飤 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
糧也。从人食。祥吏切。一部。按以食食人物。其字本作食、俗作飤、或作飼。經典無飤。許云「䬴、食馬榖也」、不作「飤馬」。此篆淺人所增、故非。其次𥼶爲「糧也」、又非。宐𠛹。
康煕字典
- 部・劃數
- 食部・二劃
『唐韻』『集韻』『韻會』祥吏切『正韻』相吏切、𠀤音寺。〔音1〕『說文』糧也。『玉篇』食也。與飼同。『增韻』以食食人也。『東方朔・七諫』子推自割而飤君兮、德日忘而怨深。○按謂介子推從晉文公出亡、割股肉以飤文公也。通作食。
又或作飴。『晉書・王薈傳』以私米作饘粥、以飴餓者。《註》飴、音嗣。
音訓義
- 音
- シ(漢) ジ(呉)⦅一⦆
- 訓
- かて⦅一⦆
- くらはす⦅一⦆
- 官話
- sì⦅一⦆
- 粤語
- zi6⦅一⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・去・志・寺』祥吏切
- 『集韻・去聲上・志第七・寺』祥吏切
- 『五音集韻・去聲卷第十・至第五・邪四寺』祥吏切
- 聲母
- 邪(齒頭音・全濁)
- 等呼
- 四
- 官話
- sì
- 粤語
- zi6
- 日本語音
- シ(漢)
- ジ(呉)
- 訓
- かて
- くらはす
- 義
- 食物。食糧。
- 食べさせる。養ふ。
- 食、飼に通ず。
- 釋
- 『廣韻』
飤: 食也。 飼: 上同。
- 『集韻』
飤飼食飴: 『說文』糧也。或从司、亦作食飴。
- 『康煕字典』上揭。
解字
白川
『說文』に糧なり
とあり、『玉篇』に飼と同字とする。
金文に飲食を「飲飤」と記してをり、食器の前に人の坐する形で、食の初文と見てよい。《王孫遺者鐘》に誨猷飤たず
とあつて、食言、蠱食(蟲食ひ)の意にも用ゐる。
聲義ともに食と同じ。
藤堂
飤を飼の異體字に擧げる。
落合
飤や飼は卽と同源の字。殷代の卽の異體に、卩を人に替へた形があり、當初は意味上で明確な使ひ分けは無かつたが、後代にはこの系統が引伸義で「やしなふ」として使用され、更に家畜を飼ふ意味に用ゐられた。この系統では、殷代に皀を食に替へた異體があり、これが後代に繼承され、飤となつた。更に人を聲符の司に替へた形聲字が飼。
卽は節の聲符に使はれてゐるため、上古音を質部とする説があるが、中古音と同じく韻尾を[k]として職部とする説もある。その場合には、飼(之部)とは韻母が入聲と陰聲の通用關係になるので、語彙としても同源であつた可能性がある。
食にも「やしなふ」の字義があることから、飤を食からの分化字とする説もあるが、殷代には卽と飤に明確な區別がなく、皀と食は互用された。寧ろ後代に食が飤の音義で使はれたと思はれる。推定上古音は共に邪紐之部。(補註: 中古音は共に邪母志韻、志韻は之韻去聲。)
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は食と人に從ひ、人の食事する形に象る。飤と食は同じ字で、飤は食の繁體。食は聲符。
【補註】漢字多功能字庫が飤の甲骨文として擧げる字形を、落合は卽の甲骨文として擧げる。
疑ふらくは飤は本來は人の形と皀の上の倒口の亼が繫がつてゐて、造字の本意は飲と同じ(馬敍倫)。
甲骨文での用義は不詳。
金文では本義に用ゐ、「飤鼎」、「飤簋」、「飤盉」など、食用、食べることを表す。余義鐘飲飤訶(歌)舞
。
屬性
- 飤
- U+98E4