易 - 漢字私註

説文解字

易
蜥易、蝘蜓、守宮也。象形。祕書說、日月爲易、象陰陽也。一曰从。凡易之屬皆从易。羊益切。
易部

説文解字注

易
蜥易、蝘蜓、守宫也。《虫部》下曰、蜥易也。蝘下曰、在壁曰蝘蜓、在艸曰蜥易。『〔爾雅〕釋魚』曰「榮螈、蜥蜴。蜥蜴、蝘蜓。蝘蜓、守宫也。」郭云、轉相解。博異語、別四名也。『方言〔八〕』曰、「守宫、秦晉西夏謂之守宫。或謂之蠦𧓋。或謂之蜥蜴。其在澤中者謂之易蜴。南楚謂之蛇醫。或謂之蠑螈。東齊海岱謂之螔䗔。北燕謂之祝蜒。桂林之中守宫大者而能鳴。謂之蛤解。」按許舉其三者、略也。易本蜥易。語言假借而難易之義出焉。鄭氏贊易曰、易之爲名也。一言而函三義。簡易一也。變易二也。不易三也。按易彖二字皆古以語言假借立名。如象卽像似之像也。故許先言本義。而後引祕書說。云祕書者、明其未必然也。象形。上象首、下象四足。尾甚微、故不象。羊益切。十六部。古無去入之分。亦以豉切。今俗書蜥易字多作蜴。非也。按『方言』蜥易、其在澤中者謂之易蜴。郭云、蜴音析。是可證蜴卽蜥字。非羊益切。『〔詩〕小雅〔正月〕』胡爲虺蜴。《毛傳》曰、蜴、螈也。『釋文』蜴、星歴反。字又作蜥。『說文』引『詩』正作蜥。毛語正與『方言』合。『方言』易蜴、南楚謂之蛇醫。或謂之蠑螈。謂在澤中者也。螈卽《虫部》之蚖字。蛇醫也。陸璣云、蜴一名蠑螈。水蜴也。或謂之蛇醫。如蜥易。然則蜥易者統名。倒言易蜥及單言蜥者、別其在澤中者言也。祕書說曰、日月爲易。祕書謂緯書。《目部》亦云、祕書瞋从戌。按『參同契』曰、日月爲易、剛柔相當。陸氏德明引虞翻注『參同契』云、字从日下月。象侌昜也。謂上从日象陽。下从月象陰。緯書說字多言形而非其義。此雖近理。要非六書之本。然下體亦非月也。一曰从勿。又一說从旗勿之勿。皆字形之別說也。凡易之屬皆从易。

康煕字典

部・劃數
日部・四劃

『唐韻』羊益切『集韻』『韻會』『正韻』夷益切、𠀤音亦。『說文』蜥易、蝘蜓、守宮也。象形。祕書說:日月爲易、象隂陽也。『易・繫辭』『易』者、象也。《疏》『易』卦者、爲萬物之形象。『又』生生之謂易。《註》隂陽轉易、以成化生。《疏》隂陽變轉。『周禮・春官・大卜』掌三『易』之灋:一曰『連山』、二曰『歸藏』、三曰『周易』。《註》易者、揲蓍變易之數、可占者也。『孔穎達・周易正義』夫易者、變化之總名、改換之殊稱。『朱子・周易本義』『易』、書名也。其卦本伏羲所畫、有交易、變易之義、故謂之『易』。

