曶 - 漢字私註

説文解字

曶
出气詞也。从、象气出形。『春秋傳』曰、鄭太子曶。呼骨切。
曰部
𡆷
籒文曶。一曰佩也。象形。

説文解字注

曶
出气䛐也。『玉篇』作曶。出气者、其意也。曶者、其言也。意內言外謂之䛐。此與《心部》音同義異。忽、忘也。若『羽獵賦』蠁曶如神、『傅毅・舞賦』雲轉飄曶、漢《樊敏碑》奄曶滅形、皆出气之意。倐𠦪之皃本當用此字。不當作忽忘字也。『〔漢書〕楊雄傳』於時人皆曶之。則假曶爲忽。『〔漢書〕古今人表』仲忽作中曶。許云鄭大子曶。則未識名字取何義也。今則忽行而曶廢矣。从曰、曶象气出形。呼骨切。十五部。俗作曶。『春秋傳』曰、鄭大子曶始見『左傳・桓公十年』。今字作忽。
𡆷
籒文曶一曰佩也。象形。按六字當作一曰佩曶也五字。系於象气出形之下、春秋傳之上。淺人改易之。致不通耳。下得謂古笏可从口、不可从曰。亦不得謂𡆷象笏形也。『〔書〕咎繇謨』〔註1〕六律五聲八音在治忽。『漢書〔律曆志〕』在治忽作七始訓。『史記〔夏本紀〕』作來始滑。裴駰曰、『尙書』滑字作曶。音忽。鄭曰、曶者、臣見君所秉。書思對命者也。君亦有焉。據此則象笏字古作曶。許《竹部》無笏。

康煕字典

部・劃數
曰部四劃

『唐韻』『集韻』𠀤呼骨切、音忽。『說文』出气詞也。从曰、象气出形。『春秋傳』曰、鄭太子曶。○按『左傳』作。又『前漢・古今人表』中曶。《註》曶與忽同。又『揚雄傳』於時人皆㫚之。《註》師古曰、曶與忽同。輕也。

又『韻補』叶許月切、微也。『後漢・律曆志贊』象因物生、數本杪曶。律均前起、準調後發。

○按與日部㫚字不同。

部・劃數
囗部・四劃

『集韻』乎骨切、音忽。與同。

異體字

或體。

或體。

音訓・用義

コツ(漢) 〈『廣韻・入聲・没・忽』呼骨切〉[hū]{fat1}

白川は、ひらく、こじあける、みだれる、の意とする。

藤堂は、すみやか、あなどる、おろそかにする、の意とする。

KO字源はに同じとする。

解字

金文はに從ふ形に見える。

白川

の會意。勿はと同じく手。曰は祝禱や盟誓を收める器。その上から手を加へて、その蓋を抉じ開ける形。祝詞の蓋を上げて見る形は曰。そこに神聖の語を收めてゐるので、それを讀み上げることを「曰く」といふ。

『説文解字』に曶の上部を氣の上る形とする。『説文解字』は曰についても口气の出づるに象るなりと解するが、曰は口の形でなく、曶の上部も气の象ではない。

曶はまた㸓に作る。みだりに祝告の器を開くのは神聖を犯すこととなるので、また曶亂の意がある。

藤堂

(見えない)と(口の中に印をつけた形)の會意。口から氣が見えない間に出るありさまを示す。

漢字多功能字庫

金文はに從ふ。構形初義不明。爪に從ふのは手に執り持つの義を有し、疑ふらくは本義は執り持つの意(高田忠周)。

『説文解字』は氣の出づる形に象るといふ。字形について見ると、この字は爪に從ひ、執り持つの義を有し、「佩曶」は執り持つところのもののこと(高田忠周)で、經傳では笏と通用し、古く朝臣が持つところのもの。『左傳・桓公二年』袞冕黻珽杜預注珽、玉笏也、若今吏之持簿。『禮記・王藻』凡有指畫于君前用笏、造受命于君前則書于笏。一説に疑ふらくはの本文。説文解字に扣、牽馬也。從手口聲。といふ。に從ふのは爪に從ふのに同じ。曶字の口の上の橫劃は馬の口中に入れる銜を象り、馬を牽くと釋す(譚戒甫、郭沫若)。按ずるに曶の構形本義は定め難く、しかし爪に從ふことから、執り持つの義を有する。

銘文では曶は人名に用ゐる。

諸經傳にも曶を人名に用ゐる例が見える。『論語』仲忽、『左傳』鄭太子忽を籀文は「曶」に作り、『漢書・古今人表』は「中忽」に作る。と曶は同音、古今の字。

屬性

U+66F6
𡆷
U+211B7
𡆳
U+211B3
𡇆
U+211C6

関聯字

曶聲の字

其の他

別字。昒の或體。