召 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
𧦝也。《言部》曰、𧦝、召也。
从口刀聲。直少切。二部。
康煕字典
- 部・劃數
- 口部・二劃
『唐韻』直少切『集韻』『韻會』『正韻』直笑切、𠀤潮去聲。『說文』𧦝也。《王逸曰》以手曰招、以言曰召。『書・甘誓』大戰于甘、乃召六卿。『詩・齊風』自公召之。『禮・曲禮』父召、無諾唯而起。
又『廣韻』『正韻』實照切『集韻』『韻會』時照切、𠀤同邵。『廣韻』邑名。『詩序』甘棠、美召伯也。《箋》召伯、姬姓、名奭、食邑于召。
又姓。『廣韻』召公之後。『前漢・循吏傳』召信臣、九江壽春人。『氏族博考』春秋召與邵一氏、後分爲二、汝南安陽之族皆从邵。
異體字
或體。
音訓・用義
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・去聲・𥬇・召』直照切
- 官話
- zhào
- 粤語
- ziu6
- 日本語音
- セウ(漢、呉)
- 訓
- めす。まねく。
⦅二⦆
- 反切
- 『廣韻・去聲・𥬇・邵』寔照切
- 官話
- shào
- 粤語
- siu6
- 日本語音
- セウ(漢)
邑名や姓に用ゐる。
解字
白川
人と口の會意。人は上から降下する形。口は祝詞を收める器。祝禱して靈の降格することを求める意で、招きに應じて靈が降りてくることを「昭格」といふ。格の初文は各。夂は足より降下する意で、字の形象は召と同じ。
周初の召公は皇天尹大保と呼ばれる聖職者で、その召を金文では𥃝と記す。祝告し、酒を供へて、靈を呼ぶ意。
『説文解字』に𧦝ぶなり
、𧦝字條に召すなり
とあつて互訓。𧦝の初文は乎。鳴子板を以て神をよぶ意の字。
「昭格」は金文では「卲各」に作り、卲は神靈の降格を迎へて拜する形。
金文に召公を𥃝に作ることから、召公の家がそのやうな聖職者であつたことが知られる。
藤堂
口と音符刀の會意兼形聲。刀は、)型に曲線を描いた刀。召は、口で招き寄せること。
落合
會意。人と口に從ひ、言葉で人を召喚することを表してゐる。呼ぶ對象を神靈とする説もあるが、甲骨文には人を神靈の意味で用ゐた例は見られない。
第一期(武丁代)は人に從ふ字形であつたが、一二間期(祖己代)に人を字形が近く發音を表す刀に替へた形聲字が作られた。
第五期(文武丁乃至帝辛代)には兩手の形の𦥑及び甑の初文(補註: 曾。字形は曾の上半、曰を除いた部分に當たる。)を加へた繁文が主に用ゐられてをり、祭祀に呼び寄せる樣子と思はれる。酒樽の象形の酉を用ゐた字形もある(補註: 白川のいふ𥃝に相當)。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 地名。殷都近傍の土地。一二間期(祖己代)に殷王に敵對したが、後に服從し、第五期(文武丁乃至帝辛代)には軍事訓練の擧行地として多く見える。《合補》11114
己酉卜貞、王⿺辶戈于召、往來亡災。
- 祭祀名。《英藏》2359
…庚叀召用、王受…。
金文には、刀に從ふ形と、𦥑、甑に從ふ繁體が繼承され、古文では召と邑から成る邵(晉の邑名)が代替字として使はれることもあつたが、篆文で召の字體に統一された。
漢字多功能字庫
召字の造字本義には數多くの異なる見解がある。馬如森は字を釋して人が酒を釀造して飲むさまに象るとする。徐中舒は表示主賓相見、相互紹介、侑於尊俎之間、當為紹介之紹初文。
と釋する。李孝定は、酒席を設けて賓客を招待することを表し、招の初文、本義は招待であるとする。
甲骨文の繁體は二つの逆さの手の形と刀聲と酉と曾に從ふ。兩手で酒甁を蒸煮器具(曾)の上に置くさまに象り、本義は煮酒。また酒の釀造と關係があるともされる(蔣玉斌)。刀は聲符。後に召に簡略化される。
甲骨文では地名に用ゐる。
金文での用義は次のとほり。
- 輔助の義を表し、いづれも繁體の召字(酉、曾に從ふ。白川のいふ𥃝に相當。)に作る。盂鼎
夙夕召我一人烝四方
。 - 召喚、宣召(帝王が臣下を召し出すこと)を表す。多く簡體の召字(ただ刀と口に從ふ)に作る。克鐘
王乎(呼)士曶召克
。 - 地名、姓氏、人名に用ゐる。
屬性
- 召
- U+53EC
- JIS: 1-30-4
- 當用漢字・常用漢字
- 𥃝
- U+250DD
關聯字
召に從ふ字を漢字私註部別一覽・口部・召枝に蒐める。