亂 - 漢字私註
説文解字
治也。从乙、乙、治之也。从𤔔。
- 十四・乙部
説文解字注
不治也。从乙𤔔。乙、治之也。
康煕字典
- 部・劃數
- 乙部十二劃
- 古文
- 𠧎
- 𠧏
- 𠮗
『唐韻』郞段切『集韻』『韻會』『正韻』盧玩切、𠀤鑾去聲。紊也。『爾雅・釋詁』亂、治也。『說文』从乙。乙、治之也。『玉篇』理也。『書・臯陶謨』亂而敬。『孔傳』有治而能敬謹。又『盤庚』亂越我家。『梓材』厥亂爲民。『洛誥』四方迪亂、亂爲四輔。『立政』丕乃俾亂之類、皆訓治也。
又不治也、凡事物不理皆曰亂。『爾雅・釋訓』夢夢、訰訰、亂也。『書・周官』制治於未亂。『周禮・地官』司虣掌憲巿之禁令、禁其鬥囂與其虣亂。
又兵寇也。
又事未定之時。『禮・檀弓』仲梁子曰、夫婦方亂。《註》喪次男女哭位未成列也。
又樂之卒章曰亂。『論語』關雎之亂。又古賦末皆有亂、總一賦之終、發其要指也。
又『爾雅・釋水』水正絕流曰亂。《註》橫流而濟之也。『書・禹貢』亂于河。『詩・大雅』涉渭爲亂。
又『韻補』叶力眷切、音戀。『揚雄・交州牧箴』周公攝胙、白雉自獻。昭王陵遲、周室昏亂。
又叶力敬切、夌去聲。『揚戲李正方贊』不協不和、忘節言亂。疾終惜始、實惟厥性。
- 部・劃數
- 十部十七劃
『集韻』亂古作𠧎。註詳乙部十二畫。
- 部・劃數
- 十部十九劃
『集韻』亂古作𠧏。註詳乙部十二畫。
- 部・劃數
- 又部二十二劃
『集韻』亂古作𠮗。註詳乙部十二畫。
- 部・劃數
- 乙部六劃
『正字通』俗亂字。
音訓
- 音
- ラン(漢、呉) ロン(唐) 〈『廣韻・去聲・換・亂』郎段切〉
- 訓
- みだす。みだれる。みだれ。まよふ。をさめる。
解字
白川
𤔔と乙の會意。𤔔は絲枷の上下に手を加へてゐる形で、縺れた糸、即ち亂れる意。乙は骨べら。これで縺れを解くので、亂はをさめる意。「亂む」と讀むべき字である。字形からいへば𤔔が亂れる、亂が治める意の字。
のち亂に𤔔の訓を加へ、「亂る」「治む」の兩義があり、反訓の字とする説を生じたが、一字が同字に正反の二訓を持つことはない。受に授受、行に去來の二義があるのは、行爲者の立場を替へての訓で、矛盾的に兩義を生ずるのではない。
『楚辭』形式の作品に多く見える「亂辭」は紛亂を解く辭の意で、一篇の結束とする。
金文の《牧𣪘》廼ち𤔔るること多し
、また『書・臯陶謨』(上揭)(亂にして敬)は治世の才をいふ。この𤔔、亂はそれぞれ辭の本義の用法。
亂はのち多く紛亂の意に用ゐる。
藤堂
會意。偏は絲を上下から手で引つ張るさま。旁は乙印で押さへる意。縺れた糸を兩手であしらふさまを示し、縺れ、縺れに手を加へるなどの意を表す。をさめるの意は後者の轉義に過ぎない。
漢字多功能字庫
金文は𤔔につくり、亂の初文。爪と、幺と、工を橫に倒した形の飾筆と、又に從ふ。爪、又は手の形。あるいは𢆶に從ふ。幺、𢆶は絹絲の形を象る。上下の兩手で絲絮(絹綿、絹絲の纖維)を整理する形を象り、本義は絲を治めること。
絹絲が整理される前は亂れてをり、故に亂字を分化する。絹絲を治めることから治めるの義が出て來て、𤔲字(典籍では司につくる)を分化する。𤔔は亂、𤔲の初文。金文はあるいは加へて四口(㗊)に從ひ、㗊は亂の聲符(陳英傑、孟蓬生)。郭沫若は、絲を治めるときの音が囂々と騷がしいからであるといふ。
金文での用義は次のとほり。
- 治理を表す。五年召白虎簋(五年琱生簋)
余弗敢𤔔
は、この案を處理したくないことをいふ(參・林澐)。 - 讀んで靼となし、柔軟な皮革を表す。番生簋蓋
朱𤔔
(參・郭沫若)。
屬性
- 亂
- U+4E82
- JIS: 1-48-12
- 𠧎
- U+209CE
- 𠧏
- U+209CF
- 𠮗
- U+20B97
- 乱
- U+4E71
- JIS: 1-45-80
- 當用漢字・常用漢字
関聯字
亂聲の字
- 薍