疌 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
疾也。凡便捷之字當用此。「捷、獵也」、非其義。『〔易〕豫九四』朋盍簪。『子夏傳』云、簪、疾也。鄭云、速也。晁說之云、陰宏道按張揖『古今字詁』寁作撍。『埤倉』云、撍、疾也。說之案。撍簪同一字。王原叔謂卽詩不寁字。祖感反。玉裁按、『〔爾雅〕釋詁』「寁、速也。」本或作疌。
从又。又手也。从止。鍇曰、止、足也。手足共爲之故疾。
屮聲。疾葉切。按屮聲在十五部。疌在八部。合音也。
康煕字典
- 部・劃數
- 疋部・四劃
『說文』疾葉切、音截。疾也。从止从又。又、手也。止、足也。手足𠀤用會意。屮聲。別作捷。『廣韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤从宀作寁。
補註
『康煕字典』は𤴘を疌に作るが、本文書で扱ふ字(𤴗)とは別の字。
廣韻
- 卷・韻・小韻
- 入聲・葉・捷
- 反切
- 疾葉切〔音1〕
『說文』疾也。
音訓義
- 音
- セフ(漢) ゼフ(呉)⦅一⦆
- セフ(推)⦅二⦆
- セフ(推)⦅三⦆
- サム(推)⦅四⦆
- チ(推)⦅五⦆
- 官話
- jié⦅一⦆
- qiè⦅二⦆
- 粤語
- zit3⦅一⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・入聲・葉・捷』疾葉切〔廣韻1〕
- 『集韻・入聲下・葉第二十九・疌』疾葉切
- 『五音集韻・入聲卷第十五・葉第十・從四捷』疾葉切
- 聲母
- 從(齒頭音・全濁)
- 等呼
- 四
- 官話
- jié
- 粤語
- zit3
- zit6やzip6を示す資料もあるが、zit3も含めて情報が乏しく、不詳。
- 日本語音
- セフ(漢)
- ゼフ(呉)
- 義
- 素早い。動きが速い。『説文解字』
疾也。
⦅二⦆
- 反切
- 『集韻・入聲下・葉第二十九・妾』七接切
- 『五音集韻・入聲卷第十五・葉第十・清四蕺』千協切
- 聲母
- 清(齒頭音・次清)
- 等呼
- 四
- 官話
- qiè
- 日本語音
- セフ(推)
- 義
- 姓。(『集韻』)
⦅三⦆
- 反切
- 『集韻・入聲下・葉第二十九・接』即涉切
- 『五音集韻・入聲卷第十五・葉第十・精四接』即葉切
- 聲母
- 精(齒頭音・全清)
- 等呼
- 四
- 日本語音
- セフ(推)
- 義
- 『集韻』
闕人名。『史記』衛疌伯、周諸侯。
『史記・三代世表』に衞の疌伯が見える。なほ『史記・衛康叔世家』は𢈻伯に作る。(補註: 早稻田大學古典籍綜合データベース收錄本の一で確認。)jawpは寁伯、zhwpは卫𢈻伯を立項してゐる。
⦅四⦆
- 反切
- 『集韻・上聲下・感第四十八・寁』子感切
- 『五音集韻・上聲卷第九・感第十一・精一昝』子感切
- 聲母
- 精(齒頭音・全清)
- 等呼
- 一
- 日本語音
- サム(推)
- 義
- 『集韻』
簪、速也。『易』「朋盍簪」王肅讀。或作疌。
⦅五⦆
- 反切
- 『集韻・去聲上・至第六・致』陟利切
- 『五音集韻・去聲卷第十・至第五・知三智』知義切
- 聲母
- 知(舌上音・全清)
- 等呼
- 三
- 日本語音
- チ(推)
- 義
- 𤴡をまた疌に作る。(『集韻』)
解字
白川
象形。髮を結ひ上げた婦人が、廟中の祭事に奔走する形。敏捷の捷の初文。敏も、婦人が髮飾りをつけて、祭事に奔走する形。家の祭事には、婦人が奔走した。
『説文解字』に疾やかなり
とあり、本邦の「わしる」といふ語に當たる。
妻の上部は疌と同じ。妻は儀禮のときの盛飾の姿。疌はその下部を足の形にして、奔走の意を表す。
『説文解字』は字を《止部》に屬し、止と又とに從つて屮聲とするが、聲も異なり、屮は髮を結んだ形。
藤堂
屮(伸び出る印)と又(手)と止(足)の會意。手足を素早く動かすことを示す。
漢語多功能字庫
疌の小篆には二つの字がある。一つ目は迅速を表し、學者は捷の古い字であるとする。『説文解字』疌、疾也。(後略)
邵瑛『群經正字』疌𤴘二字、以今隸法書之、並作疌。
二つ目は舊式の織機の踏板を表す。『説文解字』𤴘、機下足所履者。(後略)
屬性
- 疌
- U+758C
- JIS: 2-81-37
- 𤴗
- U+24D17
關聯字
疌に從ふ字
漢字私註部別一覽・止部・疌枝に蒐める。
其の他
- 𤴘
- 『康煕字典』は𤴘を疌に作る。