卽 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
卽食也。卽當作節。『周易〔頤・象傳〕』所謂節飲食也。節食者、檢制之使不過。故凡止於是之䛐謂之卽。凡見於經史言卽皆是也。『鄭風毛傳』曰、卽就也。
从皀卪聲。此當云从卩皀、卩亦聲。其訓節食。故从卩皀。卩節古通也。今音子力切。古音在十二部。
康煕字典
- 部・劃數
- 卩部・七劃
- 古文
- 皍
『唐韻』子力切『集韻』『韻會』『正韻』節力切、𠀤音稷。〔音1〕『說文』卽食也。一曰就也。《徐曰》卽猶就也。就食也。『前漢・高帝紀』使陸賈卽授璽綬。《註》師古曰、卽、就也。
又『玉篇』今也。
又『爾雅・釋詁』卽、尼也。《註》尼、近也。《疏》卽今相近也。
又『前漢・西南𡗝傳』卽以爲不毛之地、無用之民。《註》卽、猶若也。
又卽卽、充實也。『前漢・禮樂志・安世房中歌』磑磑卽卽、師象山則。《註》積實之盛、類于山也。
又通作則。『前漢・王莽傳』應聲滌地、則時成創。《註》則時、猶卽時也。
又燭炬之燼曰卽。『管子・弟子職』右手執燭、左手正櫛。『檀弓』註櫛作卽。
又姓。『廣韻』風俗通有單父令卽費。又漢複姓、有卽墨成。
又『集韻』隷作。『玉篇』今作即。
- 部・劃數
- 卩部・五劃
『玉篇』卽今作即。
- 部・劃數
- 白部五劃
『字彙補』古文卽字。註詳卩部七畫。
音訓義
- 音
- ソク(呉) ショク(漢)⦅一⦆
- ショク(推)⦅二⦆
- シツ(推)⦅三⦆
- 訓
- つく⦅一⦆
- すなはち⦅一⦆
- もし⦅一⦆
- 官話
- jí
- 粤語
- zik1
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・入聲・職・即』子力切
- 『集韻・入聲下・職第二十四・卽』節力切
- 『五音集韻・入聲卷第十五・職第六・精四即』子力切
- 聲母
- 精(齒頭音・全清)
- 等呼
- 四
- 官話
- jí
- 粤語
- zik1
- 日本語音
- ソク(呉)
- ショク(漢)
- 訓
- つく
- すなはち
- もし
- 義
- 座に就く。
- 位につく。卽位。
- 近附く。
- すぐさま。直ちに。卽時。
- つまり。
- そこで。さうなると。さういふときは。
- もし。萬が一。
- 釋
- 『廣韻』
即: 就也、今也、舎也、半也。『說文』作「卽食也」。亦姓、『風俗通』有單父令即賣、又漢複姓、有城陽相齊人即墨成。子力切。十六。
- 『集韻』
卽即: 節力切。『說文』即食也。一曰就也。亦姓。隷作即。文二十六。
- 『康煕字典』上揭。
⦅二⦆
- 反切
- 『集韻・入聲下・職第二十四・堲』疾力切
- 『五音集韻・入聲卷第十五・職第六・從四堲』秦力切
- 聲母
- 從(齒頭音・全濁)
- 等呼
- 四
- 日本語音
- ショク(推)
- 義
- 堲に同じ。
- 釋
- 『集韻』
堲即: 疾力切。疾也。『書〔舜典〕』「朕堲讒說」。或省。文八。
⦅三⦆
- 反切
- 『集韻・入聲上・質第五・堲』子悉切
- 『五音集韻・入聲卷第十四・質第一・精四堲』資悉切
- 聲母
- 精(齒頭音・全清)
- 等呼
- 四
- 日本語音
- シツ(推)
- 義
- 堲に同じ。
- 釋
- 『集韻』
堲即: 子悉切。疾也。『書〔舜典〕』朕堲讒說。一曰燒土也。『禮〔檀弓上〕』夏后氏堲周。一曰燭燼。或省。文十七。
解字
白川
皀と卩の會意。皀は𣪘の初文。𣪘は文獻に簋に作り、盛食の器。皀の上に蓋を加へると食字となる。卩は人の跪坐する形。食膳の前に人が坐する形は卽、すなはち席に即く意。左右に人が坐するときは鄕、饗、嚮の初文。
『說文』に食に卽くなり
