者 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
別事䛐也。言主於別事、則言者以別之。『喪服經』「斬衰裳、苴絰杖、絞帶、冠繩纓、菅屨者。」《注》曰、者者、明爲下出也。此別事之例。凡俗語云「者箇」、「者般」、「者回」皆取別事之意。不知何時以迎這之這代之。這、魚戰切。
从白聲。古文旅。《㫃部》曰、古文旅。者之偏旁乃全不類。轉寫之過也。之也切。古音在五部。讀如煑。
康煕字典
- 部・劃數
- 老部・四劃
『廣韻』章也切『集韻』『韻會』『正韻』止野切、𠀤音赭。『說文』別事詞也。从白聲。、古文旅字。『韻會』今作者。『玉篇』語助也。『增韻』又卽物之辭、如彼者、如此者。『易・乾卦』元者、善之長也。
又『增韻』又此也。凡稱此箇爲者箇是也。今俗多用這字、這乃魚戰切、迎也。
又『韻補』叶掌與切。『史記・秦始皇紀』人迹所至、無不臣者。《註》索隱曰、者、協音渚。『楚辭・九歌』搴芳洲兮杜若、將以遺乎遠者。時不可以驟得、聊逍遙兮容與。『韻會』者、古文渚字、故从旅聲。後人以者添水作渚、以別者也之者、故者但爲語助。
又叶阻可切。『繆襲・挽歌』形容稍銷歇、齒髮行當墮。自古皆有然、誰能離此者。
又叶之戈切。『韓愈・盧氏墓銘』命不侔身、兹其奈何。刻名墓石、以告觀者。
又『韻會』【說文】从白、當作者、今作者。○按【說文】在白部、今从【正字通】倂入。
廣韻
- 卷・韻・小韻
- 上聲・馬・者
- 反切
- 章也切
語助。
章也切。三。
音訓義
- 音
- シャ(漢)(呉)⦅一⦆
- ト(推)⦅二⦆
- 訓
- もの⦅一⦆
- 官話
- zhě⦅一⦆
- 粤語
- ze2⦅一⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・上聲・馬・者』章也切〔廣韻1〕
- 『集韻・上聲下・馬第三十五・者』止野切
- 『五音集韻・上聲卷第八・馬第十七・照・三者』章也切
- 聲母
- 照(正齒音・全清)
- 等呼
- 三
- 官話
- zhě
- 粤語
- ze2
- 日本語音
- シャ(漢)(呉)
- 訓
- もの
- 義
- 人や事物を特定する。〜する人、事、物。〜である人、事、物。『老子・三十三』
知人者智、自知者明。
- 〜は。〜とは。『禮記・表記』
仁者、天下之表也。
- 數詞の後に用ゐ、先述の複數の人、事、物を指す。『孟子・梁惠王下』
老而無妻曰鰥、老而無夫曰寡、老而無子曰獨、幼而無父曰孤。此四者、天下之窮民而無告者。
- これ。この。這に相當。藤堂曰く、唐末から宋、元にかけての口語。者箇(這箇: これ、この)、者回(這回; 今度、今回)、者般(這般; このやうな、このやうに)、者流(この流派)、者番(這番、這次; 今回、今度)、者里(這里; ここ、こちら)、者邊(這邊; ここ、こちら、この邊り)。
- 文末の助辭。命令の語氣を表す。藤堂曰く、明、清の頃の俗語。
- 本邦の文書等に於いては、文末に者と記して「てへり」(「と云へり」の轉)と訓ずる。
⦅二⦆
- 反切
- 『集韻・上聲上・姥第十・睹』董五切
- 『五音集韻・上聲卷第七・姥第八・端・一覩』當古切
- 聲母
- 端(舌頭音・全清)
- 等呼
- 一
- 日本語音
- ト(推)
- 義
- 語辭。(『集韻』)
解字
白川
叉枝の形と曰の會意。上部は叉枝を重ね、それに土を示す小點を加へた形。曰は祝禱を收めた器。者は堵の初文。住居地の周圍に巡らせた土居に、呪祝としての書を埋め、外からの邪靈を遮蔽する意。字の全體を象形とみてもよい。堵中に埋めた呪祝の字を書といふ。書は者に聿(筆)を加へた形。城邑に巡らすものを堵といひ、城壁の方丈の單位を堵といふ。
『説文解字』は字を𪞶部に屬し、事を別つの詞なり
とするが、それはものを特定して指す意で、假借の義。
また、金文の字形は祭器の口または曰に從ふ形で、その系統の字。
藤堂
柴が焜爐の上で燃えてゐるさまを描いた象形字で、煮の原字。
古くから近稱指示詞に當てて用ゐられ、諸と同系の言葉を表す。ひいては直前の語句を「〜するそれ」ともう一度指示して浮き出させる助詞となつた。また轉じて「〜するそのもの」の意となる。
唐、宋代には、「者箇(これ)」をまた「遮箇」「適箇」とも書き、近世には適の草書を誤つて「這箇」と書くやうになつた。
落合
甲骨文は、枝の伸びた木の象形に器物の形の口を加へた會意字。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 時制を表す助辭。「今者」は現在、「來者」は將來を表す。恐らく假借の用法。《合補》1864
庚申卜㱿貞、今者、王德、伐土方。
- 地名。施設名かもしれない。《甲骨拼合集》69
于者酒。
殷代の異體には略體が多く、枝の伸びた木だけにしたものもある。
その後、西周代には上部が薪をたくやうな形になり、東周代にも多くの異體が作られた。秦代の篆文では下部が白のやうな形になつてゐる。また秦代には、上部を耂、下部を日に替へた形があり、これが現用の「者」の形になつた。
漢語多功能字庫
金文は木と數點と口に從ふ。構形初義不明。木の形はあるいは訛變して止の形となり、口の形はあるいは訛して其、皿となり、あるいは繁筆を加へて甘となつた。
金文での用義は次のとほり。
- 特指代詞に用ゐ、動詞、形容詞あるいは動詞性の短い語の後に用ゐて、名詞性の短い語を構成する。
- 中山王兆域圖
不行王命者、(殃)(連)子孫
。 - 中山王鼎
昔者、吾先考成王、(早)棄群臣
- 中山王兆域圖
- 用ゐて諸となす。「者(諸)侯」、「者(諸)士」、「者(諸)尹」など。
- 邾公牼鐘
以喜者(諸)士
。
- 邾公牼鐘
『説文解字』者、別事詞也。(後略)
屬性
- 者
- U+FA5B (CJK互換漢字)
- JIS: 1-90-36
- 人名用漢字
- 者︀
- U+8005 U+FE00
- CJK COMPATIBILITY IDEOGRAPH-FA5B
- 者󠄁
- U+8005 U+E0101
- CID+13349
- 者󠄃
- U+8005 U+E0103
- MJ030290
- 者
- U+8005
- JIS: 1-28-52
- 當用漢字・常用漢字
關聯字
者に從ふ字を漢字私註部別一覽・木部・者枝に蒐める。