匊 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
在手曰匊。『〔詩〕唐風〔椒聊〕』「椒聊之實、蕃衍盈匊」『小雅〔采綠〕』「終朝采綠、不盈一匊」毛皆云、兩手曰匊。此云在手。恐傳寫之誤。《手部》曰「持、握也」、「握、搤持也」、「搤、捉也」、「捉、搤也」、「把、握也」。然則在手曰捉、曰搤、曰握、曰持、曰把。不曰匊也。據『篇』『韵』所言則許書之譌久矣。『玉篇』曰「古文作𦥑」、此語尤誤。𦥑者、叉手也。叉者、手指相錯也。『廣韵』以「兩手奉物」訓𦥑、誤矣。『方言〔七〕』曰「掬、離也。燕之外郊朝鮮洌水之閒曰掬。」此方俗殊語。不係乎本字也。
从勹米。會意。米至𢽳。兩手兜之而聚。居六切。三部。俗作掬。
康煕字典
- 部・劃數
- 勹部六劃
- 古文
- 𦥑
『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤居六切、音菊。〔音1〕『說文』在手曰匊。《徐曰》手掬米、會意。『玉篇』兩手也、滿手也、手中也、物在手也。『詩・唐風』椒聊之實、蕃衍盈匊。《朱子・詩》從容出妙句、珠貝爛盈匊。
又『韻會』一手曰匊。『詩・小雅』終朝采綠、不盈一匊。《賈島・詩》虬龍一匊波、洗蕩千萬春。
『集韻』或作掬。
音訓義
- 音
- キク(漢)(呉)⦅一⦆
- 訓
- すくふ⦅一⦆
- 官話
- jū⦅一⦆
- 粤語
- guk1⦅一⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・入聲・屋・菊』居六切
- 『集韻・入聲上・屋第一・匊』居六切
- 『五音集韻・入聲卷第十三・屋第一・見三菊』居六切
- 聲母
- 見(牙音・全清)
- 等呼
- 三
- 官話
- jū
- 粤語
- guk1
- 日本語音
- キク(漢)(呉)
- 訓
- すくふ
- 義
- 掬ふ。掬ひ上げる。兩手で物を掬ふ。掬に同じ。
- 手に物を持つ。
- 兩手。
- 容量の單位。二升。
- 釋
- 『廣韻』
匊: 物在手。
- 『集韻』
匊掬: 居六切。『說文』在手曰匊。或从手。文六十四。
- 『康煕字典』上揭。
解字
掬の初文。
白川
『説文解字』に手に在るを匊と曰ふ。勹米に從ふ。
といふ。
『詩經・小雅・采綠』に終朝采綠、不盈一匊。
(終朝に綠(草名)を采るも、一匊に盈たず)とあり、草摘みを以て豫祝とする俗を歌ふ。不盈一匊とはその豫祝の叶はぬ意。《毛傳》に兩手を匊と曰ふ
とあり、兩手(𦥑)で承ける意。
金文の字形は、身を屈めて物を承ける形。
藤堂
勹(包む)と米(散らばつた米粒)の會意。掬の原字。散らばらないやうに一箇所に集約するの意を含む。
漢字多功能字庫
金文は米に從ひ勹聲。本義は兩手を上に向けて包み 、半圓形を成し、米粒やその他の物品を入れて捧げ持つこと。後に意符の手を加へて掬字がつくられた。『説文解字』匊、在手曰匊。(後略)
《段注》兩手兜之而聚。
匊、掬の用義は次のとほり。
- 土を掬ふ意。『抱樸子・良規』
龍門沸騰、非掬壤所遏。
は、黃河龍門の波濤は翻騰し、一摑みの土で食ひ止められるものではない、の意(龐月光)。 - 水を掬ふ意。于良史〈春山月夜〉
掬水月在手、弄花香滿衣。
- 菜を抱へ持つ意。『詩・小雅・采綠』
終朝采綠、不盈一匊。
は、早朝から綠菜を採つたが、一抱へに滿たなかつたの意(馬持盈)。
現代漢語では掬はあまり用ゐられず、捧が掬を兼倂してゐる。掬は「笑容可掬」の類の成語に見えるのみ(王鳳陽)。
金文では人名に用ゐる。番匊生壺番匊生鑄媵壺。
は、番匊生が嫁入り道具の壺を鑄造したの意。郭沫若は、匊は讀んで鞠となし、生養、撫育を表すと指摘する。匊(鞠)と生は、一個が字で、一個が名であり、古人の字と名の意義は多く關はりがあり、番生の名は生、字は匊(鞠)、兩者ともに生養、撫育の意がある。
屬性
- 匊
- U+530A
- JIS: 2-3-44
- JIS X 0212: 19-93
関聯字
匊聲の字
- 菊
- 趜
- 鞠
- 䱡
- 䗇
- 掬
- 諊