及 - 漢字私註
説文解字
逮也。从又从人。
- 註に
徐鍇曰、及前人也。
といふ。 - 三・又部
古文及。《秦刻石》及如此。
亦古文及。
亦古文及。
説文解字注
逮也。《辵部》逮、及也。从又人。及前人也。巨立切。七部。
古文及。句。秦刻石及如此。今載『史記』者、《琅邪臺刻石》云、澤及牛馬。《碣石刻石》云、惠論功勞、賞及牛馬。按李斯作小篆。而刻石仍不廢古文也。
亦古文及。按凡字從此。
亦古文及。左從辵。右葢从筆。
康煕字典
- 部・劃數
- 又部二劃
- 古文
- 𢎜
- 𨕤
『唐韻』其立切『集韻』『韻會』極入切『正韻』忌立切、𠀤琴入聲。『說文』逮也。从又从人。《徐曰》及、捕人也。會意。『廣韻』至也。
又『韻會』旁及、覃被也。『詩・大雅』覃及鬼方。『周頌』燕及皇天。
又『增韻』連累也。『左傳・隱六年』長惡不悛、從自及也。
又兼與之辭。『左傳・宣七年』與謀曰及。
又『後漢・黨錮傳』張儉等八人爲八及、言能導人追宗也。
又『韻補』叶極業切。『詩・大雅』征夫捷捷、每懷靡及。
- 部・劃數
- 弓部(一劃)
『玉篇』古文及字。註詳又部二畫。
- 部・劃數
- 辵部十劃
『玉篇』古文及字。註詳又部二畫。
異體字
或體。古文。
音訓
- 音
- キフ(漢) 〈『廣韻・入聲・緝・及』其立切〉[jí]{kap6}
- 訓
- およぶ。およぼす。および。
解字
白川
人と又の會意。又は手。後ろより手を延ばして、前の人に追ひ及ぶ形。
『説文解字』に逮ぶなり
と逮及、逮捕の意とする。古文第三字(𨕤)は逮を誤入してゐる。
彶は西周期の金文に見え、途上に相及ぶ意。
藤堂
人と又(手)の會意。逃げる人の背に追ふ人の手が屆いたさまを示す。その場、その時に恰度屆くの意を含む。
落合
會意。人の後ろに手の形の又があり、人を捕らへることを表してゐる。爪を用ゐた異體もある。追ひ附いて捕捉することが原義であり、轉じて日時が到達する意味などにも用ゐられる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- およぶ。追ひ附く。捕捉する。《合集》32815
己亥歷貞、三族王其令追召方、及于[⿰日千]。
- およぶ。特定の時間に至ること。當日を含む月次で主に使はれる。《合集》9608
貞、及今四月、雨。
- および。竝列を表す助辭。同じく竝列を表す眔と合はせて及眔とも言ふ。《合集》6573
甲戌卜㱿貞、雀及子商、徒基方、克。
- 地名またはその長。《合集》4741
令圃從及、余不橐。
漢字多功能字庫
甲骨文は人と又に從ひ、手で人を捕らふるの意と解く。春秋金文は人、又を重ねる。《郭店楚簡・唐虞之道》簡2はこの形を承け、人字の兩筆を分け、且つしたに飾筆を加へる。金文の秦公鎛は人を又の上に移した形で、戰國文字は多く秦公鎛と似てをり、あるいは人に飾筆を加へる。また金文はあるいは義符の止に從ひ、また彳に從ふ彶があり、及に同じ。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐ、追及、逮獲を指す。
- 《合集》490
乎(呼)追羌、及。
は、羌人を追ふやう命じ、捕らへたの意。 - 《合集》31798
弗及
は、追ひ附かざる意。
- 《合集》490
- 逮獲から引伸して到達の意。甲骨卜辭に「及某時」の語があり、及は到れりの意。《合集》12160
及今夕雨
は、今晩に到れば雨が降るであらうことをいふ。
金文での用義は次のとほり。
- 動詞に用ゐる。保卣
乙卯、王令保及殷東或(國)五侯。
白川靜は及は軍事の意味を含む用語で、ここでは巡視の義で、王は保に既に平定した東國の巡察を命ずの意。蔣大沂は、及は參與を指すとする。(補註: 全句の釋は飜譯できず省略) - 介詞に用ゐ、到つたことを指す。中山王鼎
隹(雖)有死辠(罪)、及參(三)世、亡不赦
は、死罪有りと雖も、三代に到るまで、赦免せざるはなし、の意。 - 動詞の後に置いて、向かふ方向を表す。中山王方壺
以陀(施)及子孫。
- 連詞に用ゐ、與や和(補註: 日本語では「と」あるいは「及び」)の意。王孫𢍓鐘
以樂楚王、者(諸)侯嘉賓及我父兄諸士。
戰國竹簡での用義は次のとほり。
- 連詞に用ゐる。《上博竹書一・緇衣》簡3
隹(惟)尹躳(躬)及康(湯),咸又(有)一惪(德)。
我伊尹自身と湯は、どちらも純一的道德を有す、の意(季旭昇)。 - 介詞「到」となす。《上博竹書二・民之父母》簡12
亡(無)聖(聲)之樂、它(施)及孫子。
屬性
- 及
- U+53CA
- JIS: 1-21-58
- 當用漢字・常用漢字
- 𢎜
- U+2239C
- 𨕤
- U+28564
- 乁
- U+4E41〔註1〕
- JIS X 0212: 16-16
- 乁
- U+2F802 (CJK互換)
- 乁︀
- U+4E41 U+FE00
- CJK COMPATIBILITY IDEOGRAPH-2F802
關聯字
- 乁
- 別字。古文(乁)とよく似た形に作る。