將 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
帥也。帥當作𧗿。《行部》曰、𧗿、將也。二字互訓。『儀禮』『周禮』古文𧗿多作率、今文多作帥。『毛詩〔周頌・噫嘻〕』「率時農夫」『韓詩』作帥。説詳『周禮漢讀考』。帥者佩巾、漢人假爲率字。率亦𧗿之假也。許造『說文』、當是本作將𧗿也、以自伸其說。經轉寫改竄而非舊矣。後人謂將、帥二字去聲与平聲之將、入聲之帥別者,古無是說也。『毛詩』將字故訓特多、大也、送也、行也、養也、齊也、側也、願也、請也。此等或見『爾雅』、或不見、皆各依文爲義、亦皆就曡韵雙聲得之。如願請是一義、將讀七羊反、故釋爲請也。將讀卽羊反、故『〔大雅〕皇矣・傳』釋爲側、『〔爾雅〕釋言』及『〔小雅〕楚茨・傳』釋爲齊。齊、徐仙民周禮音蔣細反。皆雙聲也。『釋言』將、齊也。郭云、謂分齊也。引『詩〔楚茨〕』「或肆或將」。此甚明畫。或肆蒙或剥、言剥之乃陳於互也。或將蒙或烹、言烹之必劑量其水火及五味之宜、故云齊其肉也。如是乃以祝祭于祊。『詩』『爾雅』疏皆不了、故箸之。
从寸。必有法度、而後可以主之先之、故從寸。
𨡓省聲。卽諒切。十部。
康煕字典
- 部・劃數
- 寸部・八劃
- 古文
- 𢪇
『廣韻』卽良切『集韻』『韻會』『正韻』資良切、𠀤音漿。『說文』本將帥字。一曰有漸之辭。《蘇林曰》將、甫始之辭。『易・繫辭』是以君子將有爲也、將有行也。又『公羊傳・莊三十二年』君親無將、將而誅焉。《師古註》將有其意也。
又抑然之辭。『楚辭・卜居』寧誅鋤草茆以力耕乎、將遊大人以成名乎。
又且也。『詩・小雅』將安將樂。
又『廣韻』養也。『詩・小雅』不遑將父。
又助也。『史記・司馬相如傳』補過將美。
又送也。『詩・召南』百兩將之。『邶風』之子于歸、遠于將之。
又大也。『詩・小雅』亦孔之將。『商頌』我受命溥將。
又承也、奉也、行也。『詩・商頌』湯孫之將。『書・胤征』今予以爾有衆、奉將天罰。《註》將、行也。
又『增韻』賚也、持也、與偕也。『正韻』扶持也。『詩・小雅』無將大車。『左傳・莊二十一年』鄭伯將王、自圉門入。
又進也。『詩・周頌』日就月將。
又從也、隨也。『前漢・郊祀歌』九夷賔將。
又『詩・小雅』鮮我方將。《註》壯也。
又『楚辭・九辯』恐余壽之弗將。《註》長也。
又『詩・大雅』在渭之將。《註》側也。
又去也。『荀子・賦論篇』時幾將矣。《註》言時事已去、不可復也。
又姓。後趙常山太守將容。
又干將、古劒工。《張揖曰》韓王劒師名、今名劒曰干將。
又『集韻』『正韻』千羊切『韻會』七羊切、𠀤音鏘。請也、幾願辭也。『詩・衛風』將子無怒。『小雅』將伯助予。
又聲也。『詩・鄭風』佩玉將將。
又嚴正貌。『詩・大雅』應門將將。
又集也。『詩・周頌』磬筦將將。
又『唐韻』卽諒切『韻會』『正韻』子諒切、𠀤音醬。『廣韻』將帥也。『增韻』將之也。『禮・記註』方氏曰、才足以將物而勝之之謂將、智足以帥物而先之之謂帥。
又叶卽兩切、音獎。『詩・大雅』天不我將。叶下往。
- 部・劃數
- 爿部・二劃
『字彙』同將。
異體字
簡体字。
いはゆる新字体。
音訓義
- 音
- シャウ(漢) サウ(呉)⦅一⦆
- シャウ(漢) サウ(呉)⦅二⦆
- シャウ(漢) サウ(呉)⦅三⦆
- ヤウ(推)⦅四⦆
- サウ(推)⦅五⦆
- サウ(推)⦅六⦆
- シャウ(推)⦅七⦆
- 訓
- ひきゐる⦅一⦆⦅二⦆
- とる⦅一⦆
