諺 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
傳言也。諺傳曡韵。傳言者古語也。古字從十口、識前言。凡經傳所偁之諺。無非前代故訓。而宋人作注乃以俗語俗諭當之、誤矣。玄應引此下有謂傳世常言也。葢庾儼黙注。
从言彥聲。魚變切。十四部。按此與『尚書〔無逸〕』「乃逸乃喭」『論語〔先進〕』「由也喭」皆訓𠯘喭者各字。衞包改『尚書』之喭爲諺、大誤。
康煕字典
- 部・劃數
- 言部・九劃
- 古文
- 𠷗
『唐韻』魚變切『集韻』魚戰切『韻會』疑戰切、𠀤音彥。〔音1〕『說文』傳言也。『廣韻』俗言也。『書・無逸』乃逸乃諺。《傳》俚語曰諺。『左傳・昭元年』諺所謂老將知而耄及之。
又與唁喭𠀤同。『文心雕龍』諺者、直語也。喪言亦不及文、故弔亦稱諺。『新論・正賞篇』子游裼裘而諺、曾參指揮而哂。『正字通』按諺通作喭。弔唁、經皆從唁、不必借諺。喭、『新論』作諺、偶譌誤耳。
又『集韻』魚旰切『正韻』魚幹切、𠀤音岸。〔音2〕『類篇』䛀諺、自矜也。『增韻』畔喭、剛猛也。『韻會』叛諺、不恭也。或作喭。引『論語・註』子路失於畔喭。正義曰、舊註作𠯘喭。失言也。言子路性行剛彊、常𠯘喭失於禮容也。
- 部・劃數
- 口部・九劃
『集韻』諺古作𠷗。註詳言部九畫。
異體字
簡体字。
音訓義
- 音
- ゲン(漢)(呉)⦅一⦆
- ガン⦅二⦆
- 訓
- ことわざ⦅一⦆
- 官話
- yàn⦅一⦆
- 粤語
- jin6⦅一⦆
- ngon6⦅二⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・去聲・線・彦』魚變切
- 『集韻・去聲下・綫第三十三・彦』魚戰切
- 『五音集韻・去聲卷第十一・線第十一・疑三彦』魚變切
- 聲母
- 疑(牙音・次濁)
- 開合
- 開
- 等呼
- (重紐)三
- 推定中古音
- ŋɪɛn
- 官話
- yàn
- 粤語
- jin6
- 日本語音
- ゲン(漢)(呉)
- 訓
- ことわざ
- 義
- ことわざ。諺語。俚諺。俗諺。
- 唁と通じ、弔ふ、弔問する。
- 喭と通じ、粗野。
- 釋
- 『廣韻』
諺: 俗言。
- 『集韻』
諺𠷗: 『說文』傳言也。古作𠷗。
- 『康煕字典』上揭。
⦅二⦆
- 反切
- 『集韻・去上・翰・岸』魚旰切
- 『五音集韻・去聲卷第十一・翰第八・疑一岸』五旰切
- 聲母
- 疑(牙音・次濁)
- 開合
- 開
- 等呼
- 一
- 粤語
- ngon6
- 日本語音
- ガン: KO字源に據る。
- 義
- 䛀諺は自ら矜る意。
- 畔諺は剛猛なる意。
- 叛諺は、恭しからざる意、禮容の無い意。
- 釋
- 『集韻』
諺: 䛀諺、自矜。
- 『康煕字典』上揭。
解字
白川
形聲。聲符は彥。
『說文』に傳言なり
とあり、傳諺は疊韻の訓。
『國語・越語下・注』に諺は俗の善語なり
とあり、本邦の「ことわざ」に當たる。
『常陸風土記』に國俗の諺
として筑波岳に黑雲挂り、衣袖漬の國と云ふ
のやうな序詞、枕詞的な語を諺としてゐるが、それはもと地靈に呼び掛けるときの呪詞であつた。『周禮・地官・土訓』『周禮・地官・誦訓』は、そのやうな呪詞を掌るものであつたと思はれるが、その「傳言」の類は殘されてゐない。ただ『詩』の興と呼ばれる發想のうちに、その類のものがあると考へられる。
藤堂
言と音符彥の會意兼形聲。彥は、文(模樣)と彡(模樣)と音符厂の會意兼形聲字で、額が厂型にすつきりと目立つ顏のこと。形よく角張つたといふ基本義を持つ。諺は、恰好良い言葉。形よく道理が立つた言葉。轉じて、傳承されたことわざをいふ。
漢語多功能字庫
金文、戰國文字は、上下の構造で、言に從ひ彥省聲。小篆は左右の構造で、言に從ひ彥聲。本義は、古語、諺語。『說文』諺、傳言也。(後略)
《段注》傳言者、古語也。
- 『左傳・桓公十年』
周諺有之「匹夫無罪、懷璧其罪。」
- 『史記・秦始皇本紀』
野諺曰「前事之不忘、後事之師也。」
喭と通じて粗俗を表す。
- 『尚書・無逸』
厥子乃不知稼穡之艱難、乃逸、乃諺。
孔穎達疏諺、欺誕不恭之貌。
- 『後漢書・卓魯魏劉列傳』
(劉)寬簡略嗜酒、不好盥浴、京師以為諺。
屬性
- 諺
- U+8AFA
- JIS: 1-24-33
- 人名用漢字
- 𠷗
- U+20DD7
- 谚
- U+8C1A