此 - 漢字私註
説文解字
止也。从止从匕。匕、相比次也。凡此之屬皆从此。
- 二・此部
康煕字典
- 部・劃數
- 止部二劃
『唐韻』『正韻』雌氏切『集韻』『韻會』淺氏切、𠀤音佌。『說文』止也。从止从匕。匕、相比次也。《徐曰》匕、近也。近在此也。『爾雅・釋詁・疏』此者、彼之對。『詩・周頌』在彼無惡、在此無斁。『老子・道德經』去彼取此。
又『六書故』此猶兹也、斯也。『大學』此謂知本。
音訓
- 音
- シ(漢、呉) 〈『廣韻・上聲・紙・此』雌氏切〉
- 訓
- これ。この。ここに。
解字
白川
形聲。聲符は止。
『説文解字』に止まるなり。止と匕とに從ふ。匕は相ひ比次(ならべる)するなり。
と會意に解するが、匕は相比次する意ではなく、牝牡の牝の初文。
此は雌の初文。此に細小なるものの意がある。
之と同聲で、代名詞の近稱として用ゐる。
『詩』『書』にも、また金文では戰國期の《南疆鐘》にも、代名詞としての用法が見える。
藤堂
止(足)と比(ならぶ)の略體の會意。足を竝べても上手く揃はず、ちぐはぐになること。跐(足がちぐはぐになる)の原字。
但し普通には、その音を借用して、斯、是、之などとともに近稱の指示詞に當て、その本義は忘れ去られた。
落合
會意。甲骨文は、止と匕または人に從ふ。原義を「人が足で留まること」と看做す説が有力であるが、甲骨文では假借した代名詞の用法のみで、成り立ちは確實ではない。上古音について、匕、此を同部として復元する説があり、匕は亦聲符かも知れない。
甲骨文では、前の句を受ける關係代名詞に用ゐ、「これ」と訓ず。隹(惟)と同樣の用法。《合集》28258其求年于河、此有雨。
別字?
人と止を上下に竝べた字形(⿱人止あるいは⿱匕止)は地名に用ゐ、別字であらう。召の誤字かも知れない。《合集》5524貞、使人于此。
【補註】企は人の足を強調した形で、別字。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、止と人に從ひ、左右に竝べるものと上下に竝べるものに區別はない。人の步みを止める處に象り、此處の意。彼に相對する。
陳初生は「爪先と側身の人の形で、足取りがここに到つて停止するの意と解く」とする。何琳儀は、足で人をふむ意に解き、跐の初文とする。
甲骨文では祭名に用ゐる。
金文での用義は次のとほり。
- 人名に用ゐる。此鼎
此其萬年無彊。
- 近くを指す代詞に用ゐる。中山王鼎
此易言而難行
。
戰國竹簡でも近くを指す代詞に用ゐる。
- 《郭店簡・五行》簡41
此之胃(謂)也。
- 《睡虎地秦簡・語書》簡6
如此、則為人臣亦不忠矣。
屬性
- 此
- U+6B64
- JIS: 1-26-1
- 人名用漢字
關聯字
此に從ふ字
- 啙
- 㭰
- 些
此聲の字
- 祡
- 玼
- 茈
- 呰
- 𧺼
- 訾
- 眥
- 雌
- 𦍧
- 鴜
- 觜
- 柴
- 貲
- 疵
- 㰣
- 頿
- 𩢭
- 𪕊
- 𡗼
- 泚
- 鮆
- 㧗
- 㧘
- 姕
- 紫
- 鈭