敕 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
誡也。《言部》曰「誡、敕也。」二字互訓。『小雅毛傳』曰、敕、固也。此謂敕卽飭之假借。〔《力部》〕飭、致堅也。後人用勑爲敕。《力部》勑、勞也。洛代切。又或從力作勅。
一曰、二字今補、臿地曰敕。此別一義。凡植物地中謂之菑、或作倳事剚𨧫、側吏初吏二切。敕與初吏一切正同部雙聲也。臿者今之插字。漢人衹作臿。
从攴束。各本有「聲」、誤、今刪。攴而收束之。二義皆於此會意。非束聲也。恥力切。一部。
康煕字典
- 部・劃數
- 攴部・七劃
『廣韻』恥力切『集韻』『韻會』蓄力切、𠀤音勅。〔音1〕『說文』試也。『爾雅・釋詁』敕勞。《註》敕者、相約敕也。亦爲勞苦。『釋名』敕、飭也、使自警飭、不敢廢慢也。『史記・樂書』余每讀虞書、至於君臣相敕。『後漢・安帝紀』能敕身率下。『韓非子・主道篇』賢者敕其才、君因而任之。
又『後漢・光武紀註』漢制度曰、帝之下書有四。一曰策書、二曰制書、三曰詔書、四曰誡敕。誡敕者、謂敕刺史太守。『正字通』宋敕或用之於獎諭、非敕初意。明制、差遣諸臣、予敕行事、備載職守、申以勉詞。凡褒嘉責讓、𠀤用敕、詞皆散文。六品以下官贈封稱敕命、始用四六。
又『博雅』理也、謹也、語也、進也。『小爾雅』正也。『廣韻』固也、急也。
又『說文』臿地曰敕。
- 部・劃數
- 力部・七劃
『集韻』蓄力切、音敕。誡也。
異體字
『集韻・平聲四・矦第十九』所載。
音訓義
- 音
- チョク(漢) チキ(呉)⦅一⦆
- ソウ(推)⦅二⦆
- 訓
- いましめる⦅一⦆
- みことのり⦅一⦆
- 官話
- chì⦅一⦆
- 粤語
- cik1⦅一⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・入聲・職・敕』恥力切
- 『集韻・入聲下・職第二十四・敕』蓄力切
- 『五音集韻・入聲卷第十五・職第六・徹三敕』恥力切
- 聲母
- 徹(舌上音・次清)
- 等呼
- 三
- 官話
- chì
- 粤語
- cik1
- 日本語音
- チョク(漢)
- チキ(呉)
- 訓
- いましめる
- みことのり
- 義
- 戒める。敕戒。
- みことのり。詔敕。
- 整へる。をさめる。
- 釋
- 『廣韻』
敕: 誡也、正也、固也、勞也、理也、書也、急也。今相承用勑、勑本音賚。恥力切。十四。 勅: 上同。
- 『集韻』
敕勅勑: 蓄力切。『說文』「誠也。臿地曰敕。从攴束聲。」古从力。或作勑、本音賚、世以為敕字行之久矣。文十九。
- 『康煕字典』上揭。
⦅二⦆
- 反切
- 『集韻・平聲四・矦第十九・涑』先侯切
- 『五音集韻・下平聲卷第六・侯第九・心一涑』速侯切
- 聲母
- 心(齒頭音・全清)
- 等呼
- 一
- 日本語音
- ソウ(推)
- 釋
- 『集韻』
𭣴: 攴也。
- 補註
- 𭣯(敇; 『說文』
擊馬也。
)の譌の可能性もあるか。
解字
白川
勅は束と力の會意。束は禾や木の類を束ねる意。力は耒(すき)の象形。敕の俗體とされるが、勅と敕はもと別の字であり、金文にその兩系の字がある。
『說文』敕字條に誡むるなり。地に臿すを敕と曰ふ。攴に從ひ、束聲。
とする。「地に臿す」とは、朿の字義と誤るものであらう。
束は束薪。これを毆つて揃へる意で、金文の字形は多く柬に從ふ。柬は橐の中に物のある形で、敕とはものを整へることをいふ。整は敕に從ふ字。金文に「敏誎」「誎罰」の語があり、誎はまた敕に作る。《秦公𣪘》に萬民を是れ敕す
といふ。
勅は金文の人名に見えるのみで、その用義を知り難い。力(耒)を清める儀禮を意味する字のやうである。
勅はのち敕字の義に用ゐる。いま勅、敕を同一の字として扱ふ。
藤堂
金文は柬(選り分ける)と攴(動詞の記號)の會意。篆文は束(木を引き締めて束ねるさま)と攴または力の會意。力を込めてぐいと締めること。臣下が弛まないやうに引き締める天子の戒告を敕といひ、轉じてみことのりの意となる。
落合
會意。甲骨文は束と殳に從ふ。後代には戒めることを意味して用ゐられ、更には敕命の意になつたが、甲骨文には地名の用例しか見られず、原義は明らかではない。字形通りに解釋すれば、絲束を打つ樣子、あるいは加工する樣子であらう。なほ束を聲符または亦聲符とする説もあるが、上古音では聲母、韻母ともに異なつてをり、字音の繼承關係は明らかではない。
また橐の初文に從ふ字があり、(『甲骨文字辞典』では)同字と看做す。
甲骨文では地名またはその長を指す。《殷墟小屯中村南甲骨》16叀敕田、亡災。
字形は古文で殳を攴に替へた形となつた。
漢字多功能字庫
金文は攴と柬に從ふ。構形初義不明。張世超らは柬を聲符とする。柬は熏の省體で、古韻は文部に屬し、敕は職部に屬し、之職蒸と微物文類は通じ轉ず。柬をあるいは束に作り(秦公鎛)、小篆の形に同じ。
金文では治理を表す。秦公簋萬民是敕
では、一説に告誡(警告する、訓誡する)を表すとされる。
屬性
- 敕
- U+6555
- JIS: 1-58-37
- 勅
- U+52C5
- JIS: 1-36-28
- 當用漢字・常用漢字
- 𭣴
- U+2D8F4