とする。《段注》に卩を節度、節食の意とするが、卩の聲義を取る字ではない。
すべてその位置に即き、その任に即くことをいふ。遲滯なくその後で行動するので、即時の意となる。
藤堂
皀(食べ物の形)と卩(跪く人)の會意。人が坐つて食物を盛つた食卓のそばにくつついたさまを示す。
のち副詞や接續詞に轉じ、口語では便、就の語に取つて代はられた。
落合
會意。甲骨文は豆に食物を盛つた形の皀またはその略體と、人が坐つた形の卩に從ひ、祭祀儀禮の樣子を表してゐる。卩に替へて人を用ゐた異體字などもある。「食事の席に即く」ことから「つく」の意にも用ゐられた。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 祭祀儀禮の一種。
- 《合補》10418
癸巳貞、其侑、勺伐于伊、其卽。
- 《甲骨拼合集》222
辛未貞、今、令卽竝。
- 《合補》10418
- つく。位置につく。接する。《殷墟小屯中村南甲骨》319
癸酉卜、卽宗、⿰奚戌屯。
- 貞人名。
- 卽日
- 祭祀名。《屯南》2359
丁亥卜、其求年于大示、卽日、此有雨。
後に人を用ゐた異體字から飤を分化した。
上古音を質部とする説(節の聲符であるため)と職部とする説があり、卩を聲符とするか否か、判斷は難しい。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は皀と卩に從ふ。人が食器の前に跪き(卩)食に就く形に象り、本義は食事をすること。即も就も接近、靠近(近寄ること)の義を有する。
- 『論語・子張』
望之儼然、即之也溫
邢昺疏就近之則顏色溫和。
更に引伸して時間上の「立即」(直ちに、すぐに)の意を派生する。
卜辭での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐて食事することを表す。「夒眔上甲其即」は、夒と上甲がいづれも饗に來ることを表す(姚孝遂)。
- 祭名に用ゐる。「其即父庚升」は、食を設け神を迎へ持て成す祭を表す(參・溫少峰)。
金文での用義は次のとほり。
- 向かふこと、近附くことを表す。競卣
隹白屖父以成師即東、命伐南尸(夷)。
吳闓生即東、至東也。
- 就の字義と關係のある例もある。「即井(刑)」(刑罰を施すことを表す。兮甲盤
不用令(命)、𠟭(則)即井(刑)。
)、「即立(位)」、「即令」(按ずるに、命を授けること、命を受くることのいづれも言ひ、施受同辭に屬す)、「即事」(そのことについて)など。 - 會合を表す。長甶盉
穆王鄉(饗)豊(醴)、即井(邢)白(伯)、大祝射。
は穆王と諸侯の合射のことを記す。 - 附與を表す。曶鼎
即曶田七田
楊樹達即蓋今語交付之義。
- 人名に用ゐる。即簋
定白(伯)入右即
。 - 音近きにより通じて次となす。中山王方壺
夫古之聖王敄(務)在𰆸(得)賢、其即(次)𰆸(得)民。
戰國以後、簡帛文字では即をまた通じて次となす。《郭店簡・老子丙》簡1大上下智(知)又(有)之、其即(次)新(親)譽之、其既〈即〉(次)愄(畏)之、其即(次)[予人](侮)之。
傳世本『老子』は即を次に作る。
即と次は文獻で音近く相通ず。聲符でも互換される。『說文』は垐字の古文を堲に作る。また皀と食は古文字の要素として多く通用し、ゆゑに信陽楚簡では即は食と卩に從ふ。
そのほか、即と節の古音は同じく精紐質韻に屬し、通用が見える。
屬性
- 卽
- U+537D
- JIS: 1-14-81
- 人名用漢字
- 即
- U+5373
- JIS: 1-34-8
- 當用漢字・常用漢字
- 皍
- U+768D
- JIS X 0212: 46-24
関聯字
卽聲の字
- 節
- 鯽
- 揤