茲 - 漢字私註
説文解字
艸木多益。从艸、兹省聲。子之切。
- 一・艸部
説文解字注
艸木多益。『詩・小雅』兄也永歎。毛曰、兄、茲也。戴先生『毛鄭詩考正』曰、茲今通用滋。『說文』茲字說云、艸木多益。滋字說云、益也。韋注『國語』云、兄、益也。『詩』之辭意言不能如兄弟相救、空滋之長歎而已。按『大雅』職兄斯引《傳》亦云兄、茲也。从艸、絲省聲。絲、宋本作玆。非也。玆從二玄、音玄。字或作滋。⿱艸𢆶從絲省聲。『韵㑹』作𢆶聲。𢆶者、古文絲字。滋孶鷀皆茲聲。子之切。一部。經典茲、此也。《唐石經》皆誤作玆。
康煕字典
- 部・劃數
- 艸部六劃
- 古文
- 𦱳
- 茊
『唐韻』子之切『集韻』津之切、𠀤音孜。『說文』草木多益也。
又『爾雅・釋詁』此也。『書・大禹謨』念茲在茲。
又蓐席也。『爾雅・釋器』蓐謂之茲。『公羊傳・桓十六年』屬負茲舍不卽罪爾。《註》諸侯有疾稱負茲。
又『史記・周本紀』康叔封布茲。《徐廣曰》茲、藉草之名。
又『通志・氏族略』宋茲成、墊江人。
又通滋。『前漢・五行志』賦歛茲重。『揚子・太玄經』天不之茲。
又『荀子・正論篇』琅玕龍茲。《註》與髭同。
又『篇海』音慈。龜茲、國名。
- 部・劃數
- 艸部五劃
『正字通』古文茲字。註詳六畫。
- 部・劃數
- 艸部八劃
『集韻』茲、古作𦱳。註詳六畫。
廣韻
- 四聲・韻・小韻
- 上平聲・之・慈
- 反切
- 疾之切
龜兹、國名。龜、音丘。
- 四聲・韻・小韻
- 上平聲・之・兹
- 反切
- 子之切
此也。
又姓。『左傳』魯大夫兹無還。
子之切。十四。
音訓・用義
- 音
- (1) シ(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・之・兹』子之切〉[zī]{zi1}
- (2) ジ(呉) シ(漢) 〈『廣韻・上平聲・之・慈』疾之切〉[cí]{ci4}
- 訓
- (1) この。これ。ここに。しげる。ます。ますます。
今茲とは今年のこと。
龜兹は音(2)に讀む。
解字
白川
上部の絲束の結び目を艸と誤つて茲につくり、『説文解字』に《艸部》に屬して草木滋生の意とし、字を絲の省聲とする。
絲を束ねて染め、結び目が白のまま殘るのを素といひ、素の上部が茲の上部に當たる。
卜文に字を𢆶につくり、𢆶れを用ひよ
、また金文の《大保𣪘》に𢆶の彝を用て命に對ふ
のやうに指示詞に用ゐる。また《㸓鼎》に絲の五夫
のやうに絲を用ゐることがあり、𢆶、茲、絲はもと一字、繁簡の形であることが知られる。
『説文解字』は滋字條に益なり
と滋益の意とする。絲束が水を含んで量の加はることを滋といふ。
藤堂
艸と𢆶(細かく小さいものが竝ぶ)の會意。小さい芽がどんどん竝んで生ずることを表す。
また、此とともに、近稱の指示詞に當てて用ゐる。
落合
絲とは上古音が近いが、同源語か、字形の類似から發音が近似した一種の慣用音かは不明。
甲骨文での用法は全て假借。
- 近くの物や時間を指す連體修飾語。「この」。《懷特氏等所藏甲骨文集》1461
丙申卜、叀茲戉用于河。
- 三人稱代名詞。「これ」。《殷墟花園莊東地甲骨》427
丁丑卜在茲、往微禦癸子、勿于[⿰戈大]。用。
- 茲用
- 命辭の内容が採用された(行はれた)ことを示す驗辭。茲は命辭を指す代名詞。單に用ともいふ。
- 茲不用
- 命辭の内容が採用されなかつた(行はれなかつた)ことを示す驗辭。單に不用ともいふ。
- 茲御
- 命辭の内容どほりになつたことを示すが、第五期(文武丁乃至帝辛代)に主に見られ、受動的な占卜内容に用ゐられることが多い。
後に植物が茂ることを意味する用法が現はれ、篆文で艸を加へた。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文では𢆶につくり、二束の絲に象る。甲骨文、金文では多く借りて指示代詞に用ゐる。艸に從ふ茲字は戰國竹簡に見える字。
屬性
- 茲
- U+8332
- JIS: 1-72-4
- 茊
- U+830A
- 𦱳
- U+26C73
- JIS: 2-86-36
- 兹
- U+5179
関聯字
茲に從ふ字
𢆶や茲に從ふ字を漢字私註部別一覽・幺部・𢆶枝に蒐める。
其の他
- 玆
- 別字。