世 - 漢字私註
説文解字
三十年爲一世。从𠦃而曳長之。亦取其聲也。舒制切。
- 三・卅部
説文解字注
三十年爲一世。『論語〔子路〕』如有王者、必世而後仁。孔曰、三十年曰世。按父子相繼曰世。其引伸之義也。从𠦃而曳長之。曳長之、謂末筆也。亦取其聲。末筆曳長、卽爲《十二篇》之⺄、从反厂。亦是抴引之義。世合𠦃⺄會意。亦取乁聲爲聲。讀如曳也。許書言取其聲者二。禿取粟聲、世取曳聲也。曳从𠂆聲。𠂆乁一也。舒制切。十五部。『毛詩』世在十五部。而枼葉以爲聲。又可證八部與十五部合韵之理矣。
康煕字典
- 部・劃數
- 一部・四劃
- 古文
- 卋
『廣韻』舒制切『集韻』『韻會』『正韻』始制切、𠀤音勢。代也。『詩・大雅』本支百世。又『論語』必世而後仁。《註》三十年爲一世。『左傳・宣三年』王孫滿曰、卜世三十、卜年七百、天所命也。
又『維摩經』大千世界。《註》世謂同居天地之閒、界謂各有彼此之別。
又姓。『風俗通』秦大夫世鈞。
又與生同。『列子・天瑞篇』亦如人自世之老、皮膚爪髮、隨世隨落。《註》世與生同。
又『韻補』叶私列切、音薛。『詩・大雅』殷鑒不遠、在夏后之世。叶上撥。撥音撇。『晉書・樂志』匡時拯俗、休功蓋世。宇宙旣康、九有有截。
『集韻』書作𠀍。
- 部・劃數
- 十部・四劃
『篇海』世字。
- 部・劃數
- 十部・三劃
『字彙補』同世。
- 部・劃數
- 一部・四劃
『集韻』同世。
廣韻
- 卷・韻・小韻
- 去聲・祭・丗
- 反切
- 舒制切
代也。
又姓。『風俗通』云戰國時有秦大夫丗鈞。
舒制切。三。
集韻
- 四聲・韻・小韻
- 去聲上・祭第十三・丗
- 反切
- 始制切
始制切。
『說文』三十年爲一丗。從𠦄而曳長之。
亦姓。
古作卋。
文六。
音訓
- 反切
- 『廣韻・去聲・祭・丗』舒制切
- 『集韻・去聲上・祭第十三・丗』始制切
- 官話
- shì
- 粤語
- sai3
- 日本語音
- セイ(漢)
- セ(呉)
- 訓
- よ
- よよ
- とし
解字
白川
象形。草木の枝葉が分かれて新芽が出てゐる形に象る。新しい枝葉を示す。
『説文解字』に三十年を一世と爲す。𠦄に從ひて、之を曳長す。亦た其の聲を取るなり。
とするが、形も聲も異なる。
字形は生に近く、生もまた草木枝葉の生ずる形。
金文に世を枻、枼につくる。木には世、草には生の形となる。
世をまた葉といひ、萬世を萬葉といふ。
藤堂
會意。十を三つ竝べて、その一つの縱劃を横に引き伸ばし、三十年間に亙り期間が伸びることを示し、長く伸びた期間を表す。
落合
亡失字「笹」
甲骨文に、竹の葉の部分と、枝葉の象形で葉の初文の世(後述)に從ふ字がある。恐らく「竹の葉」を表した會意字であらう。
甲骨文には缺損片にしか見えず、字義不明。《合集》6046貞、令福…途…笹。
甲骨文には他に世字は見えない。
この字は金文では借りて世の意味で使はれたが、その後亡失し、支那では使はれなくなつた。
本邦で同形の笹字が作られた。
世
木の葉の象形。木の枝に葉がある樣子を表してゐる。
初出の殷代には單獨では見えず、部分字として使はれてゐる。
殷代や西周代の「笹」(上述亡失字)については、恐らく「竹の葉」を表した會意字。この字は西周金文では借りて世の意味で使はれてゐるが、その後亡失し、支那では使はれなくなつた。本邦では同形の笹字が作られたが、偶然の一致で、繼承關係はない。
世は、十を三つ竝べた形に見えることから、「三十年」といふ解釋で世代などの意味で使はれるやうになつた。そのため、原義を表すべく意符として木を加へた枼が作られた。西周代には世の略體としての止を用ゐた字體(隸定形は杫あるいは枻)であつたが、東周代には枼の形になつてゐる。
そのほか、東周代には立を使つた字形(隸定形は𬔛)や、人の殘骨である歹を用ゐた字形(隸定形は𬆑)もあり、前者は世の字義のうち「後繼ぎ」の意味を表し、後者は「終生」の意味を表したものと思はれる。
東周代には更に意符として艸を加へた形があり、これが後代に繼承されて葉となつた。
隸書、楷書の丗の字形は、三十に從ふといふ誤解に基づく。
字音については、世も本來は枼や葉と同じく入聲であつたと推定する説が有力であるが、中古音までに陰聲(零韻尾あるいは母音韻尾)に轉じてゐる。
漢字多功能字庫
金文は枼の上半部を切り取つたもの(林義光、裘錫圭、劉釗)。枼は葉の初文で、樹上に葉のある形に象る。世は木の枝の葉の形を一點あるいは短い横劃に省略した形。林義光は木の葉が累重するため、後に世代の世の意を派生したとする。後期金文の世は立を加へて聲符とし、あるいは歺を加へて意符とする。立に從ふ世は、疑ふらくは人が世の中に足場を定めることを表す。歺は殘骨に象り、死の意符。歺に從ふ世(殜)は、人が生まれて死に至るまでを一世とすることを表す。あるいは人を加へて意符とし、偞に作り、人世(人の世、この世、世の中)の專用字とする。
一説に世は止の形を借りて分化して出來たとする(于省吾)。甲骨文には世は見えず、しかし笹は見える。于省吾は、笹を、竹と世に從ひ、また世は止字の上部に三點を加へて止と區別し、それでもなほ止字を聲符としたもの(止世雙聲)と釋する。按ずるに、止、世は韻部が遠く隔たり、この説は疑はしい。
金文での用義は次のとほり。
- 一生涯を表す。
- 獻簋
十世不忘獻身才(在)畢公家
の獻はここでは人名、十世みな獻自身の畢公家への奉公を決して忘れない、の意。 - 十年陳侯午敦
永世母(毋)忘
。
- 獻簋
- 世々代々を表す。
- 郘鐘
世世子孫、永以為寶
。 - 師遽簋
世孫子永寶
は、子孫は世々代々永遠にこの器を珍重するの意。
- 郘鐘
- 世の中を表す。中山王壺
將與吾君並立於世。
石刻文字でも世代を表す。詛楚文十八世之詛盟
。『廣韻』世、代也。
『字彙』世、父子相代為一世。
『詩・大雅・文王』文王孫子、本支百世。
戰國竹簡では世代を表す。
- 《郭店楚簡・窮達以時》簡2
又(有)丌(其)人、亡(無)丌(其)殜(世)、唯(雖)臤(賢)弗行矣。
- 《上博竹書二・容成氏》簡42
湯王天下卅又一偞(世)而受(紂)作。
屬性
- 世
- U+4E16
- JIS: 1-32-4
- 當用漢字・常用漢字
- 卋
- U+534B
- JIS X 0212: 20-24
- 㔺
- U+353A
- 𠀍
- U+2000D
- 丗
- U+4E17
- JIS: 1-50-34
關聯字
世に從ふ字を漢字私註部別一覽・世部に蒐める。