- もつ⦅一⦆
- もちゐる⦅一⦆
- もつて⦅一⦆
- ゆく⦅一⦆
- おくる⦅一⦆
- すすめる⦅一⦆
- やしなふ⦅一⦆
- たすける⦅一⦆
- おほきい⦅一⦆
- まさに⦅一⦆
- はた⦅一⦆
- こふ⦅三⦆
- 官話
- jiāng⦅一⦆
- jiàng⦅二⦆
- qiāng⦅三⦆
- 粤語
- zoeng1⦅一⦆
- zoeng3⦅二⦆
- coeng1⦅三⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・下平聲・陽・將』即良切
- 『集韻・平聲三・陽第十・將』資良切
- 『五音集韻・下平聲卷第五・陽第一・精四將』即長切
- 聲母
- 精(齒頭音・全清)
- 等呼
- 四
- 官話
- jiāng
- 粤語
- zoeng1
- 日本語音
- シャウ(漢)
- サウ(呉)
- 訓
- ひきゐる
- とる
- もつ
- もちゐる
- もつて
- ゆく
- おくる
- すすめる
- やしなふ
- たすける
- おほきい
- まさに
- はた
- 義
- 統率する。指揮する。
- 手に取る。手に持つ。持つて行く。
- 養ふ。助ける。
- 大きい。大きくする。
- これから〜しようとする。
- ほぼ〜に近い。
- はた。助辭。
- また。あるいは。はたまた。
- 〜と〜。且つ。
⦅二⦆
- 反切
- 『廣韻・去聲・漾・醬』子亮切
- 『集韻・去聲下・漾第四十一・醬』即亮切
- 『五音集韻・去聲卷第十二・漾第一・精四醬』子亮切
- 聲母
- 精(齒頭音・全清)
- 等呼
- 四
- 官話
- jiàng
- 粤語
- zoeng3
- 日本語音
- シャウ(漢)
- サウ(呉)
- 訓
- ひきゐる
- 義
- 軍を率ゐる者。將軍。將帥。將官。
- 統率する。指揮する。
⦅三⦆
- 反切
- 『集韻・平聲三・陽第十・瑲』千羊切
- 『五音集韻・下平聲卷第五・陽第一・清四瑲』千羊切
- 聲母
- 清(齒頭音・次清)
- 等呼
- 四
- 官話
- qiāng
- 粤語
- coeng1
- 日本語音
- シャウ(漢)
- サウ(呉)
- 訓
- こふ
- 義
- 請ふ。願ふ。
⦅四⦆
- 反切
- 『集韻・平聲三・陽第十・陽』余章切
- 『五音集韻・下平聲卷第五・陽第一・喻四陽』與章切
- 聲母
- 喻(喉音・次濁)
- 等呼
- 四
- 日本語音
- ヤウ(推)
- 義
- 『集韻』
雜名。『周禮〔冬官〕』「伯用將」劉昌宗讀。
⦅五⦆
- 反切
- 『集韻・平聲三・唐第十一・臧』茲郎切
- 『五音集韻・下平聲卷第五・唐第二・精一臧』則郎切
- 聲母
- 精(齒頭音・全清)
- 等呼
- 一
- 日本語音
- サウ(推)
- 義
- 牂を或いは將に作る。(『集韻』)
⦅六⦆
- 反切
- 『集韻・平聲四・耕第十三・琤』初耕切
- 『五音集韻・下平聲卷第五・庚第三・穿二琤』楚耕切
- 聲母
- 穿(正齒音・次清)
- 等呼
- 二
- 日本語音
- サウ(推)
- 義
- 鏘を或いは將に作る。(『集韻』)
⦅七⦆
- 反切
- 『集韻・上聲下・養第三十六・奬』子兩切
- 『五音集韻・上聲卷第九・養第一・精四㢡』即兩切
- 聲母
- 精(齒頭音・全清)
- 等呼
- 四
- 日本語音
- シャウ(推)
- 義
- 奬を或いは將に作る。(『集韻』)
