㞷 - 漢字私註
説文解字
艸木妄生也。从之在土上。讀若皇。
- 註に
徐鍇曰、妄生謂非所宜生。《傳》曰、門上生莠。从之、在土上。土上益高、非所宜也。
といふ。 - 六・之部
説文解字注
艸木妄生也。𡉚妄疊韵。妄生猶怒生也。从𡳿在土上。讀若皇。戸光切。十部。
古文。按从𡳿从𡈼、會意也。《鉉本》無此。然《宋本》文二之下有重一㒳字。則知固有此篆。與《小徐本》同。《辵部》古文往作𨓹、从此。
康煕字典
- 部・劃數
- 屮部四劃
- 古文
- 呈
- 𡴍
『集韻』『類篇』𠀤胡光切、音皇。『說文』艸木妄生也。从屮从王、與古文封字从㞢土會意不同。凡狂匡往字从此。○按『總要』音汪、艸木大茁也。『同文備考』音旺、艸木生也。舊註从『廣韻』巨王切、音狂、非。
- 部・劃數
- 口部四劃
『集韻』㞷古作呈。註詳屮部四畫。
又『字彙補』古文狂字。註詳犬部四畫。
『郭氏正誤』呈、从王从口。與呈字異。
- 部・劃數
- 屮部五劃
『集韻』㞷古作𡴍。註見四畫。
音訓
- 音
- 〈『廣韻・下平聲・陽・狂』巨王切〉
- 〈『集韻』胡光切、音皇〉[huáng]
- ワウ {wong5}
解字
白川
『説文解字』に艸木妄生するなり
とするが、その象ではない。
形聲。聲符は王。往の初文。卜文の「往來」の往は、鉞頭の形である王の上に、之(止)を加へて、出行に當たつて行ふ魂振りの呪儀を示す。すなはち㞷の字形。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、止に從ひ、王聲。戰國文字は上部が之に、下部が土あるいは𡈼の形に變はつた。往の初文。本義は、行く、到る。
甲骨文では本義に用ゐる。
- 《合補》3734
鼎(貞)、王㞷田、不雨。
㞷田は狩獵に行くの意。 - 《合集》37722
辛酉卜、鼎(貞)、王田斿、㞷來亡𡿧(災)。
金文での用義は次のとほり。
- 㞷を皇に用ゐる。陳逆簋
[陳土](陳)氏裔孫逆、乍(作)為㞷(皇)[示𥃷](祖)大宗簋。
- 讀んで襄となす。鄭㞷庫矛
奠(鄭)㞷庫[㫃戈](戟)朿(刺)。
「襄庫」は鄭國の武庫のことで、また『左傳・襄公三十年』因馬師頡介于襄庫
に見える(何琳儀)。
戰國楚簡では用ゐて廣となす。《郭店簡・性自命出》簡65君子執志必又(有)夫㞷=(廣廣)之心。
「廣廣」は遠大の義を表す(李零)。一説に「往往」は古書の「皇皇」のことで、嚮往(その方に心が向いてゆくこと、尊び慕ふこと、崇拜すること)を表すといふ(劉桓、陳偉)。
また用ゐて匡となす。《上博竹書二・容成氏》簡5㞷(匡)天下之正(政)十又(有)九年而王天下。
『説文解字』に㞷の本義を艸木妄生
とする。傳世文獻や出土文獻にこの用法は見えない。後に㞷字を再び獨立して使用せず、少なからざる㞷聲の字が王に從ふ形に改まつた。匡、狂、汪など(裘錫圭)。
屬性
- 㞷
- U+37B7
- 𡴍
- U+21D0D
關聯字
㞷に從ふ字
漢字私註部別一覽・止部・㞷枝に蒐める。
其の他
- 𡉚
- 別字。封の異體字。
- 呈
- 別字。嚴密にはに作る。本文書で扱ふ㞷の異體字はに作る。