司 - 漢字私註
説文解字
臣司事於外者。从反后。凡司之屬皆从司。息兹切。
- 九・司部
説文解字注
臣司事於外者。外對君而言。君在內也。臣宣力四方在外。故从反后。『鄭風』邦之司直。《傳》曰、司、主也。凡主其事必伺察恐後。故古別無伺字。司卽伺字。《見部》曰、覹、司也。䙾、司人也。《人部》曰、伏、司也。𠊱司望也。《頁部》曰、䫔、司人也。《㹜部》曰、㺇、司也。豸下曰、欲有所司殺。皆卽今之伺字。『周禮〔地官〕師氏』、『〔同・同〕媒氏』、『〔同・秋官〕禁殺戮』之《注》皆云、司猶察也。俗又作覗。凡司其事者皆得曰有司。从反后。惟反后乃鄉后矣。息茲切。一部。凡司之屬皆从司。
康煕字典
- 部・劃數
- 口部・二劃
- 古文
- 𤔲
『唐韻』『集韻』息兹切『韻會』新兹切『正韻』相咨切、𠀤音思。『說文』臣司事於外者。『玉篇』主也。『書・大禹謨』兹用不犯于有司。又『高宗肜日』王司敬民。又『周官』欽乃攸司。『禮・曲禮』天子之五官、曰司徒、司馬、司空、司士、司𡨥、典司五衆。天子之六府、曰司土、司水、司木、司草、司器、司貨、典司六職。
又州名。『晉書・地理志』司州、漢司隸校尉所部。魏氏置司州。
又『廣韻』姓也。『左傳』鄭有司臣。又『正字通』司徒、司馬、司空、皆複姓。
又『集韻』『韻會』『正韻』𠀤相吏切、音笥。義同。『前漢・敘傳』民具爾瞻、困于二司。《註》師古曰、司、先字反。『王粲・酒賦』酒正膳夫冢宰是司、虔濯器用、敬滌蘊饎。
又與伺通。『前漢・高五王傳』魏勃常早掃齊相舍人門外、舍人怪之、以爲物而司之、得勃。又『灌夫傳』太后亦已使𠋫司。
又『容齋隨筆』司有入聲。如白居易詩、四十著緋軍司馬、男兒官職未蹉跎。一爲州司馬、三見歲重陽。武元衡詩、惟有白鬚張司馬、不言名利尚相從是也。○按司字有平、去二聲。白、武二詩所用、當係去聲讀作入聲者、無據、不可從。
音訓
- 音
- シ(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・之・思』息兹切〉[sī]{si1}
- 訓
- つかさどる。つかさ。
解字
白川
會意。口は祝禱を收める器の形。字の上部()はこれを啓くもの。そこに示される神意を伺ひ見ることを示す。神の啓示を受けることを司ることから、司の意となる。
『説文解字』に字を后の反文とし、臣にして事を外に司る者なり
とするが、卜文では后の初文は毓の形に記されてゐる。
司は恐らくもと祭祀に關する字で、卜辭に「王の廿祀」を、また「王の廿司」と記してゐるものがあり、祀と聲義の近い字であらう。
金文に、長官として政を司ることを「死𤔲」といひ、死は尸で尸主、また司る意があり、𤔲は治める意。𤔔は亂の初文で、架に掛けた絲のもつれ。それをの形のもので紛れを解く形。
司にまた「司ぐ」意があり、嗣の初文と見てよい。
藤堂
人と口の會意。上部は人字の變形。下部の口は穴。小さい穴から覗くことを表す。𥄶、覗(のぞく)や伺(うかがふ)、祠(神意をのぞきうかがふ→まつる)の原字。轉じて、司察の司(よく一事を見極める)の意となつた。
落合
初文は口を除く部分()。字源には諸説あるが、甲骨文では、同形、類似形が兵の異體などで斧で切る對象として用ゐられてをり、切つた木材と考へられる。また金文では杖の象形として用ゐられることもある。
甲骨文では祖先や祭祀に關聯して用ゐられてをり、既に祭祀を象徵する口を加へた字形が多い。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 祭祀名。この意では祠の初文とする説もある。《英藏》1893
己丑卜⿰帚帚、禦、司妣甲。
- 祖先名に用ゐられる字。司己や司癸などが見える。いづれも殷王ではない人物。《殷墟小屯中村南甲骨》478
癸亥卜、于司己侑、歲牛。
- 供物の呼稱。詳細不明。《殷墟花園莊東地甲骨》49
丁丑、歲祖乙黑牝、卯司二于祖丁。
- 示の假借字。
- 祀の假借字。
- 司母
- 王の后妃。正夫人は龔司や龔などと稱される。《合集》30370
其取司母、叀…。
- 司室
- 施設名。祭祀を行ふ房室か。《合集》13559
壬辰卜貞、鑿󠄀司室。
- 亡司
- 降雨の狀態を表す語。詳細不明。
漢字多功能字庫
甲骨文は口に從ふ。字形の釋義に未だ定論有らず。疑ふらくは本義は主管、主宰。
劉興隆は字を釋して、手を口に被せて大聲で話をするさまに象り、主管する事と解き、本義は主管であるとする。甲骨文を見るに、司の上部が手に從ふか否かは疑問が殘る、手(又)は多くが三指である。徐中舒は司の上部を柶(古代の食物を掬ひ取る禮器)の倒置に象るとする。倒柶を以て口を覆ひ、食べることと解く。氏族社會では食物は共同に分配し、食物の分配に責を負ふ人をまた司と稱する。季旭昇は、字の上部は權杖の形に象り、ゆゑに職司、主宰の義を有するとする。
この外、甲骨文の司と后の字形は近く相混じり、唐蘭は二字がもと同形であるとするが、調査を要する。
甲骨文では祀を表し、遍く先公先王を一巡り祀るを祀となす。また祠の如く讀み、先祖や鬼神の祭に食を獻ずることを指す(參・徐中舒)。
金文での用義は次のとほり。
- 用ゐて嗣となし、繼承を表す。弔向父簋
余小子司朕皇考
。『書・高宗肜日』王司敬民、罔非天胤
、『史記・殷本紀』作王嗣敬民
。 - 官職名に用ゐ、戰國金文に見える。司馬、司寇など。西周金文では𤔲馬、𤔲寇に作る。
- 假借して事となす。揚簋
眔𤔲工司
、同器の別の銘文にまた眔𤔲工事
に作る(參・金文形義通解)。
屬性
- 司
- U+53F8
- JIS: 1-27-42
- 當用漢字・常用漢字
關聯字
司に從ふ字を漢字私註部別一覽・口部・司枝に蒐める。