解字
白川
爿と肉と寸の會意。爿は足のある几(机)の形で、その上に肉を置いて奬め、神に供へる。軍事には、將軍が軍祭の胙肉を奉じて行動した。その胙肉を𠂤といひ、師の初文。帥もその形に從ふ。これを以ていへば、將とはその胙肉を攜へて、軍を率ゐる人。
將、壯の字に含まれる爿は、殷器にある圖象(王族出自の親王家を示す圖象であるらしい)と關係があるものと思はれる。
『説文解字』に帥ゐるなり
と訓じ、醤の省聲とするが、醤は將聲に從ふ字であるから、將が醤の省聲といふことはあり得ない。
奬は將の繁文。
將は訓義多く、字書に列するものは五十數義に及ぶが、將帥が字の原義。
藤堂
肉と寸(手)と音符爿の會意兼形聲。爿は長い臺を縱に描いた字で、長い意を含む。もと一番長い指(中指)を將指といつた。轉じて、手で物を持つ、長となつて率ゐるなどの意味を派生する。また、持つ意から、何かでもつて處置すること、これから何かの動作をしようとする意などを表す助動詞となつた。
將と同じく「まさに〜せんとす」と訓ずる言葉には且がある。
落合
會意。甲骨文は供物を載せる臺である爿に二つの手(又)を添へた形で、祭祀の樣子を表してゐる。爿亦聲。臺に供物の肉を載せた異體字もある。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 祭祀名。《合補》10472
丙子卜、將兄丁于父乙。
- ひきゐる。軍隊を引率する。假借の用法か。《合補》2139
癸亥卜賓貞、勿將戈人、有征畯。
古文で上述の兩字形を合はせて爿と肉と又に從ふ形になつた。さらに篆文で又が寸に替へられて現用字となつた。
漢語多功能字庫
戰國文字は肉と又あるいは寸に從ひ、爿聲。爿は牀に象るほかに、肉を載せる臺に象る。全字で肉類を臺の上に竝べるさまに象り(于省吾)、本義は陳列、進獻。
- 『詩・小雅・楚茨』
或剝或亨、或肆或將。
鄭玄箋有肆其骨體於俎者、或奉持而進之者。
- 『詩・周頌・我將』
我將我享、維羊維牛、維天其右之。
鄭玄箋將、猶奉也。
孔穎達疏以將與享相類、當謂致之於神。
『説文解字』は、將は𨡓の省聲に從ひ、本義を將帥とする。詛楚文では肉が目に訛變してゐる。
戰國文字での用義は次のとほり。
- 將要(まもなく、すぐに)を表す。《詛楚文・巫咸》
將欲復其𧵮(凶)𨒪(迹)
は、彼の惡行を回復せんとする、捲土重來せんとするの意(陳世輝、湯餘惠)。 - 率領を表す。《詛楚文・巫咸》
將之以自救也
。 - 將軍を表す。《睡虎地秦簡・為吏之道》簡23
將軍
。
漢帛書でも將要を表す。
- 《馬王堆・老子乙本卷前古佚書・經法》第10行
過極失當、天將降央(殃)。
このほか、戰國文字では多く𨟻を借りて將となす。醬を參照のこと。金文では多く匨を借りて將となす。
- 史惠鼎
日就月匨(將)
、『詩・周頌・敬之』日就月將
は、毎日の成就、毎月の進步を言ひ、精進して止まざることの形容。
戰國文字ではまた多く𨒫を借りて將となす。
- 《包山楚簡》簡236
𨒫(將)楚邦之帀(師)徒
は楚國の軍隊を率ゐることを表す。
屬性
- 將
- U+5C07
- JIS: 1-53-82
- 人名用漢字
- 𤕭
- U+2456D
- 将
- U+5C06
- JIS: 1-30-13
- 當用漢字・常用漢字
關聯字
將聲の字
- 蔣
- 𨄚
- 䉃
- 獎
- 漿