允 - 漢字私註
説文解字
儿部允字條
信也。从儿㠯聲。樂準切。
- 八・儿部
説文解字注
信也。『釋詁』『毛傳』皆曰、允、信也。『詩』仲允、漢表作中術。从㠯儿。大徐作从儿㠯聲。㠯非聲也。今依『韵會』所據小徐本。㠯、用也。任賢勿貳是曰允。此會意字。余準切。十三部。
夲部𡴞字條
進也。从𠦍从屮、允聲。『易』曰、𡴞升大吉。
- 十・夲部
説文解字注
進也。『㫃部』旞下曰、導車所載全羽以爲允。句允、進也。許意謂卽𡴞之省也。从夲。从屮。屮者、進之意也。允聲。余準切。十三部。『易』曰、𡴞升大吉。升初六爻辭。鄭曰、升、上也。荀爽云、謂一體相隨。允然俱升。九家易曰、謂初失正。乃與二陽允然合志俱升。允然者、升之皃。不訓信。葢古本作𡴞升也。
康煕字典
- 部・劃數
- 儿部・二劃
- 古文
- 㽙
『唐韻』余準切『集韻』『韻會』庾準切、𠀤音尹。『說文』允、信也。从㠯人。《徐曰》儿、仁人也、故爲信。
又『爾雅・釋詁』允、信也。《疏》謂誠實不欺也。按【方言】云、徐魯之閒曰允。『書・君奭』公曰、告汝朕允。
又『玉篇』允、當也。
又『增韻』肯也。
又通作盾。中盾、官名。『前漢・班固敘傳』數遣中盾、請問近臣。《註》師古曰、盾讀曰允。
又『正韻』羽敏切、音隕。義同。
又『集韻』余專切、音鉛。『前漢・地理志』金城郡允吾。《註》應劭曰、允吾、音鈆牙。
- 部・劃數
- 田部四劃
『字彙補』古文允字。註詳儿部二畫。
- 部・劃數
- 屮部九劃
『集韻』余準切。同允。本作𡴞。引『易・升卦』𡴞升大吉。
音訓
- 音
- イン(漢、呉) 〈『廣韻・上聲・準・尹』余準切〉[yǐn]{wan5}
- 訓
- ゆるす(允許)。まこと。あたる。
藤堂、KO字源は字音假名遣をインとするが、白川はヰンとする。なほ同音字の尹についてはいづれもヰンとする。
解字
白川
象形。
『説文解字』に信なり
と訓じ、㠯聲とするが、後ろ手にした人の形に象る。
虜囚。𡴞はこれに縲紲(罪人の繩)を加へた形。
金文に見える⿺吮糸は訊の初形で、辮髮の虜囚を後ろ手にし、盟誓の器の前で訊問し、まことの供述を得ること。允、𡴞、⿺吮糸は關聯を持つ字。
藤堂
儿(人體)と柔らかくくねつた形の會意。なごやかな姿をした人を示す。
落合
象形。甲骨文は、手を後ろに回した人の姿。但し甲骨文には原義での用例がない。甲骨文の異體字には誤つて「頭部が大きな人の象形」になつた形が多く、殷代後期の段階で旣に字源の誤解があつたと思はれる。
後ろ手に縛られた形とする説もあるが、子供を背負ふ形の保の異體にも見られるので、縛られた形とは考へられない。甲骨文では後ろ手に縛られた形は訊の初文などに使はれてゐる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- まことに。本當に。實際に。副詞であり假借の用法。驗辭での使用例が多い。《合集》12922・末尾驗辭
辛亥卜、今日、雨。允雨。
- 地名またはその長。領主は允子とも呼ばれる。《合集》12311
貞、令⿳匕凶十允子荷。
字形は古文で、以の古字である㠯と、人から變はつた儿に從ふ形になり、更に隸書で㠯が略體の厶になつた。
漢字多功能字庫
甲骨文は人に從ひ、頭部を強調した人に象り、うなづき許す意を表す。本義は許すこと。後期金文は上部が㠯に變はり、㠯は以、允の聲符となす。
允の本義はうなづき應へること、引伸して誠信の意。『書・舜典』命汝作納言、夙夜出納朕命、惟允。
孔安國傳納言、喉舌之官、聽下言納於上、受上言宣於下、必以信。
孔傳は「納言」は官名であると指摘する。命じて汝を納言となし、朝夕我の命令を傳達し、誠信あるを要す、の意。
金文は後に下に女の形を加へる。女形は止の形を誤つたもの。この種の字形は後に夋字を分化する。
甲骨文では果然(思つたとほり)、本當に、の意を表し、驗辭において多用する。《合集》29955貞、今夕雨。允雨。
この辭は今晩雨が降るか貞卜し、晩には果たして雨が降つた。
金文での用義は次のとほり。
- 信、誠を表す。
- 班簋
允才(哉)
。「允哉」は「誠然」(誠に、實に、全く)に相當する。 - 中山王方壺
於(嗚)虖(呼)、允哉若言。
言ふ所は眞實であり虛に非ず、の意。
- 班簋
- 以の通假字となす。㠱伯盨
允(以)𨒌(征)允(以)行
は、(この青銅器を)隨行に用ゐる(?)の意。
戰國竹簡での用義は次のとほり。
- 人から信頼を得ることを表す。《郭店簡.成之聞之》簡25-26
《詔命》曰、允帀(師)淒(濟)惪(德)。此言也、言信於眾之可以淒(濟)惪(德)也。
《詔命》に「衆に信を得て道德を成就する」と言ひ、この句は、民衆に信を得て道德を成就できる、の意。 - 人を信用させることを表す。《郭店簡・成之聞之》簡36
君子曰、從允懌(釋)過、則先者余(除)、來者信。
君子は、誠より出發して過ちを寛大に許し、以前の過ちを除去してはじめて、今後人を信用させることができる、と言ふ、の意(劉釗)。 - 果然(思つたとほり)、本當に、の意を表す。
- 《清華簡一・保訓》簡3
今朕疾允病
。 - 《清華簡一・祭公》簡9
公懋拜手稽首、曰、允哉。
- 《清華簡一・保訓》簡3
屬性
- 允
- U+5141
- JIS: 1-16-84
- 人名用漢字
- 㽙
- U+3F59
- 𡴞
- U+21D1E
關聯字
允に從ふ字を漢字私註部別一覽・人部・允枝に蒐める。