯王…小臣醜…其亡圉、…于東對。王占曰、吉。
  4. 地名またはその長。《殷墟花園莊東地甲骨》118在圉、亡其使。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、に從ふ。甲骨文は或はに從ひ、手枷を著けられた人が監獄の中に拘禁されるさまに象る(趙誠)。本義は監獄。

甲骨文では監獄を表す。《合集》5973壬辰卜、貞、執于圉

金文での用義は次のとほり。

圉は後にに作り、圄の古字(王筠)。『説文解字』「圉、囹圄。(後略)」」段玉裁は「囹圄」を「囹圉」に改め、注に㚔爲罪人、囗爲拘之、故其字作圉。他書作囹圄者、同音相叚也。といふ。

屬性

U+5709
JIS: 1-51-94