屎 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
糞也。从艸胃省。㑹意也。式視切。十五部。『左氏傳』『史記』假借矢字爲之。官溥說、𨤝字之上佀米而非米者、矢字。是漢人多用矢也。
康煕字典
- 部・劃數
- 尸部・六劃
『廣韻』式視切『集韻』『韻會』矧視切、𠀤音豕。『說文』糞也。本作蓾、从艸胃省。『集韻』作屎。『莊子・知北遊』道在屎溺。
又『前漢・天文志』有天屎星。
又通作矢。『史記・廉頗傳』頃之、三遺矢矣。
又『玉篇』許夷切『廣韻』喜夷切『集韻』『類篇』馨夷切、𠀤音犧。『說文』呻也。『詩・大雅』民之方殿屎。《註》呻吟也。『正字通』殿屎訓呻吟、譌文。別見口部唸字註。
- 部・劃數
- 尸部・五劃
- 部・劃數
- 尸部・九劃
『集韻』同𡱁。
- 部・劃數
- 尸部・九劃
『正字通』同𦳊。糞也。『正譌』存𦳊、無𡲖字。
- 部・劃數
- 艸部九劃
音訓
- 音
- (1) シ(漢、呉) 〈『廣韻・上聲・旨・矢』式視切〉[shǐ]{si2}
- (2) キ(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・脂・咦』喜夷切〉[xī]{hei1}
- 訓
- (1) くそ
殿屎は音(2)に讀み、呻吟の意。
解字
白川
尸と米の會意。尸は尾、尻の字に見られるやうに尾部を示し、米は屎の象形。𦳊の從ふところと同じ。
『說文』に字を𦳊に作り糞なり
と訓じ、字を胃の省文に從ふとする。米、𡇒はともに胃中の消化物の象形。
『詩・大雅・板』(上揭)民の方に殿屎する
とは、呻吟の意。
藤堂
屎
米と音符尸の會意兼形聲。尸は、棒狀にかたく伸びた屍體のこと。大便は棒狀でかたいのでシといひ、食べた米のかすなので米印を添へた。米印を矢で代用することもある。
𦳊
艸と𡇒(胃の略體。胃袋の中に食べ物が點々と入つてゐる形。)の會意。
落合
甲骨文は、尿とは逆に、勹の背後に小點を加へ、人糞を意味してゐる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 動詞。堆肥の散布であらう。主に田を目的語とする。《合集》9572
庚辰貞、翌癸未、屎西單田、受有年。十三月。
- 祭祀名。祭儀の詳細は不明。《合集》13625
貞、勿屎我[⿰奚戌]。
古文で小點を米に變へた字體が作られ、また楷書で勹を字形が近く發音を表す尸に變へた。
漢字多功能字庫
屎
甲骨文は人に從ひ、字の下の數點は人の排出した大便の形に象る。
屎は『説文解字』に𦳊に作り、艸と𡇒に從ひ、糞便を表す。胡厚宣は、小篆の𦳊の從ふところの𡇒の中の※と、胃の金文や小篆の從ふところの𡇒の中の※は、糞の甲骨文の從ふところの數點と同じで、その字形は米に似るが米ではなく、點は大便に象り、後に變形して米となつた、とする。按ずるに胃字中の數點は食べ物に象り、𦳊、糞の從ふ數點は大便に象り、後に變形して米となつた。
卜辭には常に「屎有田」と見え、糞を田に施すの意、徐中舒がこれに從ふ。裘錫圭は讀みて徙、選となす。姚孝遂はこの字を「尸少」と隸定し、農作に關係あるとする。今しばらく前説に従ふ。
金文では、陳侯因[次月]敦に一つの字形があり、尸と米に從ふ。尸と人は形が近く、いづれも側面の人の形に象る。高鴻縉は甲骨文の屎と同じ字で、人が糞をする形に象るとする。金文で(小點が)米に變形し始める。李家浩は、金文の屎字は纂の通假字とされ、繼承を表示すると指摘する。陳侯因[次月]敦屎(纂)嗣𧻚(桓)文
は、齊還幸の文德を繼承するの意。
また屎を通じて㕧となす。『玉篇・尸部』屎、呻也。
『詩・大雅・板』民之方殿屎、則莫我敢葵。
毛傳殿屎、呻吟也。
この字は極めて卑俗であるが、『莊子・知北遊』に「道在屎溺」の語がある。また『漢書・天文志』に「天屎星」がある。漢代には『史記・廉頗傳』のやうに屎を多く矢に作る。
𦳊
𦳊の異體を屎に作り、また通假字として矢に作る。『玉篇・艸部』𦳊、糞也。亦作矢、俗為屎。
『集韻』𦳊、或作屎。
江聲『李孝子傳論』顧膿血之穢、猶不如𦳊尿之甚也。
睡虎地秦簡では𦳊を矢に作り、糞便を表す。
また通じて遲となし、遲刻を表す。《睡虎地・封診式》有失伍及𦳊(遲)不來者
。
屬性
- 屎
- U+5C4E
- JIS: 1-53-93
- 𡱁
- U+21C41
- 𡲔
- U+21C94
- 𡲖
- U+21C96
- 𦳊
- U+26CCA