倉 - 漢字私註
説文解字
榖藏也。倉黃取而藏之、故謂之倉。从食省、囗象倉形。凡倉之屬皆从倉。七岡切。
- 五・倉部
奇字倉。
説文解字注
穀藏也。藏當作臧。臧、善也。引伸之義、善而存之亦曰臧。臧之之府亦曰臧。俗皆作藏。分平去二音。榖臧者、謂榖所臧之處也。《广部》曰、府、文書藏。庫、兵車藏。廥、芻稾藏。今音皆徂浪切。蒼黃取而臧之。蒼、舊作倉。今正。蒼黃者、匆遽之意。刈穫貴速也。故謂之倉。蒼倉㬪韵。从𠊊省、囗象倉形。七岡切。十部。凡倉之屬皆从倉。
奇字倉。葢从古文巨。
康煕字典
- 部・劃數
- 人部・八劃
- 古文
- 仺
『唐韻』七岡切『集韻』千岡切、𠀤音蒼。『說文』穀藏也。『國策註』圓曰囷、方曰倉。『詩・小雅』乃求千斯倉。『禮・月令』季秋、命冢宰舉五穀之要藏、帝籍之、收于神倉。
又官名。『周禮・地官』倉人掌粟入之藏。
又倉卒、悤遽貌。『杜甫・送鄭虔詩』倉皇已就長途往。
又姓。周倉葛。
又與蒼通。『禮・月令』駕倉龍。『前漢・蕭望之傳』倉頭廬兒。
又與臓通。五倉、五臟也。『前漢・谷永傳』成帝曰、化色五倉之術、皆左道以欺妄。
又與滄通。『揚雄・甘泉賦』東燭倉海。
又與桑通。亢倉子、亦作庚桑子。
又『集韻』楚亮切、借作愴。『詩・大雅』倉兄塡兮。
- 部・劃數
- 人部・四劃
『集韻』倉古作仺。註詳八畫。
異體字
簡体字。
音訓・用義
- 音
- サウ(漢、呉) 〈『廣韻・下平聲・唐・倉』七岡切〉[cāng]{cong1}
- 訓
- くら
倉卒、倉黃(あるいは倉皇、倉惶)は、にはか、あわてるの意。
解字
白川
象形。穀物などを收める廩倉の形に象る。
『説文解字』に穀の藏なり。倉黃として取りて之れを藏む。故に之れを倉と謂ふ。
とあり、倉黃、倉卒の意(補註: にはか、あわてる)を以て解するが、倉は藏とその聲が近い。また字形について食の省に從ふ。口は倉の形に象る。
とするが、食は𣪘(食器)の形に從ふもので、倉とは關係がない。
字は器上に梱包した穀物を置き、これを覆蓋する形。のち高床の建物となつた。
『周禮・考工記・匠人・注』に囷は圜倉なり
とあり、倉を方形の穀倉と解するものであらう。
藤堂
食の略體と口印(入れる所)の會意。食糧となる新穀や青草を入れる納屋。
轉じて、青草の青い色の意となり、蒼(青草の色)、滄(青い水)、愴(青ざめる)などの言葉を派生する。
また、創(さつと急に切る)に通じて、急切な動作、慌てたさまを意味し、乍(たちまち)と同系の言葉を表すときにも用ゐる。
落合
倉庫を表現した會意字で、戶は倉庫の扉、今は屋根、口は土臺を表してゐる。甲骨文の異體字には、戶を、門に替へたもの、聲符の爿に替へた形聲字、收納品として卣に替へたもの、などがある。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 施設名。倉庫であらう。《屯南》3731
于西倉…。
- 地名またはその長。領主は倉侯とも呼ばれる。《合補》496
己…古貞、遘見倉侯。
- 倉侯豹
- 人名。第一期(武丁代)。倉の領主であり、倉侯虎とも呼ばれる。《合補》495
丙戌卜亘貞、倉侯豹其禦。
漢字多功能字庫
甲骨文は合と戶あるいは門に從ひ、穀物庫に象る。上部(亼)は屋根に象り、下部(口)は穀物を入れる坑に象り、中は倉庫の門(許慎、孫海波、沈培、季旭昇、馬如森、張世超、金國泰、等)。倉は後に廣く物資を收藏する建築物を指す。『説文解字』倉、榖藏也。(後略)
《段注》穀藏者、謂穀所藏之處。
甲骨文では疑ふらくは本義に用ゐ、穀物を藏する倉を表す。《屯》3731于西倉
。
金文での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐ、倉廩府庫を表す。宜陽右倉鼎
宜陽右倉
。『國語・越語』下府倉實、民眾殷。
韋昭注貨財曰府、米粟曰倉。
- 用ゐて象聲詞(擬聲語)となす。
- 㝬鐘
倉倉悤悤
は「鎗鎗鏓鏓」のことで、鐘の音の形容。 - 者減鐘
龢龢倉倉……聞于四旁(方)。
鐘の音が調和して耳を悦ばせ、四方の人みんなに能く聞こえる、の意。
- 㝬鐘
- 姓氏や人名に用ゐる。『通志・氏族略』
倉氏、黃帝史官倉頡之後、或言古有世掌倉庾者、各以為氏。
弔倉父盨弔(叔)倉父乍(作)寶盨。
戰國竹簡での用義は次のとほり。
- 人名に用ゐる。《上博竹書二・容成氏》
倉頡
。 - 長沙子彈庫《楚帛書》は倉を通假して相となす。『爾雅・釋天』にある月名の相のことで、七月を指す。『爾雅・釋天』
七月為相
。 - 『詩・小雅・楚茨』
我倉既盈
を『太平御覽』卷35に引いて倉を箱に作る(參: 何琳儀、王輝)。
屬性
- 倉
- U+5009
- JIS: 1-33-50
- 當用漢字・常用漢字
- 仺
- U+4EFA
- 仓
- U+4ED3
關聯字
倉に從ふ字を漢字私註部別一覽・亼部・倉枝に蒐める。