又『易・乾卦』不易乎世。《註》不爲世所移易也。

又『易・繫辭』日中爲市、致天下之民、聚天下之貨、交易而退。『公羊傳・宣十二年』交易爲言。《註》交易、猶往來也。

又『書・堯典』平在朔易。《傳》謂歲改易。

又『禮・祭義』易抱龜南面。《疏》占易之官也。

又『史記・項羽紀』赤泉侯人馬俱驚、辟易數里。《註》正義曰:開張易舊處。

又姓。『姓氏急就篇』易氏、易牙之後。

又水名。『水經』易水出涿郡故安縣閻鄕西山。

又州名。『廣韻』趙分晉得中山、秦爲上谷郡、漢置涿郡、隋爲易州、因水名之。

又『廣韻』『集韻』『韻會』以豉切『正韻』以智切、𠀤音異。『易・繫辭』乾以易知。《疏》『易』謂『易略』。

又『易・繫辭』辭有險易。《註》之泰則其辭易、之否則其辭險。《疏》易、說易也。

又『禮・檀弓』易墓非古也。《註》易謂芟治草木。『孟子』易其田疇。《註》易、治也。

又『禮・祭義』外貌斯須不莊不敬、而慢易之心入之矣。

又『公羊傳・文十二年』俾君子易怠。《註》易怠、猶輕惰也。

又『公羊傳・宣六年』是子之易也。《註》易、猶省也。

又『論語』喪、與其易也、寧戚。『何晏註』和易也。『朱傳』易、治也。

又『爾雅・釋詁』平、均、夷、弟、易也。《註》皆謂易直。《疏》易者、不難也。又『莊子・刻意篇』聖人休休焉、則平易矣。

又『史記・禮書』能慮勿易。《註》易、謂輕易也。

又『韻補』叶余支切。『詩・小雅』爾還而入、我心易也。還而不入、否難知也。

音訓・用義

(1) エキ(漢) ヤク(呉) 〈『廣韻・入聲・昔・繹』羊益切〉[yì]{jik6}
(2) イ(漢、呉) 〈『廣韻・去聲』以豉切〉[yì]{ji6}
(1) かはる。かへる(交易)。
(2) やすい。やすらか。あなどる(慢易)。をさめる。

『易經』は音(1)に讀む。

解字

白川

の會意。日は珠玉の形。勿はその玉光。玉光を以て魂振りを行ふ。玉を臺上に置く形は昜で、陽と聲義が近い。

『説文解字』に蜥易、蝘蜓、守宮なりと、とかげ、ゐもり、やもりの名を擧げ、象形とする。また一説として日月を易と爲す。陰陽に象るなり。とするが、下部は勿の形。

玉による魂振りをいふ。

藤堂

やもりと印の會意で、蜥蜴の蜴の原字。もと、平らにへばりつくやもりの特色に名附けた言葉。

また、傳遞の遞(次々に橫に傳はる)に當て、AからBにと、橫に、次々と變はつていくのを易といふ。

落合

半圓形のやうな形に指示記號のを加へた字。

字源には蜥蜴や玉器の輝き、皿に水を注ぐ形など諸説あるが、いづれも甲骨文の字形には該當しない。甲骨文で最も多いのは穩やかな天候を意味する用法なので、半圓形のやうな形は太陽の一部が雲に隱れた狀態を表現したものであり、彡はそこから注ぐ光と考へられる。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 穩やかな天候。繁文は晹。晹日と呼ばれることが多い。《殷墟小屯中村南甲骨》269乙未卜、王步、丁酉、晹日。
  2. たまふ。賜與する。假借の用法で、繁文は賜。《合集》9468貞、勿賜黃兵。
  3. 厄災が收まること。穩やかな天候からの引伸義であらう。《合補》3987甲子卜㱿貞、王疾齒、亡易。
  4. 祭祀名。《英藏》1177貞、王恆易禦。
  5. 人名。第一期(武丁代)。《合集》5637・貢納記錄易入二十。

西周代に字源に諸説が生まれたやうで、金文では蜥蜴の形や皿の一部のやうな形をした異體字が作られ、後代には蜥蜴の形が繼承されて現用の形となつた。

また後代には占ひや容易を意味して使用されたため、原義については篆文で意符としてを加へた繁文の晹が作られた。

賜は金文で作られた字で、を加へたもの。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、から簡化されて成立した。益は器の中に水を入れるさまに象り、易は、三點の水と器についてゐる把手に簡化された。賞賜は受ける者の富を増やすことから、益から易を分化した(郭沫若)。易は賜の古字で、本義は賜與。

賜與は財物を一人から別の一人に轉移することで、故に易手(主人、持ち主が變はること)、易置(變更、修正、取り替へ)、更易(變へる、改める)の意を派生する。更に引伸して抽象一般的な變易となる。群經の筆頭として知られる『周易』は、最も抽象的な意味の變易を課題とする。

中山王方壺の易字は二易が互ひに顛倒する形に從ひ、その變換の義が更にはつきりと顯れてゐる。

甲骨文では賞賜を表す。《合集》40073易(賜)貝二朋の朋は貝幣の單位で、二朋の貝幣を賞賜することを指す。

金文での用義は次のとほり。

戰國竹簡での用義は次のとほり。

屬性

U+6613
JIS: 1-16-55
當用漢字・常用漢字