臧 - 漢字私註
説文解字
善也。从臣戕聲。則郎切。
- 三・臣部
籒文。
説文解字注
善也。『〔爾雅〕釋詁』、『毛傳』同。按子郎才郎二反。本無二字。凡物善者必隱於內也。以從艸之藏爲臧匿字始於漢末。改易經典。不可從也。又贓私字、古亦用臧。从臣戕聲。則郎切。十部。
籒文。按《宋本》及『集韵』、『類篇』皆從二。今本下從土、非。
康煕字典
- 部・劃數
- 臣部・八劃
『唐韻』則郞切『集韻』『韻會』『正韻』兹卽切、𠀤音贓。『爾雅・釋詁』臧、善也。『易・師卦』初六、師出以律、否臧凶。『詩・衞風』不忮不求、何用不臧。《傳》臧、善也。
又『廣韻』厚也。
又『揚子・方言』荆淮海岱雜齊之閒、罵奴曰臧、罵婢曰獲。
又姓。『姓苑』出東筦魯孝公子臧僖伯之後。
又與贜通。吏受賕也。『前漢・尹賞傳』貪污坐臧。
又『集韻』昨郞切。與藏同。『管子・侈靡篇』天子藏珠玉、諸侯藏金石。『前漢・食貨志』輕微易臧。
又『韻會』『正韻』𠀤才浪切。與庫藏之藏同。『前漢・食貨志』出御府之臧以贍之。
又與臟同。『前漢・王吉傳』吸新吐故、以練五臧。又『藝文志』有客疾五臧狂顚病方。
又臧善之臧、亦叶音臟。『詩・小雅』未見君子、憂心柄柄。旣見君子、庶幾有臧。怲音謗。
- 部・劃數
- 土部・十四劃
籀文臧字。
- 部・劃數
- 匚部・七劃
『說文』『集韻』𠀤古文臧字。註詳臣部八畫。
又『說文』『集韻』𠀤古文藏字。註詳艸部十四畫。
異體字
或體。
音訓・用義
- 音
- (1) サウ(漢、呉) ザウ(慣) 〈『廣韻・下平聲・唐・臧』則郎切〉[zāng]{zong1}
- (2) ザウ(呉) サウ(漢) 〈『集韻』昨郞切、與藏同〉[cáng]{cong4}
- (3) ザウ(呉) サウ(漢) 〈『韻會』『正韻』才浪切、與庫藏之藏同〉[zàng]{zong6}
- 訓
- (1) よい
- (2) かくす。かくれる。をさめる。
臧獲は音(1)に讀み、奴婢のこと。
音(3)に讀み、藏と通じてくらの意に、また臟と通じてはらわたの意に用ゐる。
解字
白川
形聲。聲符は戕。
『説文解字』に善なり
とあり、『詩・邶風・雄雉』何用不臧
(何を用て臧からざん)のやうに用ゐる。
字の原義は臧獲の臧。もと俘虜をいふ語であらう。臣は神の徒隸として仕へる臣僕。戕はその臣僕に聖器である戕を加へて祓ふ意で、すでに清められた後に神に捧げられる。故に臧善の義となつたのであらう。
卜文に、臣に戈を加へる形、また金文、古陶文に、戕と祝告の器を加へた形の字がある。
藤堂
臣(奴隸)と音符戕の會意兼形聲。戕は、すらりと長い槍。臧は、背の高い奴隸。また、すらりとしたの意から、裝(恰好が良い)の意味にも用ゐ、よいの意となる。
落合
甲骨文は𦣣に作り、臣と戈から成る會意字。武器で目を刺す形。原義は恐らく戰爭捕虜の獲得であるが、甲骨文では轉じて吉の意味で用ゐられてをり、後代には類似する「善い」の字義で使はれた。
甲骨文では吉凶判斷の語に用ゐ、吉の意。《合集》3297王占曰、其獲、其惟…、其惟乙、臧。
古文で聲符として爿を加へて臧の形になつた。
漢字多功能字庫
甲骨文は戈と臣に從ふ。臣は縱目の形に象り、戈で目を刺すさまを表す(楊樹達、李孝定)。古代には、戰爭で捕らへた俘虜を往々にして戈で刺して盲目にして、奴僕とした。古書に戰爭で捕らへた俘虜を「臧獲」と稱し、後には廣く奴僕を指し、僕人(召使、從僕)の賤稱となつた。『方言』臧、奴婢賤稱也。荊、淮、海、岱、雜齊之間、罵奴曰臧。
楊樹達は、戰に敗れた者は捕らへられて奴とされ、勝手氣儘をしようとしないので、引伸して善、好の義を有する、とする。『說文』臧、善也。(後略)
《段注》凡物善者必隱於内也。
古く臧をまた收藏を表すのに用ゐ、段玉裁は凡そ美善の才德は、必ず内に蘊藏(積藏、蓄積)されるためとする。一説には、戰爭で得られる財寶は必ず「善く隱す」べきものであり、故に臧は藏の本字であるといふ。これは、『管子』、『漢書』、『呂氏春秋』や、雲夢睡虎地秦簡や馬王堆帛書など近世に出土した文獻で、臧字の用法がいづれも藏と解けることから證明される。《睡虎地秦簡・日書甲種》簡72背臧(藏)於草中
。
のち、主に「藏匿」の意義により展開した。もし艸を加へれば收藏の「藏」(草の下に埋める)となり、もし貝を加へれば賊贓の「贓」(不法に得た財貨を匿藏する)となり、もし藏に更に肉を加へれば臟腑の「臟」(體内に藏する)となるなど、次第に殖えて、彼方まで擴がつてゐる。
金文では臣に從ひ爿聲に改まる。戰國文字はあるいはこの形を承ける。
甲骨文では、善、好を表す。《合集》3963其隹(唯)甲、余臧。
は、ただ甲の日に、余(商王の自稱)は好いであらう、の意。
金文では、疑ふらくは成功を表す。小盂鼎卜、有臧
は、占ひをして、有功(功績、功勞が有る)の結果を得る、の意。
戰國文字では戕聲と口あるいは言に從ふ字で臧を表す。《上博竹書三・周易》簡7初六、帀(師)出以聿(律)、不(否)𪺞(臧)、凶。
否は困厄(困窮、困苦)を表し、臧は有功を表す。全句で、初六爻は出師には嚴しく明らかな紀律を要する、紀律が明らかでなければ、出師に敗れるか功績あるかに拘はらず、いづれも凶である、の意(季旭昇)。
【補註】 『易・師』に初六、師出以律、否臧凶。
とあり、その《象傳》に師出以律、失律凶也。
とある。)
屬性
- 臧
- U+81E7
- JIS: 1-71-41
- 𡒉
- U+21489
- 匨
- U+5328
- JIS X 0212: 20-11
- 𢨑
- U+22A11