何 - 漢字私註
説文解字
儋也。从人可聲。
- 註に
臣鉉等曰、儋何、即負何也。借爲誰何之何。今俗别作擔荷、非是。
といふ。 - 八・人部
説文解字注
儋也。何俗作荷。猶佗之俗作駝。儋之俗作擔也。『〔詩〕商頌〔玄鳥〕』百祿是何。『〔同・同・長發〕』何天之休。何天之龍。《傳》曰、何、任也。《箋》云、謂擔負。『周易〔大畜〕』何天之衢。虞翻曰、何、當也。『〔同・噬嗑〕』『〔同・繫辭下〕』何校滅耳。王肅云、何、荷擔也。又『詩〔曹風・候人〕』何戈與祋。『〔同・小雅・無羊〕』何蓑何笠。《傳》皆云、揭也。揭者、舉也。戈祋手舉之。蓑笠身舉之。皆擔義之引伸也。凡經曲作荷者皆後人所竄改。一曰誰也。誰何孰三字皆問䛐。从人可聲。今音擔何則胡可切。餘義胡歌切。古音平上不甚分也。十七部。按今義何者、辭也。問也。今義行而古義廢矣。亦借爲呵。
康煕字典
- 部・劃數
- 人部・五劃
『唐韻』胡歌切『集韻』『韻會』『正韻』寒歌切、𠀤賀平聲。曷也、奚也、孰也、詰詞也。『書・臯陶謨』禹曰何。『詩・小雅』夜如何其。
又誰何。猶言莫敢如何也。『賈誼・過秦論』𨻰利兵而誰何。
又未多時曰無何、亦曰無幾何。『史記・曹參傳』居無何、使者果召參。又『前漢・袁盎傳』南方𤰞濕、君能日飮、無何、可免禍也。《註》無何、言更無餘事也。
又『南史・西域傳』西域呼帽爲突何。
又『古今樂錄』羊無夷伊那何、皆曲調之遺聲。
又國名。『隋書』西域有何國。
又姓。
又娙何、漢女官名、秩比二千石。
又『集韻』『正韻』𠀤下可切、賀上聲。同荷。儋也、負也。『易・噬嗑』何校滅耳。『詩・曹風』何戈與祋。『小雅』何簑何笠。『商頌』百祿是何。
又通訶。『前漢・賈誼傳』大譴大何。《註》譴、責也。何、詰問也。
音訓
- 音
- (1) カ(漢) 〈『廣韻・下平聲・歌・何』胡歌切〉[hé]{ho4}
- (2) カ(漢) 〈『廣韻・上聲・哿・荷』胡可切〉[hè]{ho6}
- 訓
- (1) なに。なんぞ。いづれ。いづこ。
- (2) になふ
解字
古くは人が肩に戈、鍬、あるいは棒を荷ふ形。後に口を加へた字形を可聲と解する。
疑問詞に轉用したため、原義を荷で表す。
白川
形聲。聲符は可。
『説文解字』に儋ふなり
とあり、荷擔する意。
『詩・商頌・玄鳥』(上揭)百祿を是れ何ふ
、『詩・商頌・長發』(上揭)天の休を何ふ
とあり、古くは何をその義に用ゐた。
金文に𣄰に作る形があり、顧みて誰何する形。
のち、兩字が混じて一つとなつたものであらう。
藤堂
象形。人が肩に荷を擔ぐさまを描いたもので、後世の負荷の荷の原字。
しかし普通は、一喝するの喝と同系の言葉に當て、喉を掠らせてはあつと怒鳴つて、ゆく人を押し止めるの意に用ゐる。「誰何する」といふ用例が原義に近い。轉じて、廣く相手に尋問する言葉となつた。
落合
甲骨文は人が荷物を背負つた形で、初文は口を除いた部分。背負つてゐる物は武器の戈。戈亦聲と推定される。金文の圖象記號では、より具體的に戈の形狀が表現されてゐる。
甲骨文には日を加へた字形があり、恐らく日中の勞働または行軍を表してゐる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 地名またはその長。第三期(康丁武乙代)には貞人名(何組)としても見える。また殷金文の圖象記號にも見える。《甲骨拼合集》293
貞、勿何今六月入。
- 動詞。詳細不明。《殷墟花園莊東地甲骨》320
何于丁、逆。
西周代以降に口を加へた何の形になつたため、『説文解字』は可聲の形聲字とするが、嚴密には字源とは異なる。
後代には疑問を表す助辭として使はれるやうになつた。
荷は篆文で作られた字形で、艸を意符とし、原義は蓮の葉であるが、これを假借して何の原義の「になふ」の意味に用ゐた。
漢字多功能字庫
甲骨文は人に從ひ、人が肩の上に鍬あるいは天秤棒を擔ぐ形に象る。本義は擔荷、負荷。
金文はあるいは人と戈に從ふ。戈は何の聲符。戈、何は上古音でいづれも歌部の字で、聲母はいづれも牙音。後期金文は戈に從はず可に從ふ。可もまた何の聲符。
甲骨文、金文では人名に用ゐる。
戰國竹簡での用義は次のとほり。
- 疑問の代詞に用ゐる。《上博楚竹書三・周易》簡23
上九、何? 天之[丘木](衢)、鄉(亨)。
- 通讀して苛となし、煩苛を表す。《上博楚竹書五・鮑叔牙與隰朋之諫》簡7
至亞(惡)何(苛)、而上不時使。
このほか、可を通讀して何となす。《上博楚竹書一・孔子詩論》簡4丌(其)甬(用)心也𨟻(將)可(何)女(如)?
何は本來負荷を表す。後に何を姓氏や疑問代詞などに借用し、故に荷字で何の本義を表示する。荷は本來は荷花(蓮の花)の荷を表す字。
屬性
- 何
- U+4F55
- JIS: 1-18-31
- 當用漢字・常用漢字